8:雛と親鳥
アディーは雛かもしれない。
私が部屋から出ると後ろを歩いて付いてくる。一応距離感はあるけど、私が一歩歩けばアディーも一歩歩く。可愛すぎて夜、枕に顔を埋めながら愛を叫んでいることもある。アディーが来てまだ二か月しかたってないのにこのありさまである。
「アディー今日はお菓子じゃなくてご飯作るけど一緒に食べる?」
「うん。」
敬語が抜けたアディーはかわいい。いや、抜けなくてもかわいいんだけどね?もう、骨抜きだよね。マジで。
今日はいつも作らない昼ご飯を作ることにした。城のご飯はおいしい、でも、飽きた。本当に、飽きた。あの、最初の三か月間は「毎日これでもいい!」って思いながら飲んでたスープも今は見るだけで吐きそうになってアディーに妊娠の心配をされたぐらい飽きた。と言うことで今日は久々にあっちでよく作ってたものを食べようと思う。
キッチンにつくと料理長に一声かけて冷蔵室みたいな場所に行って材料を取ってキッチンでの私の定位置に戻る。
「母様、今日は何つくるの?」
「今日はね。マックアンドチーズ、フライドチキン、フライドポテトとクラムチャウダー作るよ!」
「まっくあんど、ちず?ふらいどちっきん?ぽてっと?くら?ちゃうだぁ?」
困惑しすぎて私が口に出した料理名を自分で行ってみるも初めての単語すぎてちょっと間違えるアディー、尊い。
野菜を洗いながらアディーに説明していたけどいつの間にか料理長と数人の料理人が私の周りをかこっていた。
すっごくジャンキーでしょ?私今すごく某ジャンクフード店のフライドチキンとフライドポテト食べたいんだよね。もうここ数日、ジャガイモと鶏がワルツ踊りながらどんどんフライドポテトとフライドチキンに変わっていく夢を見てるぐらい体がジャンクフードを欲している。
ない材料とかはその代わりになるものを使った、例えばマカロニとかはないからパスタと似てる太めの面を一センチぐらいに切ってマカロニの代わりにしたし、あさりもないけどあさりと味が似てるエビっぽい海から来た何かがあったからそれを代わりに使ったり、チーズもこの世界にはあることはあるけどマックアンドチーズで使うチーズとは味がなん違う、でもチェダーチーズと味が似てる木の実があるのでそれを使ってみることにした。
「アオバ様、ワシ等も味見できませんかねぇ?」
毎日世話になってる料理長、断れるはずがない。とりあえず保身のために「もしかしたら口に合わないかもしれないし、失敗するかもしれませんよ?」と言ってみるけど全員料理人だからか「それでもいい。とりあえず異世界の料理を食べてみたい。」と言うことで大量に作ることになった。
出来上がったころにはもう作り始めてから二時間ぐらいたったと思う。どでかい耐熱容器三つ分に入ったマックアンドチーズもどき、こかとりす?とかいう人と同じぐらいの大きさの鳥の四分の一羽を使ったフライドチキンとジャガイモ軽く20個以上は使ったと思うフライドポテトに寸胴鍋に並々入ってるクラムチャウダーもどき。
作り終わったころには腕の筋肉が痙攣していた。
「母様、お疲れ様です。大丈夫?」
そういいながら私に冷やしてあるタオルを渡してくれるアディーは将来きっといいお嫁さんになる。
「アディーありがとう。アディー先に食べてきて、母様ちょっとここで休むから。ね?」
「で、でも。」
アディーは基本私が食べないと自分も食べない。何回か先に食べても遠慮して食べないのでアディーに二人分の食べ物を取って貰い二人でちまちま食べながら話した。私たちが食べ終わると今度は料理人たちとメイドたちが群がってきた。異世界の料理を作るときにまた味見させてほしいと言われた。
さすがにこの量ではないとわかっているけど、受けが良くて良かったと思って「いいですよー」と言ったら服の裾を軽く引っ張られ、引っ張られた方向を見るとムスッとしたアディーがいた。
「側室である母様に重労働をさせる気ですか。母様もそんなに簡単に許可したらだめですよ!」
・・・かわいい!!!
ママの心配してくれるアディーのやさしさに泣けてくる。
「アディー多分、味見としてつくる量は今日と同じ量じゃなくて私たちが食べる分とあと一人分ぐらいだと思うよ。心配してくれてありがとうね。母さんアディーみたいな優しい子がそばにいてくれるだけで嬉しいな。」
そういいながらアディーを見ると耳とほほが真っ赤になってて可愛い。正直「真っ赤になってるーかーわーいーいー!」って声を大にして言いたいけど、たぶん言ったら嫌われるような気がして心の中でそう叫んでた。
周りからもなんか生暖かい目で見られてちょっと居心地が悪くなったのでニッキーに一声かけてアディーと私の部屋に入った。今日は久々に私が先にお風呂に入ってからベッドに入ったけど、隣の部屋はまだ電気がついていた。珍しいな。
いつもは私が寝る前に寝て私が起きる前に起きてるはずなんだけど・・・
まぁ、年頃の娘だしいろいろあるよね、と自分を納得させ目を閉じたらいつの間にか意識が途切れた。