7:陛下の悩み【王様視点】
俺は女に困ったことがない。大体の女は俺に群がってくる、側室にした女の数は両手で数えられるぐらいしかいないがその中の誰かを王妃にすることは考えていない。この前、異世界から来た姉妹も側室にした、妹の方は他の側室と似ている、顔は普通だが声が耳障りだ、姉の方は・・・変わっている。
俺を誘ってこないのだ。
人生、子を作れる年になってからというモノ、いやその前からでも女は俺を誘ってくるのが当たり前だと思っていた。他の側室の所に渡る時も皆から俺を誘って、俺を満足させたがっていた女しかいなかった、この女の妹もだ。なのに、こいつは部屋に入って来た俺を見て頭を一瞬下げ読書を続けた。
俺は困惑した。待てど待てど俺に触れてこない、服も脱ぎもしない。こんな側室、初めてで俺は混乱した。
「おい、女。」
「・・・はい?」
「寝ないのか。」
「本読んでるので・・・。」
コレが俺と女の初会話だった。
結局この日は太陽が昇るまで俺は女のことを待っていたが女の目線は本と飲んでいる紅茶にしか向かなかった。
俺はイライラしながら書斎に向かいエイダンの顔を見るなら愚痴を吐いた。
「おい、エイダン。」
「はい、何でしょうか陛下。」
「あの異世界から来た姉の方はどこかおかしいのか?」
「・・・はい?」
困惑したような顔をするエイダンが俺に聞き返す。
「あの女の所に渡ったけど俺に近づかなかったぞ。」
「へぇ~それは珍しい。」
「朝まで待ったが本と紅茶ぐらいしか見てなかったぞ。あの女。」
「え!?陛下朝まで待ったんですか?」
ビックリしたように俺に聞き返すエイダン。俺は黙った。それを肯定と捉えたエイダンは次の瞬間プルプル震えながら片手で口を覆った。笑っている場合ではないだろ。
「っく・・・くく・・・やっぱり、面白いですねっ、くっくく・・・」
それから数か月、何回も女、アオバの所に渡ってもやはり手を出してこない。アオバは子供がいなくていいのか?作らなくても・・・いいのか?
王になっても子供がいる限り俺が父だと言うことに変わりはない。
子供達には俺と同じような思いをして欲しくないが国のために子は作らないといけない。この王家は高貴な血を保つために血縁者で婚姻を結んでいた時代があった。今はそんなこと、気持ち悪くてやりはしないがその影響で子供が生まれにくい家系になってしまった。だから子供が多く作れる王は代々作れるだけ作ってきている。俺の時のように前の王に血が繋がった子がいなかった場合、血縁者から跡継ぎを選ぶことができるようにするためだ。
俺は子供たちのいい父でいようとしているがやはり、こういう環境で育ったからなのか父と言う物がよくわからないせいで、子供たちは俺のことを『なんか気にかけてくれるおじさん』程度にしか思っていない。まぁ、そのおかげで魔法で姿を子供に変えて気づかれないのだがな。
しばらくすると子供達からアオバからお菓子を貰ったと自慢された。
「へいかーみてみて!」
五番目の子と七番目の子が頬に何か食べ物のカスを付けて俺の書斎に入ってきた。
「ん?なんだそれは。」
机から離れ、しゃがみ子供の頬についている食べ物のカスを取ってあげながら聞いてみることにした。
「アオバがねぇ、作ってくれたのー!まどれぇぬっていうんだよ。」
ほぉ、アオバは菓子が作れるのか。と言うことは異世界の菓子か、興味深い。
「父にも分けてくれ。」
俺がそういうと子供たちは慌てて全部ほおばった。
「なっ、菓子が食べられない父がかわいそうだとは思わないのか。」
眉の間にしわを寄せながらそういうと子供たちは口にいっぱい、まどれぇぬとやらが詰まっているからか何か言っているが何を言っているのかわからない。多分俺に同情しているわけではないようだ。
まぁ、今日はアオバの所に渡るし、その時にもらえばいいと思っていた。
「今日、異世界のお菓子を見た。」
その異世界を俺にも捧げろと言う意味を込めて行ってみたが興味なさげに返事された。酷いではないか。
なぜ子供達には菓子をやるのに俺にはないのだ。
拗ねた顔をアオバに見せたくなくて俺は反対を向いて寝た。
・・・そう言えば俺が側室がゆっくり寝れる、安心して寝れる場所はここしかない。一緒に寝ているわけでもない、肌を合わせてるわけでもない、なのにベッドに染みついている彼女の匂いを嗅ぐと安心して眠ってしまう。不思議だ。
俺はアオバに心を許しているのだろうか、こんなにも距離があるのに・・・か?