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6:母というモノ【アディソン視点】

俺は自分の母含む女と言う生き物が嫌いだ。雷と雨も嫌いだ。

俺の母は昔、伯爵令嬢だった。母はプライドが高く「私は陛下のお気に入りなのよ!」と言うのが脅し文句だった。伯爵家だった家が潰れ、母が娼婦として娼館に売られた後もそうだ。僕が生まれたのは母が娼婦として活躍を始めてから五か月たった頃だった。生まれた俺は容赦が陛下とソックリだった。そのおかげで母は俺が五歳になった時に商人の第二夫人として買われ俺もついて行った。


この商人の家での俺の扱いは娼館にいた時よりはマシだったがことあるごとに第一夫人が俺に当たり散らし、その子供にも手を挙げられる。母はいつも通り暴力的でヒステリックを起こす、商人は誰の味方になるわけでもなく家で何かが起きれば「うるさい」と言い愛人の家に行く。


俺が八歳になり、背も高くなり始めた頃に俺が女と言う生き物を嫌いになるきっかけになることが起きた。

ここまでの俺は女が苦手の部類に入っていたが嫌いではなかったが第一夫人が俺に夜這いをしてきた。あの日は大雨が降っていて雷も近くで落ちた。雷が落ちるたびに見える裸の女、母親より年上の女が俺に迫ってくる様は恐怖以外の何でもなかった。舐められた場所が気持ち悪くて俺は嘔吐しそうになったのを我慢しながら震えて女が俺の部屋から出て行くのを待った。女が出て行ってから俺は吐いた。涙が止まらず呼吸も苦しいのに、あまりの気持ち悪さで俺は部屋で汚物にまみれにした。

でも、俺が襲われたのは最後ではなかった。女にたびたび襲われることに加え、母も俺を触ってくるようになった。この時点で俺は女と言う生き物が駄目になった。見るだけで吐き気がする、近くに居ると鳥肌が立つ、特に欲望を孕んだ女の目は反吐が出るほど嫌いだ。


商人はよく俺の見た目を武器に客を脅していた。客が商品に文句を付けた時や、交渉がうまく行かない時にその場に連れて行かれ「うちは陛下の親戚にあたりまして。」と言いながら相手を脅す。俺はいつの間にかそういう道具となっていた。そんな仕事の仕方をしていたからか商人はいつの間にかお偉いさんに目を付けられ『陛下の母君の生家』と言う場所で俺は預けられることになった。


商人の家から出る時母は俺に縋ってきたけど、手を掴まれた瞬間俺は気持ち悪くて吐いた、ゴロツキみたいな見た目のオッサン、公爵家の当主はソレを見て俺の肩を掴み母に「子がこうなってるのに、こういうときも自分しか見えていないのか。」と母に一言言い俺を馬車の中に連れて行ってくれた。

馬車の中で、俺は選択肢が二つ用意された。


一つは男として王宮に行くこと。この場合、俺は王太子候補になる。母が元伯爵家の娘であり娼館で生まれ育った俺にとっては茨の道となる。

一つは女として王宮に行くこと。この場合、俺は女装をしてある程度の年になるまで離宮で暮らさないといけないことになる。離宮には陛下の側室やその子供がいっぱいいるし周りはほとんど女しかいない。でも、成人を迎えたらこのゴロツキみたいなおっさんの所で暮らしてもいいし、おっさんが直接王に話を付けて俺を平民に戻してくれるのもいいし、俺にとっては一番危なくない選択肢だが嫌な選択肢だ。


俺は王位継承権争いに巻き込まれたくない。イヤイヤ二つ目を選び俺はしばらく女として暮らすことになった。


それから陛下に会うまで俺は二年間おっさんの屋敷で暮らしていた。おっさんの屋敷には勿論女がいたが運が良いことに俺が嫌いな類の女がこの屋敷に来るのは頻繁ではない。俺の世話は俺が男だと知っている執事が一人とおっさんより少し年上だという婆さんが主にしていた。この婆さんには不思議と嫌悪感を感じられない、女なのに、きっと婆さんの視線がその原因だと俺は思った。


俺は陛下に引き取られる前に、一回彼と会った。

おっさんの家に来た陛下は応接間にいて俺がそこに呼ばれた。陛下は俺とソックリで、そっくりで何故かイラついた。この容姿のせいで俺は嫌な目に合ってきた。こんな見た目じゃなければあんなこともされなかった。

挨拶をした後俺は「お前の事情は知っている。離宮にはお前の母替わりになる人が必要になるがこちらで手配している。」と言われた。いきなりすぎて、あまたがよく理解できていなかったがお礼を言ってから自室に戻ってしばらくしてから俺はまた母というモノと暮らさないといけないという事を理解した。


離宮についた日、俺は応接間に案内された。おっさんの屋敷に住み始めてからせめて外見だけは女に見えるように伸ばした髪は縛らないでそのままにしてある。俺の母の代わりをする女を見た瞬間この女がこの国の人間ではないことは分かった。像牙色の肌に黒色の半開きの軽く吊り上がった目と肩にかかるぐらいの髪、背もそんなに高いわけではなく、乳もそんなに大きいわけではないが側室と言う割に平凡だ。


女は俺が目と合うとニコッと微笑んだ、が不思議と気持ち悪くなかった・・・


その感覚が嘘ではないと確かめたくて俺は夜に女の部屋に入ってみた。寝ている女の顔を眺めてみるとやはり不思議と気持ち悪さはない。

異国の女だからなのか・・・?

いや、たぶんきっと違うのだろう。俺の“母”になる女の頬に自分の手を軽く当ててみると過去のことが一瞬よみがえってきて俺は慌てて離れた。

やはり、触るのはまだ早かったか。

胃から上がってくるものを出すために俺は急いでトイレへ向かった。


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