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2:子供とお菓子の相性は抜群

そんな生活か続くこと一年、私はいつものようにお菓子を焼いていた。今日はマドレーヌだ。

知らない子供がいつの間にか私の後ろに立っていて指をくわえながら見上げていた。


「マドレーヌ食べる?」


子供に聞くと首を傾げる。


「今焼いてるお菓子マドレーヌって言うんだけど、食べる?」


子供に聞くとコクコク頷く。

よくよく見ると可愛らしい子供だった。金髪に青色の目、ほっぺがプニプニしていて触るとムスッとするあたり子供らしくて可愛らしい。見た目は四歳ぐらいでなんかぼーっとしてそうな子だけど、身なりからして多分貴族の子供だろう。


石窯の方からいい匂いがしてきたので一回マドレーヌを取り出して、この世界にも存在している爪楊枝で刺してみると焼きあがっていることが分かったので全部取り出して冷えるのを待ってる間、子供にマドレーヌはこうやって少し冷やした方がうまい、アイスと食べるともっとうまい、何個食べるか、とか話していた。


「よし、冷えたから、はい、どうぞ。」


型から取り出し子供に一個渡して私も一個とって子供の前で頬張りながら「あーうまい、うまい、うまい、こんなに旨いお菓子初めて食べた。」とか言ってたら子供はごくりと唾を飲み込んだ後マドレーヌを頬張った。


「うひょっ」


ぼーっとしてる子供の顔がパッと明るくなった。うひょって言う笑い声も可笑しいけどいきなり目をかっぴらく時の表情の変わり具合が面白くて声を押し殺して笑っていてスマホのマナーモードみたいにプルプル震える。


一個食べ終わると子供は物欲しげにマドレーヌを見ていたので小さめの紙袋を取ってそこに油拭き取りペーパーを入れてからマドレーヌを何個か入れてあげたら「ありがと」と恥ずかしがりながら言って紙袋を掻っ攫ってどこかへ行ってしまった。


唖然としながら子供が去って行った方を見ているとその方からニッキーと他のメイドが「マドレーヌの香り!マドレーヌですね!?」と言いながら真顔で走ってくる。

この子たち、臭覚凄くない?


部屋に戻ってニッキーとマドレーヌを食べながら今日も離宮の愚痴、他の側室の愚痴、噂話をニッキーから聞く。


この離宮も他の離宮と同じく、ドロドロしている。上のトップ3はそれほどでもないけどそれ以下の側室同士の争いは聞いてる分は面白い。因みに妹もそのドロドロの争いに参加しているみたい。元気そうでお姉ちゃん安心した。

しかもこの離宮は妹と同レベル、それか妹以上の問題児が数人いるお陰で妹が今までやってきたことが普通の事のように思えてくるのも可笑しくてだいぶ毒されているなと思った。


今日は王様が私の部屋に来る日だ。

相変わらず何もしないのにご丁寧に決まった日には毎回来ている。


夕方近くになるとニッキーと他の侍女が私の体をピッカピカに磨き上げてくれるが、コレを見てくれるのは彼女たちしかいないという事実はある意味虚しい。


メイド達が部屋を出てソファーに座って本を始めてからしばらくすると王様が入ってくる。


ぎぃ・・・————


今日は赤色と黒色をベースに、金色の装飾が入っているガウンを着ている。

一瞬目線を合わせて軽く頭を下げると王様が頷いてすぐベッドに入って布団をかぶる。

ロマンス?恋愛?この王様とは無理だ。初めの数回はちょっとドキドキしてたけどイケメンも何回か見ていれば馴れる。


「今日、」


布団に入った王様が話し始めた。珍しい。本をしおりで挟んで顔だけ王様の方に向ける。


「異世界のお菓子を見た。」


「・・・・・・・・・へぇ」


・・・それがどうしたって言うんだ?マドレーヌの事かな?

それだけ言うと王様は私の顔を見て元から眉間に皺寄ってんのにもっと皺を寄せてからくるりと向きを変えた。


なんだこいつ?

王様の癖にコミュ障か?


様子が変な王様のことはそっとしておくことにしてまた本を開いて読み始めた。

それから数分後王様の規則正しい寝息が聞こえた。

私はいつものように夜通し本をぶっ通しで読み続けて朝になると王様の右腕兼従者の男が起こしに来る。この人は不思議と私には愛想がいいお偉いさんのうちの一人である。


コンコン


「エイダンです。」


「はい、どうぞ。」


ソファーから歩いてドアを開けると相変わらずニコニコしてるエイダンさんが立っている。いつものように茶色のカールした髪の毛を軽く縛って前髪を流しているし、背も高く筋肉が少なすぎず多すぎないので毎日着ているこの執事の服はとても似合っている。緑色の目は宝石みたいに綺麗だし、元から蜂蜜並みに甘い顔立ちは笑うと砂糖をぶっかけた蜂蜜並みに甘くなる。見てるだけで糖尿病になりそう。


部屋の中に招き入れると「お手数おかけしますが、起こしてもらえますか?」と言った。お前、何のために来たんだよ。と言いそうになったけど、彼もこう見えてお偉いさんの家の出らしいので権力に弱いアオバちゃんは大人しく王様を起こすことにした。


「王様、起きてください。」


――――――・・・・・・


王様の寝てる方の近くまで歩いて行き声をかけてみるも全然起きない。

困ってエイダンさんを見ると「優しく揺さぶってあげてください」と言う。いや、もうお前がやれよ。と思ったのは言うまでもない。


今度はしゃがんで「王様、王様、朝ですよ。」と言ってみても「うーん」と言い向きを変えた。この野郎、なんでお前のために私はこんなに苦労しないといけないんだ。王様なら自分で起きろと心の中で悪態をつきながら片手で王様の肩を軽くつかみ優しく揺らしながら「王様、朝ですよ。仕事遅れますよ。」と言ってみると今度は起きたみたいでゆっくり起き上がった。それを見た私は「起きたぞこの野郎、後はお前がやれよ。」と言う意味を込めてエイダンさんを見るとニッコリしながら頷いた。


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