三話「身体検査」
虹弥とレインが喧嘩をし始めてしまい僕は何をすればいいのか
緋夏「あ、あの!僕はこれからどうすればいいんですか!」
そう声をかけると二人は喧嘩をやめた。とりあえず、今日は安静にし明日は身体検査をするらしい。レインはこの部屋にはシャワーやトイレがあるから部屋からは無断で出ないようにと注意し、虹弥は暇潰し用にと色々な本を渡して、二人は部屋を去ってしまった。やることもないので今日はもう大人しく寝ることにしようと目を閉じた。
『...............の管理ですか...。...............様の..........でしたら、よ........んで承.......。』
『............ない!もっと................く.........よ!つま......................!!........ろ!.......の............するな!』
_____夢?
【可哀想な子。己の使命も名も存在さえも亡き者にされるとは】
_____貴方は誰?
【いずれ会えるさ】
【...この先、道に迷いそうになったら我が子を頼るといい。さあ、起きて。此処は汝の場所ではない】
その言葉を聞き目を覚ました。
?「おや、お目覚めですか?おはようございマス」
夢で見た光景を思い出そうとしたが、目の前の黒い物体に驚き内容を忘れてしまった。
緋夏「だ、誰ですか!?」
真っ黒なてるてる坊主を2メートル以上の大きさにした生き物?は僕の質問に首を傾げた
?「あなたは、ワタシの言っていることがわかるのデスか?めずらしいヒトもいるのデスね。ワタシ、ワタシはフミヨと皆から呼ばれてマス。どうぞよろしく」
フミヨはこの施設の案内役兼受付だと説明した。今日は僕の身体検査の案内をするため此処に来たとのこと
緋夏「えっと...フミヨさん。虹弥さんやレインさんは...?」
フミヨ「天灰サマはとても多忙なお方デス。お仕事に行かれました。レインサマは今から行く検査室におられマス。」
2人の状況を説明してもらった後、フミヨはテキパキと僕の身支度をしてくれた。道中フミヨはこの施設の説明をしてくれた
フミヨ「此処はフォルティアの本部であり、浮島を丸ごと利用した建物となっておりマス。主に重要な会議や報告、研究を行っていマス。あとは...精密検査が必要な方がいるとき使われておりマスね...」
窓の外を見ると一面が青で上空だということがよくわかる。
フミヨ「...緋夏サマは本当にワタシの言葉がわかるのデスね。本来ワタシのような「数ノ民」の言葉は特殊な機械がなければ理解できないのデスが...。共鳴率が元々高い?それとも数ノ民の完成体?」
フミヨはその巨体をグニョンと曲げ傾げる素振りを見せた
緋夏「えっと...数ノ民とは...?」
フミヨ「数ノ民は幻界と呼ばれる不確定の世界に住む生き物デス。我々は他の世界の生命体のように完成された生命体になるべく日々精進しているのデス。ワタシの場合、地界に住み人と関わりを持つことにより完成体を理解し近づけるよう努力しておりマス」
どうやらフミヨはかなり特殊な生命体ということがわかった。それからちょっとした建物で起きた出来事などを教えてくれて。そうして歩いていると検査室に着いた。
フミヨ「こちらが検査室になっております。エリゼサマ、他にご用件はありマスか?」
?「んにゃ!大丈夫だぞ!実にご苦労であった!!」
寝癖のついたプラチナブロンドの髪にサファイア色の目をした小柄な女性の言葉を聞くとフミヨは一礼してからのそのそと部屋から出ていった
?「おぉ!キミが例の不思議少年クンか!!!!ワタシはエリゼ・バークという!!キミの名はなんというのかね!!!」
エリゼ「まあ!みんな知っているがね!!知らないやつは流行遅れの子だと思って笑っていいぞ!!!緋夏クン!!!!」
エリゼは僕の手を取り握手をするとぶんぶんと振った。正直彼女のテンションについていけない
レイン「エリゼ、此処は貴方のラボでもあるが目的を間違えないでもらいたい。今回は彼の身体検査。オーラ質や能力などを調べる以外にも彼自身の回復具合も見なくてはならない。あまり騒がないでくれ」
エリゼ「んもう!レインクンったらお堅いんだからっ...!」
レインは早くしろという顔でエリゼを睨み、その圧に降参した素振りを見せたエリゼはテキパキとよくわからない機械をいじり出した
エリゼ「さあさあ!緋夏クン!!ちょーとこの箱に入ってもらえるかな?大丈夫全く痛くもない!安心して入りたまえ!!」
3メート程ある四角い白い箱に入るよう彼女は指示をしてきた。この箱はオーラの性質や能力を調べる箱とのこと。僕自身知らないことだらけでだが、これを使えば大体のことはわかるらしい。箱の中は薄暗くひんやりとしていて少し身震いをした
エリゼ「おぉん...少し寒いかもしれないけど我慢しておくれぇ...この気温この光度この気圧が一番検査に適しているんだぁ...」
今から調べるよ。と合図をされるとグヲンと鈍い機械音がし出した
緋夏「(僕のオーラ...確か虹弥さんは緋色だって言ってたよね。あとは...能力...、僕の能力はなんだろう...)」
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エリゼ「ふぅむ...。あの少年のことについて何か知っていることはあるかね?」
レイン「昨日渡した報告書通りだ。記憶喪失で此処へ来た経緯は覚えていないとのこと。あとは...天灰総副隊長が彼は緋色のオーラを持っていると言っていたな。...違う結果が出たのか?」
エリゼ「いいや、結果は緋色のオーラだ。でもねぇ...能力が不明という結果が出たんだよ。この意味はわかるだろう?」
この世界にはオーラを持つ人がごく稀に誕生する。そしてオーラを持つものは基本的に能力も持っている。だが例外としてオーラはあるが能力を持たない物がいる。
・能力を扱う程、体が丈夫ではない
・一種の病気で能力器官がはたらいていない
・第三者からの干渉により能力が扱えない
・能力を隠している
この4つのどれかである。エリゼの開発した機械は高性能であるため虚弱体質や病気であればわかるため、この2つではない。
レイン「彼は...呪われているのか?」
エリゼ「んー、その可能性はあるね。彼は自分にオーラがあることに疑問を持っていなかった。我々地界に住むほとんどのものがオーラを持っていない。ワタシやキミのようにね。」
エリゼ「これは推測でしかないが、彼はオーラや能力を扱える連中が周りにいる環境で育ち、なんらかの理由で仲間に攻撃され逃亡中呪われ此処へ来た。これなら辻褄はあるだろうね。だが...」
エリゼの目付きが鋭くなる。彼女は一見明るい性格のようだが組織のトップである。組織をまとめる立場の人間で、時には誰よりも冷酷に物事を決める人だ。
エリゼ「彼がもし、嘘をついている場合敵勢力、最悪「歪」の連中かもしれない。そうなると「歪」の連中は本部の行き方を知っている可能性が出てくる。彼を警戒しつつ警備を固めた方が良いかもしれないな」
「歪」
極悪組織のトップであり、何百年も前から蔓延る闇である。取り上げられる事件は数多く名前や姿を公開するものもいれば全く情報がないものもいる。「歪」が引き起こした事件は世界規模のテロから小規模のものまで方向性はバラバラで目的も拠点も正体も何もかもが不明な組織。
レイン「...警備を固めるよう報告しておこう」
エリゼ「んもう!レインクンはお優しいんだからっ!...大丈夫だよ、彼が敵だと決まったわけではない。...緋夏クーン!!もう出て来て良いよー!!」
ひんやりとした箱から出るとエリゼは暖かいお茶を渡して来た。ハーブティーでとても良い香りでなんだか心が暖まる味がした。
エリゼ「さあ!キミの検査結果なんだがオーラは緋色!能力は不明!キミ!!試しにこうなんかバーーってオーラ出してみてくれるかい?もしかしたら能力わかるかもしれないし...」
緋夏「オーラをバーー...?えっと...?」
雑な説明をされて困惑した。そもそも、オーラをどうやって出せばいいんだ?知っているはずなのに何かに堰き止められているような
緋夏「(オーラ...て...どうやって出すの?...あれ?そもそも...何でオーラを扱えるものだと思ってたんだ?...能力...能力ってどう扱うの?わからない、わか...らない)」
急に視界が暗くなる。何処からかカップが割れる音がする。視界が歪んでいく