一話「目覚め」
...不思議な夢を見た気がする。重い瞼をゆっくりと開けると見覚えのない白い天井が見える。ここはどこだろう?そう思い過去の出来事を思い出そうとした。しかし、何も思い出せなかった。
『自分は誰だろう』
思い出せない。何故自分はここにいる?どうやってきた?
「お!!起きたのか!!!!」
大きな声にビクッと驚いた。声のした方に目を向けると知らない男性がこちらに笑顔を向けていた。
「えっと...貴方は...?ここは...?」
困惑してまとまらない思考の中、男性に質問をした。
?「ん?俺か?俺は天灰虹弥だ。そんで、ここは世界能力管理組織「Fortia」の本部の病室だ。」
青味がかったグレーの髪に翡翠色の瞳をした虹弥と名乗る男がこの場所を説明してくれた。どうやらここは、閃々の地と呼ばれる土地の真上にある浮島らしい。そして、自分が血まみれで倒れていたことも説明してくれた。
虹弥「お前さん、血まみれで倒れてたが体の方は大丈夫そうか?」
大怪我をした、だが自分の体は痛くない。強いていうならば寝過ぎた後のだるさや喉の痛みくらいだろう。
虹弥「あ!!起きたなら医療部隊のやつに報告しないと!!ちょっと待ってろ!」
そう言い虹弥は走ってどっかに行ってしまった。虹弥はちょっと騒がしい人だが悪い人ではなさげだった。
「...なんで怪我したんだろう...。」
ぽつりと独り言を呟きゆっくりと過去のことを思い出そうとした。しかし、何も思い出せない。まるで暗闇の中にいるようでどこにいるのかわからない感覚と不思議な虚無感がして考えることをやめた。
しばらくボーッとしていたら足音が近づいてくる音がした。足音がする方に目をやると、先程走り去った虹弥ともう1人メガネをかけ甘栗色の髪ゆるく三つ編みにした女性がいた。
虹弥「ほら!二ヶ月も寝てた正体不明の子が起きたんだよ!」
?「見ればわかる、それより天灰総副隊長、怪我人の前だ。もう少し声のボリュームを抑えてくれ。」
虹弥「おお、すまない。そんな睨まないでくれ、レインセンセ...」
レインという女性は虹弥にすごい顔で睨みつけていた。それはそうと...
「...二ヶ月も寝てた!?っ、ゲホッ、」
急に大声を出したせいでむせてしまった
しかし、二ヶ月も寝ていたらこうなるのも納得いく。むしろ体調が良い方なのでは?
レイン「...そこは話していなかったのか。まあ、ここが何処かわからない人にあれこれ言っても混乱を招くだけ、その判断は実に良い。だが...」
彼女は自分にゆっくりと近づき椅子に座った。
レイン「私の名はレイン・ラミレス。状況がまだ飲み込めていないようで申し訳ないが、こちらも正体不明の君を警戒しなければならない。さて、君に質問だ」
レイン「この本部は少し特殊なのは知っているかい?浮島を利用しているのだよ。しかし、君の怪我は切り傷と落下からくるものの二つ。本来君は本部の庭で倒れているはずがないのだよ。」
レイン「君は一体、何処から此処へ来たんだい?」