プロローグ
【グリゾスの書庫】開演致します
『はぁ、はぁ、はぁ』
左腕が痛い、肺が痛い、脚が痛い...
...心が痛い
何故こうなってしまったのだろう。周りと違うから?自分は無害だよ?どうしてそんな目で見るの?どうして殺そうとしてくるの?僕は...生まれてきちゃだめだったの...?
涙で視界が滲んだ。逃げるのも嫌になる虚無感が襲ってくる
『あ...』
足を止めた。その先は崖。落ちればきっと命は助からないだろう
『僕...ここで死ぬの?...何も...悪いことしてないのに...』
『...あぁ、僕の居場所は...無かったのか...』
『(ごめんね...お母さん...次はいい子で産まれたいな...)』
...
体が重力に沿って落ちて行く
見たことのない景色が見える。カラフルでおしゃれな部屋に幾つもの鏡が置いてある
コツコツと足音が聴こえる。ピンクの髪をした少女が部屋を訪れた
少女は一番大きい鏡の前で希望に満ちたような憧れを抱いたような表情をしていた
『(あの子は...きっとこの先幸せに過ごせるんだな...)』
少女は今の生活から離れることができるのだろう。そう考えると悲しいような嬉しいような感情が湧いた
『(どうか...彼女がこの先幸せな生活が送れますように)』
自分が最後にできること。名も知らない少女に小さな祝福を与えその光景は途絶えた
少女は大きな鏡にそっと触れると眩い光に包まれた
『外はどんなものがあるんだろう...楽しみだなぁ...』
...そうして少女は光に包まれ姿を消した
朦朧とする意識の中自分が落ちていく感覚がする。でも、どうだっていい。自分は結局必要とされない存在だったんだ。
『(ほんと、世界はなんて...残酷なんだろう)』
日が傾き始めひぐらしが鳴き始めるころ少年は落ちてゆく。彼が築き上げる物語の行く末は決まっていない。だが我から願おう。彼の道が良きものであり、この世界に絶望しないように。