第5話 何とか沙耶ちゃんを止めなきゃ!
「みんなでどこかへ行くとしても、誰が中園君に頼むの?」
「私が頼むから!」
必死な声で私が言った。
「でも~無理だと思うよ~」
もう、野乃葉ちゃんまで何言い出すのよ! 私の気持ちも知らないで! とにかく大ピンチなの!
「やっぱりそうだよね。中園君に頼むのは無理っぽいか」
「私に任せて。何とかするから!」
「野乃葉。ピンクのドレスってどんな感じの服だ?」
「ロリータ調で可愛いの~!」
ひぇー!
「大きなリボンが~腰の所に付いているんだよ~」
その服を着ている私を草壁君が見るの? 絶対に嫌!
「じゃあ、髪にも大きなリボンを付けようか」
「大きなリボンも持ってるよ~」
「今から琉生に電話かけて頼むから」
「よし、体中にリボンを巻こう。『私がプレゼントよ。私を貰って』みたいな」
「そうだね~。それがいいよ~」
「私の話を聞いて!!!」
「どうしたの? 柚衣」
「どうしたのじゃないよ!」
「問題は野乃葉の服を柚衣が着れるかだよね」
「だ・か・ら、今から琉生に電話してお願いするから!」
「そんなの時間の無駄だよ」
私は沙耶ちゃんの言葉を無視してスマホを取り出した。
「琉生?」
「柚衣か。どうした?」
「お願いがあるの」
「突然何のお願いだ?」
「今度みんなで遊びに行かない?」
「みんなで?」
「そう、私たち3人と琉生。そして草壁君を誘ってほしいの」
沙耶ちゃんと野乃葉ちゃんが私のスマホを見つめる。
「なるほど、そういうことか」
「お願い! でないと人生最大のピンチになるの?」
「何言ってるんだ?」
「お願いだから」
「残念だが諦めろ」
「そんなこと言わないで」
「お前がいくら頑張っても無理な相手だ。それに俺は勝ち目のない賭けはしないって言っただろ」
「そこを何とかお願い!」
プチ、プープープー。
終わった。
「決まりだね。ピンクの服でラブレター作戦開始だ」
「ちょっと待って!」
こうなりゃ思いっきりあがいてやるわよ。
「私には野乃葉ちゃんの服は入らないよ」
野乃葉ちゃんは3人の中では一番小さく痩せている。
「大丈夫だって」
「絶対に無理だよ!」
物凄く必死になる私。まあ当然だよね。
「野乃葉。今日ベスト持ってたよね。貸して」
「いいよ~」
野乃葉ちゃんは鞄からベストを出してきた。
「着てみなさいよ」
「うん」
緊張しながらそっと野乃葉ちゃんのベストを着る。もしもピッタリ着れてしまったら大変なことになる。ピンクのロリータ服で草壁君に会わなくてはいけないのだ。絶対に変な人だと思われてしまう。神様お願い。
「う~ん。ちょっときついか」
『神様ありがとうございます!』
生まれて初めて神様の存在を信じた私であった。
「まあいいか」
うん? 何がいいの? まさかきつい服を着て決行なんてことないよね?
「仕方ないねえ。最終手段を出すしかないか」
最終手段?
「何? それ?」
「できたらこの手だけは使いたくなかった‥‥」
沙耶ちゃんは目を閉じて俯いている。沙耶ちゃんのこの雰囲気、思いっきり嫌な予感しかしないけど、どうやらピンクの服からは逃れたようだ。