第34話 クリスマスデート作戦の目的
草壁君の家からの帰り、電車に揺られながら今回の作戦の目的を沙耶ちゃんから聞く。
「草壁君は柚衣に興味を持ったことは確かだよ。でも、中園君の告白で完全に諦めてるのも事実」
「そうだよね。てか完全にそうだよ!」
「それで今回のデート作戦は、まず柚衣が草壁君に中園君とは付き合わないことを熱弁する。そして、中園君が野乃葉とデートしているところを見せ、柚衣の言葉を信じさせるのが目的」
「なるほど」
「でも、もし琉生が草壁君に相談でもしたらまずくない?」
「男子は恋の悩みなんて簡単には相談しないって」
「本当に?」
「本当だって。第一、中園君は柚衣に選ばれる自信があるじゃない」
「何でそんなことがわかるのよ」
「自信がなかったらあんな告白の仕方しないって」
「そうかなあ?」
「それに自信がなかったらもっと探りを入れてくるから」
「探りを入れてくる?」
「『俺のことを考えてくれた?』とか言われてないでしょ?」
「確かに言われてないけど。うまくいくかなあ」
「大丈夫。あたしに任せて」
紗椰ちゃんの強引な性格を考えるとやや信憑性に欠ける気もすぐが納得できる気もする。
「でも琉生と野乃葉ちゃんがデートしているところを見せるなんてできるの?」
「そのためのピンマイクよ」
「え? また使うの?」
「そう、今回は2人同時に指示を与えるわ」
「えー! 1人でも滅茶苦茶だったじゃない!」
「大丈夫私を信じなさいって。2人の行動を隠れて見ながら、次にどこへ行ってって指示するから」
嫌な予感しかいないんだけど。
「沙耶ちゃん、そんな聖徳太子みたいなことできるの?」
「大丈夫だって」
さすが沙耶ちゃん。彼女に『不安』という文字はない。
「野乃葉。今度は私の言った通りにしゃべっちゃダメだよ」
「どうして〜?」
「そうね。『〜と言って』と私が言ったときだけ、言った通りに話して」
「できるかな〜」
多分無理だと思う。
「めっちゃ簡単なことだから」
「そうなの〜?」
「そうなの!」
無理矢理納得させたわ。
「ところで〜、私たちかなり長く〜、話してるけど〜、3駅って〜、こんなに話せるものなの〜?」
「こんなの小説やアニメでは常識よ。残り3秒で話しまくるバスケットアニメや、たった1球投げるのに10分以上も使う野球アニメもあるくらいだから」
「でも〜、この駅〜、見たことないよ〜」
「え!? それはまずい! 降りるぞ〜!!」
こうして5駅ほど乗り越した私たちは慌てて電車を降りるのであった。