第33話 草壁君からのプレゼント
紗椰ちゃんの暴走は止まらない。もう、私のために来たんじゃないの?
「それで、メイドさん何人いるの?」
「3人だよ」
興味があるのは分かるけど・・・・。私はそっと沙耶ちゃんをつついてみた。
「ん? どうしたの?」
沙耶ちゃんは私を見て頷いた。やっとわかってくれた!
「紅茶のお代わりって貰っていい?」
「違うよ!」
私は顔を赤くしながら叫ぶ。
「ああ、そうか」
沙耶ちゃんはそう言うと草壁君の方を向きなおして言った。
「草壁君て、クリスマスイブの日って何か用事ある?」
「クリスマスパーティーを開く予定だけど」
「それって1日中?」
「いや、夕方からになるかな」
「じゃあ、それまでの予定は?」
「今のところないよ」
「それなら私たちに付き合ってよ」
「例によって1対1でなけりゃいいよ」
「もちろん2対1よ」
「え? 3対1じゃないの?」
草壁君が不思議そうな顔で尋ねた。
「このうちの一人は中園君とデートなのよ」
「なるほど」
「実はあたしがデートするの」
紗椰ちゃんがすました顔で言う。
「違うよ〜、私だよ〜」
野乃葉ちゃんの言葉を聞いた沙耶ちゃんは、そうっと私をつつく。これは私も言えってことだよね?
「わ、私だよ」
「さあ、3人のうち誰でしょう?」
「いきなりクイズかい? でも答えは簡単すぎるんじゃないかな?」
「そうかしら?」
「答えは・・・・」
「ちょっと待って! 答えは当日いなかった人ということでどう?」
「それは楽しみだね」
「そうでしょう?」
紗椰ちゃんはにこりと笑った。こういう笑顔の紗椰ちゃんて結構可愛いんだよね。
「そうだ。君たちにプレゼントしよう」
「え? 何くれるの? エメラルドのネックレス? それともダイヤの指輪?」
こういう時の沙耶ちゃんは非常に食いつきがいい。
「クリスマスパーティーの招待状だよ。我が家でやるんだ」
「そんな悪いよ~」
と私が遠慮して言うと、
「ぜひお願いするわ」
と沙耶ちゃんは即答した。
『沙耶ちゃんダメだよ』
『何言ってるの。草壁君の両親に気に入られるいい機会よ。こんなチャンス逃す手はないじゃない』
『ええーーー! 突然、何言い出すのよ! 草壁君の両親だなんて・・・・』
「じゃあ、中園君にも招待状を出しておくよ」
「え? 琉生にまで」
私は思わず声を出してしまった。琉生が来ると話がややこしくなりそうだ。何しろ私に告白したくくらいだし、私と草壁君が付き合うのは絶対に反対だよね?
「琉生は行儀悪いよ。それでもいいの?」
必死で否定しようとする私。
「大丈夫さ」
うう通じない。
「この家の大きさから察するに物凄く偉い人も来るんでしょう?」
「来るよ。大企業の社長やノーベル賞候補の大学教授、確か総理大臣も来るんじゃないかな?」
「だったら絶対に琉生を呼んだらダメだよ!」
私たちも来ない方がいいような?
「大丈夫さ。それに僕と中園君は親友だからね」
琉生ったらとんでもない親友を作ったもんだよね。これで将来失業しても大丈夫だよきっと。
「ならいいけど」
「中園君の招待状には『君の恋人も来ますよ』と付け足しておこうか?」
草壁君は笑みを浮かべながら言った。
「そんな~恥ずかしいよ~」
「野乃葉。絶対にあんたのことを言ってないと思うよ」
紗椰ちゃんが野乃葉ちゃんに囁いた。
「面白いから是非付け足してね」
草壁君を見ながら沙耶ちゃんも笑みを浮かべた。