表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
告白作戦っ!  作者: YUI
27/41

第27話 琉生のバカ

「あれ? 野乃葉がいない」

突然、沙耶ちゃんが言い出した。

「さっきまで、私と一緒にいたのに」

「私が沙耶ちゃんたちに気付いた時にはいなかったよ」

私は涙を指で拭いながら言った。


 野乃葉ちゃんどうしたんだろう? 私たちは野乃葉ちゃんを捜すことにした。この公園は結構広い。見つけるには時間がかかりそうだ。それに公園にいる保証はどこにもない。もう帰ってしまったとか。野乃葉ちゃんてこんな勝手な行動をする人じゃないし。だからこそ心配なのだが。どんなに時間がかかっても捜さなくては!


 5分ほど探すと琉生の声がした。

「いたぞ! 噴水の前だ」

意外に早く見つかったわね。


 野乃葉ちゃんは噴水前のベンチに座り一人で泣いていた。

「どうしたの? 野乃葉ちゃん」

私は急いで近寄ると優しく声をかけた。

「ごめんね〜・・・・」

「何で泣いてるの?」

「中園君と柚衣ちゃんが~こうなることはわかってたから〜、泣くつもりはなかったの〜。でも、中園君が告白するのを聞いてたら〜、涙があふれちゃって〜・・・・」

野乃葉ちゃんの瞳からは大粒の涙が溢れている。私はハンカチを野乃葉ちゃんに差し出した。『わかってたから』って‥‥。そこまで自分を犠牲にできるものなの? 野乃葉ちゃん、ごめん。私って迷惑ばかりかけてるよね。


「中園君も罪な男だね」

草壁君がからかうように言う。

「何人もの女を振ってきた奴に言われたくねえな」

私達は野乃葉ちゃんが泣きやむのを待って帰宅した。


 その夜、私は机に向かって今日の出来事を頭の中で整理した。草壁君の『前向きに考えてみるよ』という言葉。琉生の意外な告白。一度に大きな展開が重なったため、私の頭はパニック状態になっている。どうしたらいいの?


 草壁君は今でも一番好き。でも、琉生にあんな告白をされて私の気持ちが動かされたのも事実。琉生と付き合えば全てがうまくいくのかな? それでは野乃葉ちゃんが悲しむのか。今まで通り草壁君にプッシュし続けていけば、琉生が落ち込むだろうな。そしたら私と琉生が気まずくなっちゃうよ。もう、どうしたらいいの? そんな言葉が頭の中をぐるぐる回る。


 私は机の上に置いてあるしっぽアクセサリーの尻尾を指でつつく。しっぽの尻尾って何なのよ? まあ、どうでもいいんだけど。あーあ、明日、草壁君にどんな顔して会えばいいんだろう。きっと琉生のことで誤解しているよね?


 その時、窓に何かが当たった。私はゆっくりと立ち上がり窓を開ける。

「何? こんな時間に」

「今日はごめんな。突然変なこと言って」

琉生にしては小さな声だ。

「そうだよ。何の予告もなしにビックリだよ」

「つい焦っちまって・・・・」

「その焦りのおかげで草壁君には聞かれるは、野乃葉ちゃんは泣き出すは・・・・」

「でも、俺は本気だから。お前のこと本気で好きだから」

「琉生・・・・」

琉生はそっと窓を閉めた。もう、どうしてそんなことが平気で言えるのよ!


 私がベッドに腰掛けるとスマホが鳴った。野乃葉ちゃんからだ。

「もしもし」

「柚衣ちゃん〜、今日はごめんね〜」

「どうして謝るの? 野乃葉ちゃんは何も悪いことしてないよ」

「最後に泣いちゃった〜」

「そんなこと気にしないで・・・・」

「柚衣ちゃんと〜、中園君の〜、邪魔しちゃうと大変だから〜」

「別に野乃葉ちゃんと琉生が付き合ってもいいんだよ」

「中園君は〜、柚衣ちゃんのことが大好きだよ〜」

「どうしてそんなこと分かるの?」

「昔から〜、分かってたよ〜」

思わぬ一言に私は驚いた。野乃葉ちゃんはいつからそう思ってたんだろう?


 私は詳しくは聞かず、『おやすみ』を言って電話を切った。

 中園琉生か〜。私が好きなのは草壁君なのに、どうして急に私の予定を狂わすのよ! 草壁君に告白して、草壁君と付き合って、幸せになって・・・・。


 琉生も悪い人じゃないんだよね。それは口が悪くって、自分に素直になれなくて、自己中心的で、頭が悪くって・・・・。やっぱ碌な奴じゃないか。


 琉生のバカ。もう少し早く言ってたら悩まずにすんだのに。草壁君のこと好きになっちゃってから言わないでよ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ