第26話 告白?
私は突然の言葉に怒りを込めて琉生を睨み付けた。
「・・・・どうして? どうしていきなりそんなこと言うの?」
「あいつじゃ柚衣を幸せにできない」
「何を根拠に。そんなのつきあってみなきゃわからないじゃない!」
「わかるさ」
「琉生のバカ!」
私は半泣き状態で立ち上がった。信じられない。せっかくいい雰囲気になってる時にこんなこと言わなくてもいいじゃない!
「待てよ。落ち着いて考えてみろ」
琉生が私の手首を掴んだ。
「離してよ!」
私は思いっきり手を振って掴まれている手を振り払おうとしたが、意外に琉生の力が強く離れない。
「離してよ!」
「お前と草壁では釣り合いが取れてないだろう。暫く付き合えても捨てられるのがおちだ」
「草壁君はそんな人じゃないもん」
「冷静に考えてみろ。あいつはイケメンで誰にでもモテるんだ。しかも超大金持ちというおまけまでついている。釣り合ってると思うか?」
「釣り合ってるもん」
「お前の悲しむ姿を見たくないんだ」
琉生の言うこともわかる気がする。確かに釣り合ってないよね。それはわかってる。わかってるけどこのまま諦めるのは嫌!
「最大限努力する。だから好きにさせて」
私の声は小さくなっている。たぶん自信のなさがそうさせているんだよね。
「わかった本当のことを言うよ」
「本当のこと?」
「お前が草壁のことが好きだって聞いたとき、改めて自分の心を見つめることができたんだ」
「え? 何?」
「俺は柚衣を失いたくないってことに気付いたんだ。お前が他の男と付き合うのは耐えられない!」
「ちょっと琉生‥‥」
「俺は柚衣が好きなんだってわかったんだ。俺と付き合ってくれ。そして他の誰とも付き合うな!」
え? これって告白?
「何言ってるのよ?」
琉生は真剣な眼差しで私を見つめている。
予想はしてたけど本当に言われるとは思わなかった。いざ言われてみると変な感じ。だって姉弟のように接していた人だよ。どうしたらいいんだろう? 草壁君が好きなのは変わらないけど琉生の気持ちも嬉しい気がする。
私の心臓は破裂寸前だ。私は深呼吸をすると琉生に向かって叫んだ。
「何よ突然。今まで散々冷たくしてきたくせに!」
「悪かった。今思うと照れ隠しだった気がする」
「どうしてこのタイミングでそんなこと言うの? せっかく草壁君といい雰囲気になってきたのに」
「今しか言えないから。これ以上お前と草壁が仲良くなったら、何も言えないから」
私は次の言葉が出てこなかった。琉生の本気が伝わってきたから。でも、こういう時どうすればいいんだろう。私は琉生から視線を逸らすと見てはいけないものが視界に入ってきた。
「今日はもてるね。柚衣」
え? 沙耶ちゃん?
「どうしてお前がいるんだよ!」
琉生が驚いて大声を出した。
「中園君、とうとう言ったね。僕もこうなるんじゃないかと思ってたんだ」
えええええええええ〜!!! 草壁君!!! まさか今の話聞かれちゃったの? 嘘でしょ! 嘘と言って!
「く、草壁君。今の話は違うの!」
私は慌てて言い訳を試みた。
「僕は気にしてないから、気を遣わなくていいよ」
「いや、そうじゃなくて・・・・」
ダメだ。草壁君のこの目。友人の幸せを祝う目だ。どうしてこういう展開になるのよ! ああ! 告白される女の喜びに酔いしれてしまった私が悪いのよ! もっときつく徹底的に断っておくべきだったわ! やっぱりもっと早い段階で琉生を殺っておくべきだったのよ。
「どうしてお前たちがここにいるんだよ!」
琉生が大きな声で聞いた。
「二人で公園に行ったから後を付けてきたのよ。気付かなかった?」
「みんなひどいよ」
私は泣きそうになった。やっぱり草壁君は諦められない。でも、この状況じゃ終わってしまう。何とかしなきゃと思っても、私は何も言えないままでいた。どうしていいか分からないよ。