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1話 不死身の少女
「はぁ。人が多いなぁ」
信号を待ちながらボソッと呟く。
久々に都会に出てきたが、ここまで人がひしめき合っているとは驚いた。それに何といっても建物が高い。そのうち空が見えなくなるに違いないな。
信号が青に変わり、一斉に人が動き出す。人ごみに飲まれては大変だと、私はあわてて歩みを進めた。
都会でも表通りを抜けたら静かだな、と思いながら待ち合わせ場所の廃ビルに入る。中には一人の少女がパイプ椅子に座って待っていた。
その少女は肩程までに伸びた黒髪を揺らめかせながら、にやにやとした笑みを浮かべている。彼女は私の古くからの親友である。
「やぁやぁ久しぶりだね不死身ちゃん。元気でやってるようで何よりだよ」
「久しぶり。由良ちゃんは変わらないね」
「いやいや、私も結構変わったよ。」
他愛のない雑談に花を咲かせつつ、由良ちゃんがおもむろに切り出した。
「ところでだけど、不死身ちゃん。今日不死身ちゃんを呼んだのは、ちょっと困ったことがあるからなんだ」
「ほう、困ったこと、ね」