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第八十七話 好敵手

「気に入らないっていうのなら、わたしたちに相談して頂戴ね。軍団の気風とか在り方って軍団長によって大きく変わるから、合う合わないは必ずあるものなのよ。そこで我慢してもいいことなんて一つもないでしょう。だから、戦闘部の導士どうしには軍団間の移籍に関してかなりの自由度があるのよ」

「上官に不満があれば、なんなりといってくれればいい。戦団は風通しのいい組織を標榜しているからね」

「標榜するだけで機能しないような、そんじょそこらの組織じゃないのよ、うちはね」

 朱雀院火留多すざくいんかるたが、茶目っ気たっぷりに片目を瞑ってみせた。

 そうして入団に関する説明を終えると、頃合いを見計らったように扉が開き、室内に五人の導士が入ってきた。

 導士たちは、それぞれ同じ大きさの鞄を持っており、五名の新人導士たちの眼の前に置いていく。そして、去っていった。

「その鞄には、導士としての活動に必要な物が詰め込まれている」

「あなたたちの導衣どうい転身機てんしんき星印せいいん――俗に言う三種の神器ね。転身機の使い方なんかに関しては、後で説明があると思うから、いまは省けど許してね。ああ、鞄の中身は見てもらっても構わないわよ」

 火留多に促されるまま、幸多こうたは足下に置かれた鞄を開き、収納されているものを確認した。火留多のいったとおりの物が詰め込まれている。

 戦団導士にとっての三種の神器、である。

 まず、導衣が鞄のほとんどを占めていることがわかる。

 導衣は、戦団の導士が身につける戦闘用装備であり、防具だ。魔法使いの長衣ローブを連想させる漆黒の衣は、魔法士まほうしの戦闘能力を引き上げるだけでなく、幻魔げんまとの戦闘等における生存力を高めるものでもあるという。

 導衣は、内衣と外衣からなり、それぞれ様々な意匠が存在するのだが、幸多たちに支給されたのは、ごく一般的な意匠の導衣だった。

 そしてそれは、第三世代の導衣・流光りゅうこうである。

 折り畳まれた導衣の上に置かれているのが、星印と転身機だ。

 星印は、戦団内における階級章であるとともに、戦団に所属している導士であることを示す身分証としても機能する。

 星印は、階級によって形状が異なり、所属部署によって基調となる色彩が違っている。戦務局戦闘部の一員である幸多の星印は、黒を基調としていた。形状は、最下級である灯光とうこう級の三位を示す、飾り気の少ない一つ星だ。

 星印は、衣服の目立つ場所に付けるものであり、導衣ならばどこにでもつけられるという話を聞いたことがあった。

 多くの導士は、星印を導衣の胸元に付けている。

 たとえば、火留多は制服の右胸部分につけていたし、二屋一郎はネクタイピンのようにして身につけている。そのように星印は、目立つ場所ならばどこにつけてもいいのだ。逆にいうと、目立たない場所につけるのは、戦団の規則上許されないことだった。

 そして、転身機。

 転身機の実物を見るのは、幸多も初めてだった。情報媒体等で見たことは有るし、統魔とうまが撮影した転身機の写真を見たこともあるが、実物を直接この目で見るのはこれが最初だった。

 戦団が技術の粋を結集して作り上げたそれは、極めて精密な魔機まきであり、超技術の結晶といっていい。

 ちなみに、魔機とは魔法機械の略称であり、魔法時代黄金期から今日に至るまで、魔具まぐとともに使い古されている言葉だ。魔具は魔法道具の略称で、魔法に関連する道具の総称だが、魔機は、魔法を利用する機械技術の総称と考えていい。

 魔機と魔具の間に厳密な区分はなく、法器ほうき法機ほうきもそれらに含まれる場合もある。

 転身機は、一見すると、手のひらに収まるほどの大きさの金属の塊だが、超小型の物質転送機と物質置換機構が組み込まれている。物質転送機は、かつて空間転送魔法を技術的に再現した魔機のことであり、今となっては当たり前に利用されているものだ。しかし、転身機ほどの小ささに収まっているものは、ほかには存在しない。

 だからこそ、戦団の超技術なのだ。

 物質置換機構は、物質転送機を応用した技術だが、それもまた超技術である。現在身につけている衣服と導衣を置き換えるという代物であり、これまた戦団が独占している技術だった。

 それらは戦団技術局が誇る天才技術者日岡(ひおか)イリアによって開発されたものであり、革新的な発明とうたわれた。

 いまや導士の標準装備として活用されているのだが、転身機の何がいいのかといえば、たとえ私服で活動しているときに幻魔災害と遭遇した場合、瞬時に導衣に着替えることが出来るということだ。

 導衣は、導士の戦闘力を向上させ、生存力を飛躍的に高める装備であるが、平時でも常に導衣の格好で行動するわけにはいかなかった。

 それは、人間としての生活を捨てているのと同義だ。

 転身機の発明は、そうした戦団と導士たちの苦悩を解決することとなり、大いに喜ばれた。

 導衣は戦闘には有用だが、戦闘以外の場面ではなにかと不便だということも取り沙汰され、問題になっていた。しかし、転身機があれば、そうした問題は全て解決する。任務中でも、戦闘時以外は普段着で過ごすことができるからだ。

 転身機は、まさに革命的、革新的といっていい大発明なのだ。

 その転身機を手に取った幸多は、金属の塊のような見た目の割りには重みを感じないことに気づいた。もしかしたら、金属ではないのかもしれない。

 転身機は、常に身につけておくものであり、軽いことに越したことはないし、手で握り締められるくらい小さいということも重要だろう。

 転身機の装着方法は、人それぞれだ。

 統魔の場合は、腰のベルトに装着しているという話だった。

 そんな統魔から得た情報を思い浮かべつつも、幸多は、まさに感無量といってよかった。

 なにせ、念願だった入団が叶い、三種の神器も手に入ったのだ。これで感動しない方がどうかしている、と、幸多は自分のことながら思った。

 ふと、隣を見ると、草薙真くさなぎまことが導衣を握り締めて、見つめていた。その手がかすかに震えているように見えるのは、気のせいではあるまい。それはきっと、感動のせいに違いない。

 彼も、この状況に心を震わせているのだ。

 幸多はなんだか親近感が湧いてきて、つい、声を掛けてしまった。

「良かったね」

「……あ、ああ。良かった。本当に、良かった……」

 真は、一瞬戸惑ったようだったが、幸多に対して気取るような真似はしなかった。むしろ、本心を吐露とろするようにいった。

 そんな彼の心情を聞けば、彼が決勝大会終了までいかにねじ曲がっていたのかがわかろうというものだったし、それだけの想いが彼の中に渦巻いていたのだと察することも出来た。

 もちろん、統魔に対する暴言は許されないことだが、彼の立場からしてみれば、そのような発言をしたとしても致し方のないことかもしれない。

 いまならば、わかる。

 彼はただ、戦団に入りたかっただけなのではないか、と。

 それが家の問題もあって、許されなかった。

 心が歪んだとして、ねじ曲がったとして、おかしなことではない。

 そういう人間を一人、幸多は知っている。


 それから、入団に関する質疑応答があった。

 そして、火留多と二屋一郎ふたやいちろうによる戦闘部に関するざっくりとした説明が続き、入団式は幕を閉じた。

 極めて簡素な式典だったが、これが戦団における正式な入団式ではないことくらい、幸多だって知っている。

 対抗戦優秀者のうち、入団希望者が出たときのみ行われる、色々と省略した儀式なのだ。

 正式な入団式といえば、星央魔導院せいおうまどういん中等部卒業生が大量に入団することになる毎年四月、戦団本部で開催される式典であろう。

 また、定期的に行われている入団試験の合格者に対しても、略式の入団式が行われているらしい。

 入団式が終わると、戦闘部の導士による説明会が開かれた。

 そこでは、導衣の性能、星印の意味、そして転身機の使い方に関する説明があった。転身機は、現在の導士にとって必要不可欠な魔機だ。その使い方は早々に熟知しておくべきだった。

 とはいえ、難しい操作は必要なかった。

 まず自分の音声を登録する必要があったが、それも簡単だった。

 それが済めば、ただ転身と呼べば、それだけで今身につけている衣服と導衣が置き換わったのだ。その際、転身機が光を発し、全身を包み込むため、衣服と導衣が置き換わる際に裸が見られる心配はない。もっとも、置き換わる時間は刹那にも満たないわずかな時間であり、仮に発光機能がなかったとしても、同じことだっただろうが。

 また、転身機に衣服を登録する方法、登録した複数の衣服の中から置き換える衣服を選択する方などについて詳しく説明された。転身機に衣服を登録しなくとも、転身機が発光するとともに現在身につけている衣服を読み取り、仮登録してくれるということだった。

 登録した衣服、導衣の管理は、携帯端末などで行うことができるという。

 幸多たちは、指導役の導士に言われるまま、転身機の機能を試してみた。

「転身」

 その一言で、手にした転身機がまばゆい光を放ち、幸多の全身を包み込む。そして、つぎの瞬間には、全身を違和感が覆っていた。一瞬にして、身につけていた衣服が導衣へと変化し、導衣の収まっていた鞄の中には、さっきまで身につけていたはずの衣服が収まっている。

 転身機は、物質転送機の技術をさらに突き詰めて開発されたものだという。

 故に、導衣がどれだけ遠くに離れた場所にあろうと、現在身につけている衣服と瞬時に置換してくれるのだ。

 幸多たちが身につけた導衣は、特別凝った意匠ではないにせよ、一般的に導士が装備する導衣そのものであり、そのことに文句はなかった。それこそ想像上の魔法使いが身につける長衣を連想させる、漆黒の戦争装備。

 素肌に密着した内衣と、その上から羽織る外衣が、まるで幸多が魔法使いであるかのように演出する。

 隣を見れば、草薙真も導衣を身につけている。彼の銀鼠ぎんねず色の頭髪と漆黒の導衣は、よく映えていた。似合っている。

 金田かねだ姉妹も菖蒲坂隆司あやめざかりゅうじも、まったく同型の導衣を身につけており、彼らも似合っていた。

 一番似合っていないのは、幸多かもしれない。

 幸多だけは、着せられている感が強かった。

「もっと詳しく知りたければ、きみらの端末に説明書が送られているはずだから、それに目を通すといい。ついでにいうと、戦団に関する情報書類も大量に送られているから、目を通しておくように。まあ、大抵のことは、これからゆっくりと学んでいけるだろうが」

 若い導士は、そうして一連の説明を終えた。

 戦闘部に入った以上、戦団における活動の基礎を学ぶのは、配属先の各軍団でのことであり、彼が教えるのは、基礎中の基礎だけだという話だった。

 そして、これから各人、所属先の軍団の兵舎に移動するということになった。

 戦闘部十二軍団の兵舎は、戦団本部の敷地内に存在する。

 そうして、幸多たちは、導衣から私服に着替えると、本部棟二階、戦務局区内の戦闘部区から離れた。

 導衣から私服に着替える際も、転身の一言で良かった。たった二度の使用で、転身機の利便性を大いに実感したものである。

「これでわたしたちも晴れて導士というわけか」

「まさか姉さんともども入団できるなんて思わなかったけど」

「そうねえ。まさかあんたが優秀選手に選ばれるだなんて、思ってもみなかったわ」

「それ、わたしの台詞」

 金田朝子(ともこ)友美ともみが軽い口喧嘩をしながら、前を進んでいく。そのすぐ後ろを歩いているのは菖蒲坂隆司であり、彼は苦笑とともに振り返ってきた。

「やれやれ、相変わらず仲の良い姉妹だな。なあ、最優秀選手のお二人さん」

「そ、そうだね」

「ん?」

「話を聞いていなかったって感じだな。対抗戦では敵同士だったが、これからは数少ない同期の導士なんだ、少しは仲良くしようじゃないか」

「それもそっか」

 今年入団したばかりの新人同士というのは、それこそ百人以上いるはずだが、しかし、時期を考えれば、完全な同期といえるのは、この五人だけかもしれない。

 少なくとも、星央魔導院から直接戦団に入った導士たちは、対抗戦という手段で入団したものを同期としては認めないかもしれない。

 なんとなく、そういう感覚があったとしてもおかしくないのではないか、と思う。

 すると、金田朝子が振り返ってきて、いった。

「配属先が違うわけだし、仲良くなんてしていられない気もするけどね」

「そうよね。ま、わたしたちは同じ軍団でも仲良くなんてしないけど」

 金田友美が、にこやかに笑う。口ではそんなことをいいながら、実際にはそこまで仲が悪いわけではないらしいということは、姉妹のやり取りを見ていればわかるというものだ。

 金田朝子と友美の姉妹の配属先は、第六軍団である。それは姉妹が望んだ配属先であり、二人のお目当ては、第六軍団長新野辺九乃一(しのべくのいち)らしかった。

「ま、そりゃそうだ」

 菖蒲坂隆司も、二人の意見に賛同するほかないという顔をした。確かに同期は同期だが、この同期五人が一堂に会する機会など、そうあるものでもあるまい。

 菖蒲坂隆司は、第十二軍団への配属となっている。第十二軍団は、星将せいしょう獅子王万里彩ししおうまりあが長を務める軍団である。

 ふと、幸多の隣を歩いていた草薙真が足を止めた。幸多は、気になって彼を横目に見た。彼は、幸多を見ていた。

「そうだな。もう、あまり会う機会もないかもしれないんだな」

「そうでもないと思うけど……」

 幸多は、彼がどうにも深刻なことをいってきたので、静かに否定した。

 確かに配属先は異なるが、だからといって一生会えないはずもない。

 まず、小隊での活動が主になるのだ。他軍団所属の小隊と共同で任務に当たることも少なくないという話だった。もちろん、幸多の所属することになるであろう小隊と、真の所属することになる小隊が共同で任務に当たることになる可能性は、極めて低いのだろうが。

 だとしても、これが今生の別れになるはずもない。

 そう、信じたかった。

「いや、戦闘部に入ると言うことは、そういう覚悟が必要だと言うことだ。それは、きみだって理解していることだろう、皆代みなしろくん」

 真は、完全に幸多に向き直っており、先を行く三人のことなど意識の外に追い遣っていた。彼らにはなんの興味も持てないのだから、当然だ。

 真からしてみれば、菖蒲坂隆司も金田姉妹も、他の決勝大会参加者と同じ有象無象に過ぎなかった。ただ一人、皆代幸多を除いては。

「草薙くん……」

「おれのことは、真でいい。年齢的にはおれのほうが上だが、精神的には、きみのほうが随分と上のようだ」

「そんなことはないと思うよ」

「いや、少なくとも成人年齢を過ぎて二年経過したおれなんかより、余程、きみは大人だったよ。そして、きみには感謝している」

「感謝? なんで?」

 幸多は、真が予期せぬことを言い出してきたものだから、怪訝な顔になった。彼の口から感謝などと言う言葉がでてくるのは、想定外も想定外だ。

 そもそも、穏やかに会話を出来ているという事態そのものが、草薙真という不穏そのものだった人物からは考えられないことだったし、別人のような気配すらあった。

 しかし、彼が草薙真当人であることは、疑いようもない事実でもある。

「いま、おれがここにいるのも、おれがこうして素直にすべてを受け入れていられるのも、全部、きみのおかげなんだよ」

 真の瞳が真っ直ぐに幸多を見つめていた。そこには一切の不純物はなく、ただ純粋な気持ちをぶつけてきているということが伝わってくるから、なおさら、幸多は混乱するのだ。

 幸多は、彼になにかをしてやったつもりもなければ、手を差し伸べたり、助言をした覚えもなかった。そもそも、ただ、対抗戦で戦った相手でしかない。

「ええと……ぼく、なんかしたっけ?」

「おれをぶちのめし、鼻っ柱を折ってくれたじゃないか」

「それのこと!?」

「それのことだよ」

 そして、と、真は心の中で、続ける。

(おれを認めてくれた)

 幻闘げんとうにおける最終決戦の最中のことが、いまも真の脳裏で鮮明な輝きを放っている。幸多との激闘、というよりはほとんど一方的な戦いだったが、その中で、彼は、幸多にその実力、技量を賞賛されたのだ。

 その言葉が真の胸に突き刺さったのは、おそらく幸多が圧倒的だったからだろう。

 言葉には、説得力がなければならない。

 説得力のない言葉は、精神的に余裕のない人間には、響かないし、届かないのだ。

 そして、あのとき、あの瞬間の幸多には、否定しようのない説得力があった。

 優秀極まりない魔法士の草薙真を相手に、ほぼほぼ一方的な試合運びをして見せた魔法不能者皆代幸多が発する言葉は、魔法士が紡ぐ真言しんごん以上に真実の言葉のように思えてならなかった。

 それこそ、魔法だ。

 少なくとも、真は、そう想っている。 

「きみは、おれにとって唯一の好敵手だ」

「え!?」

「いや、まあ、それは言い過ぎた。済まない。まずはおれがきみを追いかけて、同じ土俵に立ってからのことだったな」

「あ、いや、そういうことじゃなくて……好敵手?」

「やはり、不満か……きみには皆代統魔がいるものな」

 真は、急激に恥ずかしくなってきて、顔を俯かせた。そういえば、そうだった。幸多は、統魔の兄弟であり、長年一緒に訓練してきたという話を聞いている。

 それは、大会後に知ったことである。

 真は、決勝大会前夜に至るまで、天燎てんりょう高校を眼中にも入れていなかった。万年予選敗退最下位の天燎高校が予選免除権を与えられたところで、決勝大会で奮起するとは考えられなかったし、免除権の発表から約二ヶ月の間に猛練習を重ねたところで、叢雲むらくもの相手になるわけがなかった。

 天燎の話題は、耳に入った。魔法不能者が主将を務めているという時点で、ただの話題集め、天燎財団の優良さを主張するための広告でしかないと断じた。

 だが、違った。

 黒木法子くろきほうこという極めて優れた魔法士がいたことも想定外だったが、皆代幸多は、その全てが彼の想定を遥かに陵駕する存在だった。

 まさか、真が他人との一対一の戦いで敗れ去る羽目になるとは、想像だにしていないことだった。

 だが、幸多が皆代統魔とともに学び、鍛え上げてきたというのであれば、納得も行くというものだ。

 そんな皆代統魔こそ、幸多にとっての好敵手に違いない。

 であれば、草薙真など、相手になるはずもない。

「あの、だからさ、そういうことがいいたいんじゃなくて、だね」

「だが、安心したまえ。おれは皆代統魔を超え、きみに挑戦しよう。きみの好敵手には、おれこそが相応しい」

「ええと……」

 もはやこちらの言葉など届いていないらしい真の様子に、幸多は、頭を抱えたくなった。

 真は、一人納得した様子で、歩き出した。

 幸多は、どうすれば彼の勘違いをただせるものかと考えたが、もはやどうにもならないのではないかと思えてならなかった。

 



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