✒ 赤い靴 1
「 ねぇねぇ、聞いたぁ~~? 」
「 聞いた聞いたぁ~~ 」
「 え~?
何の話ぃ? 」
「 赤い靴の怪談! 」
「 赤い靴の怪談?? 」
「 何それぇ? 」
「 今、旬の怪談だよ!
都市伝説の1つなの 」
「 帰り道、1人で歩いてると空から赤い靴が落ちてくるんだってぇ! 」
「 何それぇ~~? 」
「 童話の絵本で読んだ事あるけど、履いたら勝手に踊り出すの? 」
「 ん~~、何かね、そういうんじゃないみたいよ? 」
「 じゃあ、どんなの?? 」
「 アタシも又聞きした話だからね。
落ちて来た赤い靴なだけど、自分の足のサイズにピッタリなんだって! 」
「 えぇ~~!?
何で分かるのぉ? 」
「 まさか履いて確かめたとか?? 」
「 嫌だ、こわぁ~~~~い!! 」
「 履くとか信じられなぁ~~い! 」
「 それで、それで?
履いた後はどうなるの? 」
「 誕生日を迎えた日──の、産まれた時間に死んじゃうんだって!
何故か赤い靴を履いた状態でね! 」
「 何それぇ~~? 」
「 死んじゃうの!? 」
「 何でぇ?? 」
「 赤い靴を履いちゃったから?? 」
「 ううん。
履く,履かないは関係無いみたいよ。
何でも、誕生日の1週間前に赤い靴が空から落ちて来るんだってぇ! 」
「 えぇ~~!?
誕生日の1週間前にぃ? 」
「 嫌なんですけどぉ~~~~ 」
「 パジャマ着てるのにベッドの中で、赤い靴を履いたまま死んでたら、発見する親も吃驚するよねぇ? 」
「 そ、そうだよね……。
靴を履いて布団やベッドに入らないもんね…… 」
「 ねぇねぇ、それって何処の道なの? 」
「 超ぉ~~通りたくないんですけどぉ~~!! 」
「 だよね、だよね!
ねぇねぇ、何処の道なの?
教えてよぉ~~! 」
「 そ……それがね……、赤い靴は日本全国で起きてるんだって……。
“ 何処の道 ” ってのは無いみたいで…… 」
「 えぇ~~!?
何それぇ! 」
「 日本全国で起きてるの?? 」
「 怖過ぎるんですけどぉ~~!! 」
「 やだぁ~~!
今日から1人で帰れない~~!! 」
「 ネットでは “ かげのう君の贈り物 ” って言われてるみたいなの! 」
「 かげのう君??
益々何それぇ──なんだけどぉ~~ 」
「 怪しげな奴からのプレゼントなんか要らねぇ~~ 」
「 ──という事がありまして…… 」
「 ふぅん?
──でぇ、君は僕に幾ら出せるんだ? 」
「 え?
………………女の子なのに “ ぼく ” なの?? 」
「 あはははは……。
シュンシュンの事は気にしなくて良いよ 」
「 何だよ、君は女の子が “ 僕 ” を使う事に否定派の奴か? 」
「 そ、そんな事は無いけど……。
貴女は可愛いから… 」
「 ふぅん?
君は可愛い女の子は、自称に “ 僕 ” を使うべきじゃない──って言うのか? 」
「 そ、そんな事は── 」
「 シュンシュン、それぐらいにしてやれよ。
女の子なんだしさぁ、手加減してやれよ。
な? 」
「 緊張してるみたいだから、緊張を和らげてやったんだ。
僕は優しいからな!
──本題に戻るが、君は幾ら出せるんだ?
僕は “ 本物 ” だから高いぞ 」
「 幾らって…………お金……??
私……そんなに持ってないよ… 」
「 シュンシュン、報酬は後で良いだろ。
先ずは話を聞いてあげよう 」
「 分かったよ。
僕はパフェを食べてるからマオが話を聞いてやれよ 」
「 シュンシュン…… 」
「 あの… 」
「 えぇと──、茄步さんだったね。
誕生日を迎えた茄步さんの元に赤い靴が現れた──って事で良かったよな? 」
「 えと………………はい…… 」
「 嘘を吐くんじゃない。
赤い靴を受け取ったのは君じゃないだろ。
正直に言えよ 」
「 ──っ……は、はい……。
実は…………赤い靴を持ってるのは……私のクラスメイトなんです……。
女子のリーダー的存在の子で…… 」
「 ふぅん?
君はその子に苛められてる訳だな 」
「 えっ…………ちが……違います…………違い…ます…… 」
「 大方、その女から命令でもされた口か?
自分で依頼に来ない奴の事なんか知らないねぇ。
助かりたいなら、“ 自分で依頼しに来い ” と言ってやれ!
話は終わりだ、帰れ 」
「 シュンシュン、本人じゃなくても良いじゃん。
茄步さんに依頼を頼んだ子が、赤い靴を受け取ってから何日経ってるのか教えてくれるかな? 」
「 ……………4日です…。
3日後に誕生日を迎えます。
噂が本当なら、3日後の誕生日に亡くなってしまう事に………… 」
「 でもさ、何で “ 赤い靴 ” 何だろうな?
“ かげのう君の贈り物 ” だっけ?
他にも気の利いた贈り物 があると思うんだけどな? 」
「 針を刺された毛髪と血液入りの人形とかか? 」
「 違うよ!
何で “ 赤い靴 ” なのか不思議でさ、気になるんだよ。
何か意味が有るのかなって… 」
「 “ 赤い靴 “ ってタイトルの童話を知ってるか? 」
「 知るわけないじゃん。
オレは読書すると3頁で寝ちゃうんだぞ 」
「 そうだったな。
“ 赤い靴 ” って話はな、主人公の女は斧で足を切断されるんだ 」
「 えぇ゛?!
主人公の足が切断されるぅ??
どゆことだよ! 」
「 “ 赤い靴 ” には厄介な魔法が掛けられていたのさ。
履いたら死ぬまで踊り続けるようになっているんだ。
主人公を終わらない踊りから解放する為には、両足首から切断するしか方法が無かったのさ。
魔法を解けないからねぇ 」
「 ………………童話の “ 赤い靴 ” どんな関連が有るんだ? 」
「 僕が知るかよ。
赤い靴の現物が有れば、赤い靴を落とした犯人を特定する事は可能だ。
そいつに『 何で赤い靴にしたんだ? 』って聞く事も出来るぞ 」
「 犯人を特定出来るなんて、流石シュンシュンだな!
じゃあ、肝心の赤い靴を借りれたら良いんだよな?
茄步さん、赤い靴は持ち主から借りれるのか? 」
「 えっ…………それは………… 」
「 難しいのか?
その女は赤い靴に御執心でもしてるのか? 」
「 …………いぇ…………気味悪がって……燃やしてしまったみたいで……無いんです…… 」
「 えっ?
貴重な手懸かりになる赤い靴を燃やした!?
何考えてるんだよ… 」
「 赤い靴が無くなれば被害に遭わない──とでも思ったんじゃないか?
浅はかな馬鹿野郎も居たもんだな 」
「 あの……どうにか出来ませんか…………。
そうでないと、私……彼女達に…………うぅ…ぅぅ……… 」
「 泣いちゃったぞ、シュンシュン…。
何とかしてあげれないのか? 」
「 あのなぁ──、自分で来もしない他人任せな奴だぞ。
尚且つ肝心の赤い靴を燃やして証拠焼失させた馬鹿だぞ。
助ける必要あるか?
学生みたいだし、報酬も期待出来そうにない。
僕は気が乗らないねぇ 」
「 ………………会うだけ会ってさ、当事者にも話を聞いてみようよ。
赤い靴が落ちて来たっていう道で調べる事とか出来るかも知れないしさ。
シュンシュンなら赤い靴が無くても出来るんじゃないのか? 」
「 お前さぁ、本当に御人好しだな。
金にならない依頼を僕に “ 受けろ ” って言うのかよ? 」
「 依頼を受けるのは当事者に話を聞いてからでも良いんじゃないのか?
又聞きじゃ分からない事が多過ぎるしさ… 」
「 僕は暇じゃないんだぞ。
たく……分かったよ。
馬鹿な当事者に話を聞きに行ってやるよ 」
「 やっぱりシュンシュンだな! 」
「 何だよ、“ やっぱり ” って…… 」
「 あ……有り難う御座います……!! 」
「 取り敢えず行くか。
茄步、馬鹿女の居る場所に案内しろ 」
「 は、はい…! 」
春麗とマオは依頼人代理の茄步と共にカフェを出ると当事者の元へ向かった。