♥ 人形がいる 1
「 おい、聞いたか!
また出たんだってさ!
これで13人目だ! 」
「 気味が悪いよな……。
何処の誰があんな悪戯をするんだか… 」
「 あの人形は──、どうするんだ? 」
「 また寺に引き取ってもらうしかないな… 」
「 引き取ってもらえるでしょうか?
もう13体目ですよ 」
「 仕方無いだろう!
あんな気味の悪い人形を放置は出来ないだろう 」
「 今度は全治何ヵ月になるんでしょうね… 」
「 分からんな…… 」
「 お祓いとかしてもらった方が良いんじゃないですか? 」
「 お祓いかぁ……。
お祓いなんかで、あの人形が出て来ない様に出来るもんなんですかね? 」
「 例え “ 気休め ” だとして何かしらはやっといた方が良いんじゃないですか? 」
「 そうですよ!
14人目が出ても困りますし、取り敢えず形だけでも── 」
「 おい、お祓いって何処に頼むんだ?
費用は幾らぐらい掛かるもんなんだ? 」
「 あの──、俺の甥っ子なんですけど、こういうヤバい類いを解決させてくれる知り合いが居るみたいなんです。
一応、甥っ子に話してみて良いですか? 」
「 あ、あぁ……。
何か怪しそうだが……ツテが有るなら頼むわ。
出来る限り、お祓いの費用は値切ってくれよ! 」
「 値切れるもんですかね? 」
「 皆で割り勘だからな!
財布の中が空になるのと給料を減額させるのとどっちが良いんだ? 」
「 おい、拓弥聞いたか!
確り費用を値切って来いよ! 」
「 給料が減額されると妻に殺されるぅ~~ 」
「 ………………交渉はしてみますけど、期待はしないでくださいよ? 」
「 それにしても迷惑な話だよなぁ!
何が “ かげのう君の呪い ” だよ、 全く──。
大迷惑だぜ! 」
「 皆、呉々も帰り道には気を付けてくれよ! 」
「 14人目にはなりたくねぇや。
クワバラクワバラ…… 」
「 ──という事がありましてね、春麗さん…… 」
「 お前の前置きは長いんだよ!
たく──、今度は何だよ… 」
「 春麗さんには “ かげのう君の呪い ” が起きないように、お祓いをしてほしいんスよ 」
「 一体幾らでやれって?
僕は1円も値切らないぞ 」
「 春麗さんならそう言うと思ってましたよ… 」
「 なぁ、人形が “ かげのう君の呪い ” って、どゆこと何だ? 」
「 マオさん、口の周りソースでベトベトッスよ…… 」
「 マオのは何時もの事だよ。
ほっとけ。
帝呀──、お前は何処まで事情を把握してるんだ? 」
「 えっとッスね、甥っ子さんの紹介で有名な霊能力者や霊媒師,祓い屋や悪霊祓い師なんかに頼んでは、何度も “ お祓い ” をしてもらっていたみたいなんスよ。
帰り道に怪我をして入院する作業員が出る度に依頼してもらってたらしいッス。
何度お祓いをしてもらってもちっとも改善されなくて、廃業寸前まで追い込まれてるんスよ!
値切ってる手前、文句も言えなくて──、とうとう地元の神社や寺に依頼して、祈祷やお祓いをしてもらったそうなんッスよね 」
「 ふぅん?
良い気味だな!
値切り交渉して何とかしてもらおうなんて、ふざけた事を考えるからさ!
“ ざまぁみろ ” だ! 」
「 シュンシュン、他のお客さんも居るからさぁ…… 」
「 僕は値切り交渉する様なケチ臭い依頼人は大っ嫌いなんだよ!
セコい企業なんて、とっとと廃業すれば良いんだ! 」
「 シュンシュン、言い過ぎだぞ? 」
「 煩い!
お前は黙ってバーガーでも食ってろ! 」
「 あの──続きを話しても良いッスか? 」
「 あぁ、さっさと話せ 」
「 人形を引き取って、人形の供養をしてくれていた寺の住職が、お祓いをしてくれたんスけど──、寺が全焼してしまって…………。
寺に引き取ってもらっていた人形が全部、戻って来ちゃったんスよ。
そんで──、甥っ子に依頼していた伯父がッスね、とうとう “ かげのう君の呪い ” の被害に遭っちまって、全治半年ッスよ。
甥っ子が責任を感じちゃって叔父である俺に泣き付いて来たって訳ッス 」
「 ふぅん?
まさか──、戻って来たっていう人形の始末まで僕にさせる気じゃないだろうな? 」
「 御名答ッス 」
「 馬鹿言えよ!
何で僕が尻拭いしないといけないんだ! 」
「 シュンシュン、良いじゃん。
どんな人形なのかも気になるしさ、受けてやろうよ。
天下無敵の偉大な陰陽師──シュンシュンならチョロいんだろ? 」
「 フン!
煽てたって駄目だぞ。
──1千万だ。
1千万、用意させろ。
これ以上の値切りはしない! 」
「 シュンシュン、幾らで何でも1千万はボリ過ぎやしないか? 」
「 ボッテない!
これでも良心的な額なんだよ!
他の陰陽師に依頼でもしてみろ、安くても5千万は請求される依頼内容だぞ 」
「 えぇ~~~~。
本当かよ… 」
「 オカルトはボロい商売だからな。
一攫千金なんて日常茶飯事なのさ! 」
「 春霊さん、1千万は流石に…… 」
「 なら、断れば良いだろ。
企業が廃業して潰れたって、僕の知ったこっちゃないんでね。
マオ、帰るぞ~~ 」
「 えぇ~~!
シュンシュン、今度こそ “ かげのう君 ” に会えるかも知れないぞ!
これはチャンスじゃないのか? 」
「 何が “ かげのう君 ” だ。
僕は興味無いんだよ! 」
「 お……お……お願いしますっ!!
甥っ子が精神的に追い詰められてて自傷行為を止めないんスよぉ!!
自分の所為で伯父が入院した──って、ずっと自分を責め続けているんス!!
今でも何処からともなく人形が落ちて来ては、被害者がで続けてるッスよ!!
この通りッス!
依頼を受けてください!!
呪いを……呪いを何とかしてくださいッス!! 」
「 うわぁ~~。
見事な土下座だな、シュンシュン 」
「 知るかよ。
みっともないから土下座を止めろ。
注目されてるだろが! 」
「 お願いしまッス!!
この通りッス!!
俺──春麗さんの奴隷になりますからっ!! 」
「 シュンシュン……。
取り敢えずさ、現場に行って見てみようよ。
な? 」
「 マオ……。
お前は御人好しだな。
あぁもぅ、分かった分かった。
引き受けてやるよ。
但し、1千万は用意しろよ! 」
「 ……………………もう少しまけてくださいよ… 」
「 そうか。
床とキスしたいんだな?
物好きな奴だ。
手伝ってやるから感謝しろ? 」
「 い──1千万、用意させて頂きますぅ!! 」
「 分かれば良いんだ。
マオ、現場へ行くぞ 」
「 これ、食べ終わってからで良いだろ? 」
「 持ち帰りにしてもらえ!
おい、スタッフ!
此方に来い!
優待者様が、お呼びだぞ! 」
「 シュンシュン!
恥ずかしいから止めろよぉ!! 」
「 漫才でも見てるみたいッス…… 」