✒ 白い鳥居 10
シュンシュンの事務所── 名義はセロ ──の屋上に式神が着陸する。
飛行機じゃないから “ 着陸 “ は変かな?
鳥型の式神の背中から降りると、シュンシュンは式神を消す。
屋上のドアを開けて階段を駆け下りたら、シュンシュンの式隷になった和稀が待つ事務所のドアを開けた。
「 ただいま~~!
和稀、1年間も留守番させちゃって悪かったな! 」
オレはドアを開けて、元気な声で事務所に入る。
事務所の中には座敷わらしの格好をした和稀が居る。
「 あ~~、お帰りなさい!
随分と遅かったね 」
「 5人を見付けるのに時間が掛かっちゃってな~~。
無事に戻って来れて良かったよ 」
「 僕、50年も1人で留守番してて退屈だったんだよ~~ 」
「 は?
50年??
何言ってるんだよ。
オレ達が出掛けて1年くらいだろ~~ 」
「 1年?
ううん、春麗様とマオ様は、矢伯大豈さんの依頼を受けてから50年も音沙汰が無かったんだよ 」
「 マジで? 」
「 マジだよ~~。
因みに今の事務所は玄武様と弓弦様が使ってるよ~~ 」
「 へ?
玄武さんと弓弦さんが使ってる?
どゆこと?? 」
依頼人──矢伯大豈さんから依頼を受けた日から50年が経ってるとか──、シュンシュンの事務所を玄武さんと弓弦さんが使ってるとか──、マジでどゆことぉ~~??
「 ──何だって?!
1年処か50年も経ってるだと?!
どういう事だ!! 」
和稀と話していたらシュンシュンが事務所に入って来た。
シュンシュンも時間の流れの違いに驚いてるみたいだ。
どうやらシュンシュンにとっても想定外だったらしい。
「 シュンシュン……どうしよう…… 」
「 僕に聞くなよ。
まぁいい──、本当は良くないがな。
和稀、今直ぐ矢伯大豈に連絡しろ。
友人を連れ帰って来たってな! 」
「 は~~い 」
和稀は慣れた手付きで依頼人へ電話を掛ける。
「 まぁ、50年も経って様が、僕等は人間みたいに歳を取らないからな。
長い旅行をしたと思えば良いさ 」
「 そ、そうかな~~。
そんな簡単に割り切れるもんかな…… 」
「 割り切れ!
起こってしまった事をとやかく言うのは無しだ!
今の僕等にはやるべき事があるだろう。
先ずは受けていた依頼を終わらせる事に集中するんだ 」
「 そ、そだな……。
矢伯大豈さんに渡す報告書を作らないとだ! 」
という訳で、シュンシュンとオレは依頼人が来る迄に報告書の作成に取り掛かる。
とは言っても報告書の作成作業に奮闘したり、清書するのは、読み書きや算術の出来る式隷なんだけどな~~。
シュンシュンは自分専用のソファーに腰掛けて、和稀が出した和茶を啜りながら寛いでるだけた。
斯く言うオレもセロに話す言い訳──理由を考えるのに忙しくて正直言って報告書の作成処じゃない。
50年もセロと会ってないって事かよ……。
どうしよう……どうしたら、セロの怒りを買わずに済むんだろう??
正直に話して許してもらえるのかな……。
元の世界に戻って来れた日から2日が経った。
事務所のソファーには依頼人──矢伯大豈さんが座っている。
今年の誕生日には67年目を迎えるらしい。
67歳か……。
依頼を受けた時は17歳だったんだよな~~。
時間の流れは残酷だと思えて止まない。
依頼人の矢伯大豈は年齢を重ねて歳を取り、すっかり年配の高齢者だ。
対してシュンシュンとオレと言えば、当時と変わらない15歳と16歳の若い容姿のままだ。
報告書を片手にシュンシュンの説明を受けている矢伯大豈さんは、複雑そうな表情を浮かべて話を聞いている。
どうやって白い千本鳥居を出現させたのか──から始まり、彼方の世界は異界ではなくて、此方と良く似た別世界だった事──。
5人の捜索状況,見付けた当時の5人の様子,生身で戻って来れたのは彼方で薬中になり、現在もラリってる1人だけ──って事と3人は彼方で無くなっていて遺骨を骨壺に入れて持ち帰った事──。
5人目は彼方で家庭を築いていて戻らないと言われて、両親に宛てた手紙と友人の矢伯大豈さんに対して宛てた手紙を預かって来た事──。
あまりにも刺激が強い部分は可能な限りはしょったりしながら実に巧みな話術を駆使してでシュンシュンが説明してくれた。
シュンシュン、立派な詐欺師になれるな★
オレ達が彼方で過ごした期間は約1年間だったけど、探し人だった5人は彼方に来た日から10年もの年数を生きていた事もシュンシュンが説明してくれた。
式隷は矢伯大豈さんにも分かり易い様に報告書に絵まで描いている。
彼方では約1年を過ごしていたのに、何で此方に戻って来たら50年も経っているのか謎だけど、そんな事は横に置いといてだ──、警察に4人の捜索願いを出していた矢伯大豈さんが、捜索願いの打ち切りをする為に警察へ連絡をしてくれた。
後日、警察署へ行って打ち切りの手続きを済まる事になったみたいだ。
忘れたらいけないのが、4人の家族に連絡を入れる事だ。
これも連絡先を知っている矢伯大豈さんがしてくれた。
50年も経ってるから既に両親達は亡くなってしまっている。
4人に兄姉弟妹が居てくれたのは幸いだと思う。
薬中でラリってる奴は、薬物依存を治す施設にでも入れらそうだけどな~~。
こんな状態で戻って来たら身内からは迷惑がられそうで少し不憫に思う。
何はともあれ、4人の家族が事務所に集まる事になった。
矢伯大豈さんに説明した事を4人の身内にも説明しないといけない事になる。
其処等辺は巧みな話術で話してくれるシュンシュンに任せたら良いと思う。
オレはシュンシュンの許可を貰って一足先に裏野ハイツへ帰る事になった。
シュンシュンが転移陣を使って送ってくれる。
オレにとっては1年振りだけど、セロ,セノコン,マオキノにとっては50年振りになるんだよな……。
心臓はセロにあげちゃって無いんだけど、ドキドキと高鳴っている。
どんな顔をして会ったら良いんだろう……。
「 マオ、忘れ物は無いか? 」
「 うん、大丈夫だ 」
「 呉々もセロフィートの機嫌を良くしとけよ!
僕に火の粉が飛んで来ない様に確り、御機嫌取りしとけよな! 」
「 シュンシュン……。
出来る限りの最善は尽くしとくよ 」
シュンシュンからしつこく念押しされたオレは、シュンシュンの転移陣で裏野ハイツへ帰された。
◎ テーマである「 帰り道 」に便乗して投稿した作品を無事に完結させる事が出来ました!
“ なんちゃってホラーもどき ” な作品でしたが、読んでくださったホラー好きの読者の皆さん,ホラーとか関係無く読んでくださった読者の皆さん、有り難う御座いました。
◎ 少しでも【 夏の企画 】の盛り上げに貢献させて頂けたのかは分かりませんけど、皆さんの暇潰しになりましたでしょうか?
未完のまま放置している作品が多いですが、他にも “ 黒歴史の産物 ” が有りますので、暇潰しに読んでいただけると嬉しいです。