✒ 白い鳥居 8
すっかり肌寒さを感じなくなったトンネルを歩き続ける。
シュンシュン曰く、肌寒さを感じなくなったのは、“ 霊道から出たから ” らしい。
シュンシュンには霊道の中に居る沢山の霊的存在や怪異の存在が見えていたみたいだけど、オレは見る事を拒んだ。
怖くて前に進めなくなったら嫌だからだ。
其処迄の強靭な鋼の心と度胸はオレには無い。
長いトンネルを抜けると、沢山の鳥居が彼方此方に建っていた。
何れも千本鳥居だ。
鳥居の色は意外にもカラフルで、ポップな感じがしない事もない。
「 何だよ、此処は……。
鳥居ばっかりじゃんか!
こんな場所、来る時には無かったよな? 」
「 マオ、白い千本鳥居を探すんだ。
僕の式神が目印だぞ 」
「 分かったよ 」
「 これを首に掛けてろ。
僕と御揃いのリングだ。
リング同士が引き合う様になっている優れものだ。
離れても御互いの場所が分かる 」
「 有り難な、シュンシュン 」
「 何が起きたり、出て来るか分からない。
油断はするなよ 」
「 あぁ!
気を引き締めて探すよ 」
オレはシュンシュンと分かれると手分けをして白い千本鳥居を探し始める。
カラフルな鳥居が多くて白い鳥居なんて中々見当たらない。
だけど、この空間で白い千本鳥居を見付けないと、オレ達は元の世界へは戻れないと思う。
多分だけどな……。
「 ──セロ………………会いたいな……。
もう1年も会ってないなんて嘘みたいだ……。
早く帰ってセロに抱き付きたい…… 」
セロが迎えに来てくれたら嬉しいんだけど、そんな事は多分きっと無い。
女々しい事を考えてないで白い千本鳥居を探すのに集中しないとだ。
「 何だろう?
音がする??
小石の音かな?
それに何かが流れてる音がする?? 」
オレは音が気になって走る。
カラフルな鳥居を幾つも通り過ぎると河原が見えた。
何で河原が??
「 うわっ──、何だよ、この河原……。
石が積んである。
それも沢山だ。
誰か居るのかな? 」
積み上げられている石を壊さない様に慎重に歩いていると、黒服を着ている人が大きな石の上に腰掛けていた。
人だ!
シュンシュンとオレ以外にも人が居たんだ!
オレは黒服を着ている人の元へ向かって歩いた。
「 ──こんにちは!
河原で何をしてるんですか? 」
「 うん?
………………あぁ、人型の異形か。
待ち合わせをしてるんだ 」
「 待ち合わせ? 」
「 此処は賽の河原だ。
此方は三途の川な。
お前さんは何しに来たんだ。
迷子か? 」
「 迷子ではないかな。
白い千本鳥居を探してるんだ。
白い千本鳥居を通らないと元の世界へ帰れないから…… 」
「 はっはは!
やっぱ迷子じゃないか。
此処には白い千本鳥居は無いぞ 」
「 えっ、無いの?
何で?!
無いと困るんだけど…… 」
「 白い千本鳥居なら、向こうにある血染め橋を渡って向こう岸に行かないとな 」
「 血染め橋?? 」
「 あぁ。
橋を渡るには通行料が要るぞ。
舟に乗って向こう岸へ渡る手もあるが、舟代が要る 」
「 通行料と舟代…… 」
「 金は天下の回り者──。
地獄の沙汰も金次第──。
昔から言われているだろう 」
「 ………………マジかよ…。
シュンシュンに伝えないとだ…。
それより、賽の河原って言えば、親より先に死んだ子供が泣きながら石を積み上げてる所なんじゃ……。
積み上げられた石を崩して壊す鬼も居ないし、肝心の子供達も居ないけど…… 」
「 うん?
今は昼休み中だから居ないぞ 」
「 昼休み?? 」
「 何だ、何も知らないのか?
賽の河原で石積みはするが四六時中する訳じゃないぞ。
衣食住が保証されているし、3食お駄賃付きだ 」
「 3食お駄賃??
3食……お駄賃!?
お金が貰えるって事?! 」
「 子供達は両親より先に亡くなった罪を償う為に河原で石を積み上げる。
向こう岸へ渡る為には通行料や舟代が必要だからな。
鬼から貰うお駄賃を貯めてるんだ 」
「 ………………じゃあ、お駄賃を貯めれた子供は三途の川を渡れるんだ?
ずっと河原で石を積み上げてる訳じゃないんだ? 」
「 両親より早死にする子供は年々増えてるからな。
方針は時代に合わせて変わるものだ 」
「 そ、そうなんだ…。
因みに三途の川を泳いで渡る──って事は出来ないのかな? 」
「 既に死んでいる訳だが、泳いで渡るのは自殺行為だな。
流れが早いからな、流されて溺れる可能性が高い。
1度流されると、数十年は救出されないで流され続ける羽目になるぞ 」
「 ………………泳ぐのは選択肢に入れない方が良さそうだな…。
橋を渡るか──、舟で渡るか──。
持ち帰ってシュンシュンに相談だな。
有り難う、オジさん! 」
「 お……おじさん……。
──お兄さんだ。
未だ、“ おじさん ” 扱いされる歳じゃないからな… 」
「 あ……うん。
白い千本鳥居の場所を教えてくれて有り難う、お兄さん! 」
「 向こう岸に渡ると環境が激変しているから注意しろよ。
魂喰鬼と呼ばれる魂魄を喰らう悪鬼が出没するから、重々注意しろよ 」
「 魂喰鬼── 」
魂魄を喰らう悪鬼──か。
シュンシュンもオレも魂魄じゃないから襲われる事は無いかもだな。
「 それに関してもシュンシュンと相談するよ。
有り難う! 」
オレは黒服の人に御礼を言って、その場を離れる事にした。
黒服の人に手を振りながら賽の河原を離れ様としたら、大勢の子供達が強面の鬼達に誘導されながら賽の河原に現れた。
「 ──配置に付け!
今から “ 石積みの刑 ” を再開する!
一定の高さまで石を積み上げれた者は真っ直ぐに手を挙げる様に! 」
「「「 は~~い! 」」」
「 多くの積み石を崩された者のお駄賃はUPするからな!
少しでも多くのお駄賃が欲しい奴は気合い入れて石積みしろよ! 」
「「「 は~~~~い!! 」」」
えぇ~~~~。
なんか、想像してたイメージと大分違う……。
お駄賃欲しさに子供達は河原の石を使いながら、一斉に石を積む作業を始めた。
子供達は真剣な顔で懸命に石を積んでいる。
石を上手く積めない子供に対しては、鬼が丁寧に石積みのコツを教えている。
やっぱりイメージと違う…………。
賽の河原に居る鬼って子供に親切なんだ……。
子供と鬼が並んで石を積んでる光景を見て微笑ましく見えるぅ~~~~。
シュンシュンを探す為に賽の河原から離れる。
オレはシュンシュンを探す為に首に掛けてるリングを出した。
リングはピクピクと動くと、宙に浮いてオレを引っ張ってくれる。
便利なリングだなぁ~~。
勝手にシュンシュンの元に案内してくれるリングか~~。
これ、売れたりしないかな?