♥ かげのう君 1
◎ 会話形式で進みます。
想像力をフル回転させて読んでください。
◎ 霄囹のイメージボイスは「 名探偵コナン 」の “ 江戸川コナン ” です。
マオのイメージボイスは「 少女革命ウテナ 」の “ 天上ウテナ ” です。
◎ どんな声なのか分からない読者さんは、アニメ動画を見て声を聞いてください。
「 ねぇねぇ──、“ かげのう君 ” って知ってる? 」
「 はぁ?
かげのう君??
誰だよ、そいつは? 」
「 学生の間で噂になってる七不思議なんだって! 」
「 七不思議ねぇ?
音楽室のベトさんだろ、理科室のジンモケだろ、運動場のニノキンだろ、トイレの花子だろ、増える階段だろ、美術室のモリさん、廊下ババアだろ──、7つ有るじゃん 」
「 廊下ババアって何よ?
初耳だけど? 」
「 知らねぇのかよ?
下校チャイムが鳴り終わった放課後に1人で廊下を歩いてたら、後ろから物凄い速さでババアが走って追い掛けて来るんだ。
ババアに追い付かれて肩を掴まれたら、廊下ジジイ若しくは廊下ババアになっちまう──って言う七不思議だよ 」
「 えぇ~~、マジで知らないんだけどぉ~。
私の知ってる7つ目は階段の巨大鏡だよ 」
「 あぁ~~、聞いた事ある!
鏡の前で呪文を唱えると鏡から人が出て来て引き込まれるんだろ?
結構、有名だよな 」
「 えっ、違うよ。
未来の自分の死ぬ姿が見えるんだよ。
嘘か本当か知らないけど 」
「 未来の自分の死ぬ姿…………見たくねぇ~~ 」
「 学校の七不思議の7つ目って、学校に依って違うみたいよ。
トイレの花子さんに弟が居たり、お姉さんが居たり──、両親が居たり、祖父母も居たり ──ってのも有るらしいし。
美術室にモナリザの肖像画が無い学校だと白い彫刻が動く──とかみたいだし? 」
「 学校の七不思議って、意外といい加減だよな。
で──、お前が言ってる “ かげろう君 ” ってのは、どっかの学校で噂になってる7つ目なのか? 」
「 “ かげのう君 ” だから!
高校生の間でね、下校途中や塾帰りなんかに出るみたいなの! 」
「 帰り道に出るのか?
何しに出て来るんだよ? 」
「 知らないけど?
自分しか歩いてないのに足音が聞こえるみたいなの!
振り向いても誰もなくて、歩くと足音が聞こえて来るの! 」
「 それってさ、何処にでもある怪談じゃないのか? 」
「 違うの!
振り向いても誰も居ないけど、足跡が残ってるの!
真っ赤な裸足の足跡が残ってるんだってぇ~~~~!! 」
「 裸足の足跡だぁ? 」
「 そうなの!
でね、朝に通ると真っ赤な足跡は何処にも無くて──って事らしいの。
怖くな~~い? 」
「 “ 怖い ” って言うより、完全にパチだろ? 」
「 あ~~信じてないんだぁ! 」
「 今日日、“ 信じろ ” って言う方が無理だろ? 」
「 でね、今夜さ──、噂の場所へ行ってみない? 」
「 はぁ?
行ける所なのかよ? 」
「 うん。
“ かげのう君が出る ” って噂の道は実際にあるみたいよ 」
「 怖いもの見たさかよ… 」
「 だってね、部活からの帰宅途中だった学生が、連続通り魔に滅多刺しされて死んだ事件があった場所だって言うじゃない?
“ かげのう君 ” は連続通り魔に刺されて亡くなった学生なんじゃないか──って噂もあるの! 」
「 ………………。
連続通り魔に刺されて亡くなった学生ねぇ?
もしかしたら、自分を刺し殺した連続通り魔を探してるのかもな? 」
「 ねぇ、行くでしょ? 」
「 行かねぇよ!
今夜は見たいドラマが最終回なんだ。
そんなに行きたきゃ、好きもん誘って行けよ 」
「 ひっどいんだぁ~~!
幼馴染みよりドラマが大事なの?
克暎の薄情者ぉ!! 」
「 何とでも言え!
じゃあな、侑未!
明日にでも、“ かげのう君 ” って奴に会えたか教えてくれよな! 」
「 ふ~~んだ!
良いんだもんねぇ~~!
凱恭を誘って行ってやるんだからぁ!! 」
「 ──ってな感じで、その日は侑未と別れたんです 」
「 前置きが長い!
──で、お前は僕に何してほしいんだよ? 」
「 一寸春麗さん!
女の子なんですから、もっとおしとやかに可愛く話せないスか?
喋り方が乱暴過ぎやしませんスか? 」
「 黙れ!
僕は忙しいんだ!
ロクに金の用意も出来ない素人の相手をする程暇じゃないんだよ! 」
「 シュンシュン、態度が悪いって。
此処、喫茶店だしさ──、他にも御客さん居るし……。
な? 」
「 たく……。
マオは御人好しだな!
マオは僕より暇人だもんなぁ 」
「 シュンシュン、喧嘩売る気ならオレは帰るぞ 」
「 マオは僕の助手だぞ。
勝手に帰るなんて許すわけないだろ!
パフェを奢ってやるから、此処に居ろ! 」
「 分かったよ。
えぇと──、克暎君だっけ?
警察に捜索願いを出してる幼馴染みの侑未さんを探してほしいんだよな? 」
「 そうです!
もう1ヵ月になるんです!
一緒に出掛けた凱恭には当時の事情を聞ける状態じゃないですし……。
一体何が起こったのか全く分からないんです…… 」
「 春麗さん、この通りッス!
後輩が困ってるんスよ、何とかしてやってください!! 」
「 行方不明や失踪なら警察に任せとけば良いだろ。
手の込んだ家出かも知れないしな 」
「 誘拐された──って線も有るんじゃないか?
昔から拉致事件とかも起きてるじゃん?
神隠しって事も── 」
「 馬鹿馬鹿しい!
誘拐や拉致なら尚更、警察だろが!
僕は天下の陰陽師だぞ!
慈善事業やボランティアで依頼を受けてる訳じゃないんだ! 」
「 警察に捜索願いを出してるのに1ヵ月も見付からないなんて怪しいじゃないか。
妖かしの仕業かも知れない可能性は0じゃないだろ? 」
「 マオさんは話が分かりますね!
頼もしいッスよ! 」
「 オレさ “ かげのう君 ” って奴の正体が気になるんだよな~~。
シュンシュン、現場に行ってみよう! 」
「 克暎だっけ?
お前、幾ら迄なら出せるんだ?
言っとくけど、最低でも50万は用意しとけよ。
僕は本物だから、依頼料は高いんだ 」
「 春麗さん、相変わらず金に煩いスね~~ 」
「 フン!
陰陽師は昔から金にがめつくて汚い職業なんだよ!
奪い取れる奴からは根刮ぎ奪い取るのが僕の流儀だ!
払えないなら他を当たれ。
似非霊媒師や似非霊能力者にでも頼れよ。
思う存分にカモられてやれば良いだろが 」
「 ──シュンシュン!
いい加減にしろよ!
困ってるんだぞ!
本物に頼って来てる相手に対して『 似非野郎共を頼れ 』って酷いぞ!
50万なんて意地悪を言うなよ。
他であこぎに稼いでるんだからさ、5万にまけてやれよ 」
「 “ あこぎ ” は余計だ! 」
「 まけてくれるのは有り難いんスけど、金は取るんスね 」
「 そりゃそうだろ。
陰陽師は商売だからな。
依頼料は取らないと、此方の生活も掛かってるからな~~ 」
「 克暎──、侑未に同行した凱恭は、どんな状態なんだ? 」
「 …………髪が抜けてて、唇が真っ青で、両目の下に隈が出来ていて……四六時中、口から涎を垂れ流している状態です……。
視点も定まってないみたいで……毎日、何かに怯えているのか神経質になっていて……ブツブツ何かを呟いているみたいです…… 」
「 話を聞く限り重症じゃないか?
“ 怯えてる ” って事は余程衝撃的な何かを見たって事かな?
見えない何かの気配を感じてる──とか? 」
「 仕方無いな、会ってやるか。
何かに憑かれてるなら祓ってやるよ。
正気に戻してやらないと話しを聞けそうにないからな 」
「 シュンシュン!
よし、じゃあ、行こう!
思い立ったら吉日だろ? 」
「 分かった分かった。
克暎──、凱恭が入院してる精神病院とやらに案内しろ 」
「 ──有り難う御座いますっ!!
恩に切ります、春麗さん,マオさん!
喜んで案内させて頂きます!! 」
「 良い心掛けだな!
あっ、お前は帰って良いぞ。
憑かれたりでもしたら面倒だからな 」
「 そんなぁ~~!
此処で “ さよなら ” はあんまりじゃないスかぁ~~! 」
「 何だと、僕に逆らうのか!
付いて来るなら、お前が80万を用意するんだぞ! 」
「 シュンシュン、30万増えてるけど!
えぇと、帝呀だっけ?
シュンシュンの言動は最悪だけど、君の身を案じてるから “ 帰れ ” って言ってるんだよ。
君は “ 紹介者 ” なんだ。
これ以上は首を突っ込まない方が良い。
依頼人をシュンシュンに紹介したんだから、君の役目は終わったんだよ。
此処の支払いを済ませたら、素直に自宅へGOするんだ 」
「 そう言う事だ!
見えない奴は足手まといになるからな。
自宅で大人しくエロゲでもしてハァハァしてろ!
あっはっはっはっはっ! 」
「 シュンシュン、それは言い過ぎだからな! 」
「 ──行くぞ!
克暎、案内しろ! 」
「 あっ、はい! 」
少女1人,少年1人,青年1人は喫茶店を出ると南へ向かって歩き出した。
◎ 訂正しました。
巻かせとけば ─→ 任せとけば
怪し ─→ 妖かし