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第2王子の奮闘 2

 フェリアスは目の前の、高級感溢れる扉をノックする。中から聞こえた返答に、気を引き締めつつ中へ入る。


 フェリアスは、国王であるダリウスの執務室を訪れていた。

 緊張からつばを飲み込むも、躊躇っていてもしょうがないと、ロゼティアの侍女を見習い、端的に切り出した。


 「ほう……。グラッセル公爵家とレオルドの婚約を破棄してほしい、その上お前とグラッセル公爵家と婚約する、と」


 ダリウスが静かに目を細める。自分の、自分たちの企みを見抜かれているように感じる。肌がピリピリとする。


 ロゼティアの家であるグラッセル公爵家の力は強い。それをレオルドの後ろ盾に使うつもりなのだろう。

 (父上は兄上に甘い。手のかかる子ほど可愛いというやつなのかもしれない。だが、それにロゼティアを巻き込むつもりも、みすみす取られるつもりもない)


 「はい、承認さえいただければ、後はこちらで……」

 「却下だ」


 ダリウスがフェリアスを遮って答える。


 「アレ(レオルド)には少々足りないところがある。だが、グラッセル公爵令嬢なら上手く補えるはずだ」

 「それが、兄上のためということですね」

 「ああ、破棄する理由はない」


 全く考える気がないという返答。

 (だが、ここで引くわけにはいかない)


 「ならばっ、ならば、兄上が婚約破棄を望まれた場合。ということならばどうでしょう?」


 部屋の中が沈黙につつまれる。


 「……いいだろう。だが、レオルドが望んだときだ、いいな?」

 「十分です。ありがとうございます」



 フェリアスは執務室から退出し、ゆっくりと息を吐く。最低限に役目を果たせそうなことに対し安堵する。

 (あの侍女の話では、次のパーティで、兄上が婚約破棄するはずだ。ならばこれは成功したと言っていいだろう。陛下もレオルドが平民の少女にうつつを抜かし、ロゼティアとの婚約を破棄するほどバカだとは、思っていないのだろうな)




 ついに、パーティが始まる。

 最初は順調に進んでいたが、途中から雲行きが悪くなってきた。会場が妙にざわざわとし、会場の一角に人だかりができる。

 人だかりの中心にいるのは、レオルドとララティナ、それにロゼティアだった。少し後ろにロゼティアの侍女も見える。

 ララティナがレオルドに甘えるように身体を近づけている。

 (ララティナ嬢は相変わらず胡散臭いな)

 フェリアスにとってララティナは随分と訝しい相手なのだが、周囲にはそれがわからないらしく、ララティナに同情するような視線を向けている。


 そのまま暫く茶番を見ていると、ついにレオルドが婚約破棄を宣言した。その後もペラペラと口をまわしロゼティアを侮辱するレオルドにふつふつと怒りをわかし、ロゼティアのもとに向かおうとしたときだった。


 ――ロゼティアが大輪が花開くように笑ったのだ。

いつもの冷たい碧い瞳はキラキラと輝き、血の気のなかった頬はほんのり朱く染まっている。


 見慣れないロゼティアの表情に驚き、うっかり見惚れてしまう。

 そのまま暫く呆け、我を取り戻したのはロゼティアが退場したあとだった。さっと周囲を見回すと、同じように呆けている者が多く少しだけ笑ってしまう。レオルドも驚き言葉を失っているようだ。

 フェリアスは、レオルドがロゼティアとの婚約を破棄してくれた事に感謝する。

 (今更ロゼティアの魅力に気づいても遅い)


 フェリアスは急いでロゼティアを追い、会場をあとにする。

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