悪魔と堕天使あと天使
バカだなぁ、私の本拠地で勝てるわけないじゃないか。
そもそも本拠地に簡単に入れるってことは、そいつがバカか誘い込まれてるってことだよ?
君たちの武器はその賢さだろう?
いくつかのモニターとキーボードにマウス、そしてそれが乗っている机と椅子、それしかない奇妙な空間で、スーツを着た男をボロボロの少女が睨んでいる。
「やあやあ勇者さま、ここまでご足労ありがとう」
「!」
「紅茶かな?珈琲かな?ミルクも緑茶も、烏龍茶もある、オレンジジュースもあるよ、どれがいい?」
「ふざけるな!私は貴様を倒しに来たんだ!」
「なぜ?」
「っ!貴様が「堕天させたこと?毒を撒いたこと?発情させたこと?殺戮したこと?光を消したこと?それとも...“彼”を変生させたこと?一体アレはどれに怒ってるのかな?案外ボクが昇天しないのが不満なのかな?」
「その全てにだ!」
「ははははは!これは傑作だ!どうせ堕天した彼らはボクが誘導しなくても堕ちただろうし、毒の被害者はみんな回復してる、発情も別に生殖器なんて無いんだし、死んだやつだってどうせ生き返ってるだろ、光を消したことだって、彼らにとっては有るも無いもおんなじ、彼の変生だってボクは既定の未来を早送りしただけ、大したことはやってないさ!それでも文句があるなら...本人が来るべきだろう?彼らは礼儀も知らないのかい?それに、そもそも彼らの過失なんだから本人が来るのが当たり前だろ、ほら、どうせ分体がいるんだろ?出てこいよ」
「っ」
「『落ち着け、私が話す』」
「ミカエル...」
「あいも変わらず耳障りな声だ、精神に干渉しながらじゃないと喋れないのかい?」
「『違う、この少女が貴様に気圧されていたかから気合を入れただけにすぎん』」
「これは驚いた、君らのいう“気合を入れる”ってのは精神に干渉して強制的にハイにさせることなのかな?」
「『少し、高揚感を増幅させているだけだ、害は無い。そんなことより、貴様にはこの契約書に署名してもらう。』」
「君はもしかしてバカなのかな?なんで最初に足を踏まれた僕が損害賠償の契約をしなきゃならないのさ、...そうだな、自分に向けられる契約書を持ってきたんなら契約してやらんでも無い」
「『何を言っている、そもそも我々は貴様らを容認してやっているのだ』」
「バカが、欠陥人形に僕らを弾圧する力なんて無いだろ。僕らの総力を尽くせば君らの準備を待たずにハルマゲドンだって開始できる、始まりの喇叭を握っているのは君たちじゃ無い、僕たちだ」
「つけあがるなよ悪魔が、我が剣の一振りで灰になりたいか」
「同じことを何度も言わせるなよ、お前はバカか?此処がどこだと思ってる、地獄の最下層のさらに下、魔界の奥の奥、僕が改造した神威領域だぞ、戦闘も逃走もまともにできるわけが無いだろ。そもそも君たちが入るのに使ったソロモンの鍵はレプリカだ、本物は此処にある」
「...!いや...まさか...」
「ルシフェルを堕とす時に宝物庫は一通り漁ったさ、中身は全部劣化品だよ」
「『正義の天秤』!」
「はぁ......、君らのせいでこんなんだけど一応僕は元最高神だよ?そんな玩具が僕に効く訳が無いだろう」
「バカなバカなバカな!輝け!『光の剣』!」
「『雷よ、轟け』」
ミカエルの振り上げた輝く剣が、空から落ちてきた雷に砕かれる。
「其方の借り物と違い本物の神の権能だ、堪能せよ」
「バカな!」
「『雷雲』」
雷鳴を纏った黒雲が虚空から現れミカエルの体を包み込む。
「ミカエル!」
「なんだ、まだいたのか。いや、まあ逃げる方法なぞないわけだが」
「っ!」
「...勇者の名は伊達ではないようだな、力の差を見て剣を向けるが、撤退の方法を模索する、無謀ではない、勇気ある者の行動だ」
「っあなたは一体...!」
「ふむ、神の権能なんぞそうそう使う者では無いな、あちらに寄ってしまう」
「なんで...どうして?そちら側にいるの?」
「私の好みだ、まあそれだけでは無いが...勇気ある者よ、永き眠りにつくと良い、『堕夢』」
「話が終わりましたか?」
「おい痛いな、刺すなよ。そこは心臓だぞ、死んじまう」
「チッ、このナイフ私の聖気死ぬほど込めたんですけど、なんで死なないのよ」
「元神の俺に効くかよ、それよりお前この服洗う気あんのか?自作だぞこれ」
「あるわけ無いじゃない、何言ってんのよ」
「おい、刺すなっつってんだろが、穴が空いて寒いだろうが」
「はー!馬鹿らしい、やめやめ!」
「今投げたそのナイフ天界に捨てろよ、俺の血がついてるからな」
「こっちに捨てたらどうなんの?」
「オークションが始まる」
「は?」
「天界に捨てたら仲間が増える、魅入られたバカを見る方が楽しいからな、こっちじゃなくてアッチで捨てろよ」
「あー...はいはい、ちゃんと天界に捨てときまーす」
「それよりサタンはどうだった?」
「今日も元気一杯、暴れてるわよ?あんた知らないの?」
「いや、それは知っている。お前から見た感想を聞きたい」
「うーん、あれが私の大元って聞いてもよくわかんないわね!」
「わかった、とりあえずそれを天界に捨ててこい、ルシファー」
「はいはい、ディアボロスサマの仰せのままに」
彼の本名...というかわかりやすい名前はベルゼブブです。
設定は沢山ある。
作者の技量と文字数はない。