手品師のハットトリック
キテます。キテます。ガンガンにキテます。
お客さんの拍手が鳴りやみません。
スタンディングオベーションをしながら、涙を流しているお客さんも見受けられますね。
それもこれも、SHOWの真っ最中に日本がサッカーワールドカップへの出場を決めたから。ではありません。
ただまあ、スクリーンに速報が映し出されたときは思わずガッツポーズをしました。
裏方さんのミスといえばミスですが、咎めることはしません。
喜びを共有できましたからね。
唯一寂しいのは、レコーダーに録画予約された試合を観る楽しみが半減したぐらいです。
でもまだ、だれが得点したかはわかりません。
それを楽しむのも一興です。得点経過やそこに到るまでの過程がドラマチックだったりしますからね。
日本対サウジアラビアは3―0で勝利。得点はすべてエースの猿橋選手。
追加の速報が映し出されました。
笑顔で手を振る裏方さんと目が合いました。いい笑顔をしています。
中指を立てたり、親指を下に向けたりは出来ないので、首を掻っ切るポーズをしてみせます。
いやいや、首切りの手品などしませんよ。
失礼。誤解されるような仕草をしたこちらに非があります。
ですから、急遽アシスタントを送り込むのはやめてください。
じゃあ、どうするんだ?
どうもしません。先ほどの手品で打ち止めです。
そんなわけはない?
これはあれですね。完全に誤解されていますね。
わかりました。全面的に謝りましょう。
ステージの途中でハッとトリックが思い浮かび、即興で披露したのが間違いでした。
でも仕方ないじゃないですか。世紀のマジックSHOWが出来ると思ったのです。
現にほら。いまだに拍手は鳴りやみませんよ。
ええ。わかっています。そのせいで急遽使用することになったスクリーン調整が大変だったんですよね。
感謝しています。
次からは速めに言ってくれ?
了解しました。
けど、わかりませんよ。
ハットトリックは予告できませんからね。
猿橋選手と同じです。