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必要なもの

九賀と出会った翌日。俺達はさっそく都市伝説狩りの準備を進めることにした。2日連続の新宿だ。


雑踏を掻き分けながら、更に込み入った場所を目指す。目的地は古い雑居ビルにある。


「ねえ、ハジメ君。何処へ向かっているの?」


「ウチの父親の知り合いが新宿で店をやっているんだ。そこへ行く」


「あー、探偵の秘密の道具とかが手に入るの?それとも武器か何か?」


「はぁ」


「ちょっと! なんで溜息なのよ」


「漫画の読み過ぎだな。神憑きと戦うのに必要なのはそんなものではない」


「じゃー、どんなものが必要なの?」


九賀は少し不満そうだ。


「決まっているだろ。カッコいい覆面だ」


「漫画の読み過ぎはどっちよ!」


「素顔を晒して戦うわけにはいかないだろ?」


「まぁ、そうかも知れないけど……」


「だから、オリジナルの覆面が必要なんだ」


「……分かったわ」


九賀の諦めるような呟きを無視して歩き続けると、目的地が見えてきた。



#



「おっ、ハジメ君じゃないか。久しぶり」


三木さんは今日も素晴らしくかっこいい覆面をつけている。


「カッコイイですね」


思わず口にしてしまう。


「お眼鏡に適ったようで嬉しいよ」


「……ハジメ君がタメ口じゃない……」


一方の九賀は俺の様子に驚いている。


「俺は三木さんのことを尊敬しているからな。タメ口なんてとんでもない」


「大袈裟だなぁ」


三木さんはポリポリと覆面を掻いた。


「大袈裟じゃないです。九賀、こちらが三木さんだ」


「九賀といいます。よろしくお願いします」


「三木です。ちょっと散らかってるけど、奥に席があるからどうぞ」


「「お邪魔します」」


「あっ、2人ともコーヒーで大丈夫?」


「「大丈夫です」」


「ははは。仲良しだなぁ」


店舗の奥には応接セットが置かれていて、そこで三木さんがいれてくれたコーヒーを飲むのが常だ。


少しすると店の中に香ばしい匂いが広がって、ローテーブルにコーヒーが置かれた。


「さて、わざわざ連れてきたってことは九賀さんの覆面の依頼かな?」


「その通りです」


「ということは、九賀さんも神憑き?」


九賀が俺の顔を見る。


「三木さんは信用できる。何を話しても大丈夫だ」


「……失礼しました」


九賀が軽く頭を下げると三木さんは慌てた。本当に腰の低い人だ。


「いやいや。こちらこそ初対面なのに不躾な質問をしてしまって申し訳ない。ちょっと私は感覚がずれていてね」


「大丈夫です。ご察しの通り、私は神憑きです。今も肩に蝶が止まってます」


「へー、九賀さんの神の残滓は蝶なんだね。うん、イメージが湧いてきたよ」


三木さんはじっと九賀を見つめている。きっと脳内でデザインを描いているのだ。


「そういえば九賀はフリーのデザイナーだったな」


「そうよ。WEBや平面の仕事が多いから、覆面みたいな立体は興味深いわ」


「おお、デザイナーなんだね。ちょっと作品を見られるのが恥ずかしくなってきたよ」


「三木さんは恥ずかしがりやですもんね」


そう。三木さんは恥ずかしがりやなのだ。かつて、"羞恥の神様"の加護を授かっていた程の。


「恥ずかしがりやだから、覆面を?」


「まぁ、そんなところだね。私は過去に色々あり過ぎて……」


「す、すいません! 変なこと聞いちゃって」


九賀が必死に頭を下げる。俺の怒気を感じたのだろう。


「あはは。平気だよ。過去は過去さ。で、未来の話をしよう。覆面の完成まで一週間ぐらい貰ってもいいかな?ハジメ君の知り合いだから、なるべく急ぐよ」


「「ありがとうございます」」


「じゃ、出来たら一報入れるから、ここに連絡先をよろしく」


差し出されたメモ帳に九賀が連絡先を記入し、その日はお開きとなった。

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