新宿
「本当に"読書家"は神憑きなんだな?」
自室に引き篭もり、都市伝説についてネットで情報収集するのは俺達の日課だ。その中で、"怪しい"と感じたものがあると現場に赴き、調査することになっている。
"間違いない。私の勘がこいつは神憑きだと言っている!"
PCモニターに向かって胸を張る"性悪の"に冷たい視線を送る。何せ、こいつの勘は過去何回も外れているのだ。全く信用がない。
「で、"読書家"はどんな奴だと思う?」
"ふむ。星は10代~20代、もしくは30代~40代、または50代以上の人物。日本あるいは外国の男性もしくは女性だ!"
「つまり、何もわからないと」
"失礼な! 人間の可能性が高いことを示唆しているじゃないか!"
「んなことは端から分かってんだよ! 金目のモノを狙ってる時点で人間しか有り得ないだろ!」
"共通の認識を敢えて明示することで、物事を整理してみました"
「……ふん。それっぽいことを言って乗り切ろうとしたな」
"そ、そんなことあるか! とにかく新宿に行くぞ! 最近、神威を含んだもんを食べてないから、力が出ないのだ"
「まあいい。結局行って確かめるしかないからな」
"そういうことだ! いけ、ハジメ号!"
こいつ、いつかシメる。
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「チッ」
身体をぶつけられ、思わず舌打ちが出た。振り返るが、一体誰とぶつかったのかも分からない。
夕方の新宿駅はとにかく人が多くて視界が狭くなる。自分の低身長が恨めしい。
"短気は損気だぞ! ハジメ"
こいつ、おっさんだな。
"何か言ったか?"
「イッテナイ」
"棒!"
あまり人前で"性悪の"と話していると、独り言の多い危ない奴になってしまう。
"で、新宿の百貨店と言えばどこだ?"
「伊勢胆だろ」
"よし、そこに行こう! 神憑きに見つからないように俺は隠れる"
無言で頷くと、"性悪の"は見えなくなる。俺は周囲に気を配りながら、伊勢胆を目指した。