見つかったパイセン
仕事の関係で更新頻度落ちてます。かわりと言ってはなんですが短編公開してます。
『月見公園を奪還せよ!〜追い出されたホームレス達が公園を取り戻すために立ち上がった〜』
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「ハジメ君、なんか元気ないね。悩み事?」
作戦会議を兼ねて九賀とファミレスで夕食をとっている時だ。正面からマジマジと顔を見られた後、そんなことを言われた。
「次のターゲットが決まらないのは悩みと言えば悩みだな」
「うーん、そーいう悩みではなくて、もっと重たいのがあるんじゃない?」
「……ないな」
「これは重症ね。お姉さんに話してみなさい」
そう言いながら九賀は立ち上がり、しれっと横に座ってきた。この女は隙あらば身体を触ろうとする。
「触るな」
「嫌よ。ハジメ君のツルツルの頬っぺたが好きなの」
「悩み相談はどこへいった?」
「触りながら聞いた方が捗るの」
「何が?」
「ショタが」
「開き直るな!」
腕を突っ張って抵抗するが、リーチが違うせいで逃げ切れない。
「ふふふ。観念しなさい。憑いてない時は私の方が強いわ」
ちっ。ここは"性悪の"を呼んで──。
「えっ、根岸パイセン?」
「おっ、ハジメ君じゃないか」
「あら、今晩は」
やばい。今、この状況を最も見られたくない奴等に出会してしまった。
「……人違いです」
「いやいや、パイセンっしょ! がっつり目が合ってますよ」
「……ねえ、知り合い?」
九賀が耳打ちする。もう逃げられないな。
「なんだ、鼓太郎とその両親じゃないか。誰かと思ったぞ」
不幸なことに和久津親子に見つかってしまった。九賀といるところを。
「ハジメ君もお父さんと同じでファミレスが好きなんだねー」
「うちの父親も?」
「そうだよ。若い頃はよくファミレスに呼び出されたものさ」
鼓太郎の父親がしみじみと語る。
「立ち話もなんですし、座って下さい。6人席を2人で使うの気が引けてたんですよ」
九賀が余計なことを言ったせいで、奇妙な会食が始まった。
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「いやー、今でも鮮明に覚えているよ。ハジメ君のお父さんが私達の披露宴で神様を召喚した時のことを」
2杯目のビールを飲んだあたりから鼓太郎の父親は饒舌だ。
「母さんも覚えてるだろ?」
「……思い出したくもないわ」
一方の鼓太郎母は表情が暗い。余程辛い記憶なのだろう。
「一体何が起こったんです?」
九賀は完全に野次馬だ。
「全員、私になった」
「えっ? 何かの比喩ですか?」
「いや、老若男女、全員が和久津大輔になったんだ。ウチの母さんとハジメ君のお父さんを除いて」
なんだそれは。
「おい、"性悪の"」
"なんだ"
フッと肩に黒いネズミが現れた。
「なんでそんなことをしたんだ」
"五条へのプレゼントだ! 五条は和久津のことを愛していると言っていたからな。だから和久津を増やしてやった!"
「神様と話しているのかい?」
「ああ。五条? へのプレゼントだったと言っているぞ」
「とんだプレゼントだったよ。ハジメ君のお父さんは"和久津だらけの披露宴だ! "と言って大笑いしてたけどね」
「ウチの父親の言いそうなことだ」
「あっ、でも恨んでるわけではないよ? 母さんと知り合ったのはハジメ君のお父さんのお陰だし」
「そうなのか?」
「そうだよ。あの人は性格悪くてやりたい放題するけど、不思議な魅力があるんだよ。慕っている人もたくさんいる」
「分からないな」
「その内分かるようになるよ」
そう言って鼓太郎の父親は3杯目のビールを注文するのだった。




