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消音

「あっ、これ! 永井荷風のお墓だよ」


九賀が"読書家"らしく小説家の墓に反応するがそれどころではない。男は霊園の奥へ奥へと走っていく。


"ハジメ、急げ! あの男速いぞ"


「分かってる! 九賀、もたもたするな!」


「夏目漱石のお墓みっけ!」


「散歩してるんじゃないんだぞ!」


このままでは逃げられる。騒ぎを大きくしたくはないが仕方ない。


【土生成】【土操作】【念動】【加速】【加重】


「倒れろ!!」


ドンッ! と音がした後、男の行先にあった樹が倒れて男が立ち止まった。樹の幹は粉々になっている。


「よう変態。その樹と同じようになりたくなければ大人しくその肩のトカゲを寄越せ」


「変態はお前達だろ! 2人して気持ちの悪い覆面を被りやがって」


三木さんの覆面が気持ち悪いだと!?


「小便の音を聞いて喜んでいる奴に言われる筋合いはない! もう少しマシなスキルの使い方はないのか!?」


眼鏡をかけ、線の細い男は強そうには見えない。今のところ確認出来ているスキルも音に関するものだけだ。


「フフフ。女子供には俺様の凄さは分かるまい」


男は中指で眼鏡を上げた。


「なんだ? 小便の音で健康状態がわかるのか?」


「わっ、斬新!」


九賀がのっかる。


「そんなことじゃない! 俺は音を、言葉を操れるんだ!」


男の肩のトカゲが微かに発光する。


「ふん。おま  ん    がで る」


んん?


「ハジメ君。おまんがでるってなに?」


「いや、違うんだ! おれは   こ  い    」


「恋? 鯉? どうしちゃったのハジメ君?」


「フハハハハッ! これが俺の能力! 相手の言う事を先読みし、小刻みに【消音】を使って発言内容を捻じ曲げることが出来るんだ」


なんて奴だ。完全に才能を無駄遣いをしてやがる。


「そ  こ     が   い い んだ?」


今度は霊園に俺の声が響き渡る。


「しかも【振動】のスキルで声や音を大きくすることも出来る! どうだ! 恐れ入ったか!」


こいつ、本物の馬鹿だ。


「それに、【振動】はこんな風にも使える」


男が墓石に触れ──。


「九賀!」


九賀の手を引くと、先程まで立っていた所に墓石が倒れてきた。


「ちょっと! 危ないでしょ!」


「ふん! 俺の邪魔をする奴がどうなろうと知ったこっちゃない」


"こいつ、普通じゃないな"


確かに普通ではない。だが──。


【縮地】


タンッ! と石畳を踏むともう小便野郎のすぐ横だ。俺の姿が見えなくなって惚けている。


「もらった!」


無防備な男の膝裏を蹴り上げると、呆気なく尻餅をついた。


「"性悪の"!」


"よしきた!"


黒いネズミが飛びかかり、神の残滓たるトカゲを丸呑みにする。


「貴様、こんなことをして許される……と思って……いる……のか」


「別に許されるようなんて思っちゃいない。眠っとけ」


神の残滓を喰われて力の抜けた男は、眠るように気を失った。

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