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乙女ゲームの、その後は

作者: 三香

 「愛は誓いません」

 大聖堂に、私の声が響く。

 あったり前じゃない。バリバリの政略結婚に、愛なんて誓えないわよ。しかも、クズ男に。



 私は、転生者。で、王女様。

 隣国が、乙女ゲームの舞台と気付いたのは、10歳の時。

 興味津々でみていたら、ストーリー通りに始まって、ストーリー通りに終わった。1番人気の王子様ルートで。

 それで、ストーリー通りに婚約者の公爵令嬢が国外追放されたので、ありがたくもらった。

 教養があって、政務ができるほど有能で、とびきりの美女。野垂れ死にさせるなんて、もったいない。

 その後、王子はヒロインと結婚して、先日、子供が産まれたのだけれども、いやぁ、ヒロイン、やっちゃったね?まったく王子に似ていなくて、髪も瞳も顔立ちも、側近の宰相子息にクリソツ。しかも、お花畑ヒロインは、王子妃の公務なんてできない無能者。

 王家は、王子の新しい妃を探したけど、公爵令嬢の運命を知っているから、上位貴族は、派閥をこえて一致団結して拒否したらしい。だって、下手にかかわると、お家とりつぶしなんて可能性のある、クズ王子だし。下位貴族は、能力的にムリだし。

 だからって、御鉢がこちらに回ってくるとは。

 相手側は、スキャンダルまみれの王子だから、国王である腹黒なお父様は、その弱味をつつきにつついて、凄く有利な条件で色々分捕ったそうだ。

 結婚するのが、私でなければ、面白い話だったんだけど。

 いやだなー。

 クズ王子の後始末だなんて。

 王女だから、政略結婚は仕方ないけれども、前世ニートだった私は、今世もニートをしていたいのだ。せっかく、お金がたっぷりある家に生まれたのだから。

 うーん。

 うーん。

 よし、プランAをお父様に相談してみよう。腹黒なお父様なら、きっとGoサインをくれるはず。

 腹黒だけど、愛情たっぷりパパだし。


 そして、

 やってきました結婚式。

 天使がラッパをふく絵がいっぱいの大聖堂。

 列席者は、各国の王族、国内の重臣、貴族。

 結婚誓約書にサインして、大司教に結婚の誓いを、と言われたけれども。

 「政略結婚なのですのよ。3日前にあったばかりですのに、愛なんてものがあるとでも?しかも、王子には、申し分のない婚約者を捨てて、めとった愛するお方が」

 そこで私は、鼻でわらった。

 「ええ、お子様もお生まれだそうで。おめでとうございます。髪も瞳も顔立ちも、あるお方にそっくりだそうで」

 くすくす笑う私に、王子は憤怒の形相になる。王国の唯一の王子として、チヤホヤされて育ったから、面と向かってバカにされるなんて、今までなかったんだろうね。

 カッとなって、王子は私を思いっきり殴りつけたのだ。

 ああ、バカだ。

 そうそうたる列席者の前で、他国の王女を殴るなんて。

 その後は、大騒動。

 自分は悪くないって王子は主張したけど、何年間教育されたの?政略結婚なの、国と国の契約なのよ。しかも、そこに国としてのメンツもかかってくるのよ。

 もう、お父様はカンカンに激怒して、私を国に連れ帰ったわ。そして、さらなるナンヤコンヤを分捕ったのだった。



 あれから5年。

 プランAは、結婚式で王子を煽って怒らせて、楽しい別居生活という計画だったけれども。

 私は今、お父様の庇護のもと、離宮をひとつもらってニート生活をしている。一人の子供を育てながら。

 いや~、お父様。もう、真っ黒クロクロ。

 一週間前、どこからか、あの王子と同じ髪と瞳と顔立ちをした、4歳か5歳ぐらいの男の子をつれてきたのだ。

 「今日から、おまえの子だ」

 私、知っているー。お父様が断言したら、逆らってはいけないことを。だから、はい、と答えましたとも。

 戦争は、お金がかかるし国土も荒廃するから、謀略で隣国をのっとる気ですね、お父様。

 私は、今でも書類上はあの王子の正妃。

 隣国は、正妃の産んだ王子が、第1王位継承者との国法がある。

 王子は否定するだろうが、結婚式の前の2日間ほどはいっしょにいたので(私、処女ですけど)ナニをして産まれたと言い張るのだろう。何しろ、血はつながっていないが、髪も瞳も顔立ちも王子そっくりな、物的証拠な男の子がいる。

 お父様のことだから、すでに隣国の貴族もひきいれているのだろう。根回しはバッチリと思う。

 隣国の貴族も国民も、頭が誰であろうが、自分の生活が保障されていれば、ねぇ?忠誠を誓うような王家でも、なかったし。

 

 ああ、人気のあった乙女ゲームだったのに。

 ストーリー終了後は、ヒロインに托卵されて、お父様に托卵されて。

 甘いのは、ストーリーだけだったわね。

 現実って、こんなものよ。

 王侯貴族なんて、薄汚い権利闘争の渦が、ぐるぐるしているのだから。

 私は、離宮でのんびりニートできれば、それでいいし。

 それに、台風の目になったあの男の子を、守ってあげなきゃだし、ね。

 ああ、転生は甘くない。



 と、思っていましたが。

 私は、二度目の大聖堂にたっている。

 手塩に掛けて育てたあの男の子に、泣きつかれて。

 まさか、「結婚してくれないと、死ぬ」って、泣く成人男性が実在するとは。しかも、剣で自分の首を切りかけているし。

 バカな子ほど可愛い、という言葉がしみじみと身にしみたわ。

 さて。

 では、誓いの言葉を。

神の前で愛は誓えない、と似ていますが、あちらは、愛していたから誓えない、というヒロイン。こちらは、政略結婚なのに何いっているの?というヒロイン。

ちょっとややこしくなって、申し訳ありませんが、愛が誓えない、色々なパターンと思ってお許し下さい。

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― 新着の感想 ―
[一言] まあ、色々、突っ込み事項は ありますが(笑)、ショタ×オネ お好みです(⋈◍>◡<◍)。✧♡
[一言] こいつぁ、ひでぇw ところで郭公が托卵する巣はホオジロなどだそうです。 王子のあだ名になりそうですね。ホオジロ。
[一言] お父様に托卵されて、というパワーワード(ノ∀`)
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