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376 『ワケありドッペルゲンガー⑩』

 ウロコ嬢カサリナさんに【変化】したルルさんのお下品なダンスに後ろ髪を引かれながら、おれは【暗闇】の中を音も立てずに走った。


 【狐火】の追尾を逃れるため、スキル【認識阻害】を発動。ルルさんの隣には、【空間記憶再生】で「至近距離から見上げるおれ」の静止映像を残した。


 ダンスに目を奪われて隙だらけのオーガ男バルダーとテッドの野郎の背後に回り込んだおれは、地面に膝をつき『不浄の剣』を水平に抜き放つ。



 ――草原流、青田刈あおたがり……!!

 『不浄の剣』の効果【マジックコーティング】! 込めた魔力が赤い光の刃となって鋭く長く伸びる!


 シュパーーーン!!

 おれは、バルダーとテッドの膝から下をまとめて切断した。

 ……お楽しみのところ、ホントすまんね。

 


「ぬぐおぉお!!? な、なんじゃこりゃあ!!? ……あがっ!!? ……うがっ!!?」

「ぎゃ!? ぎゃす!!? ……い、いでぇよ~アニキ~!!」


 油断ならないので、二人の両腕もさくさくっと貫いておく。

 さてお次は、クモ男のアンバーさんか? ……いや、なんとなく羽根頭のちびっ子の脅威度きょういどが高いと、おれのスキル【危機感知】が言ってる気がする。



「バルダーさん、テッド!? ……一体ナニが!? 仕方ない、スズカ教官、【暗闇】をカイジョしてください! はやく!」


 ちびっ子の指示で、どこかに姿を隠しているスズカ教官のスキル【暗闇】が解除された。

 周囲に大空洞の青白い光が戻る。



 だが遅い! おれの射程はおよそ12m、がんばればもうちょいいけ――ん!?

 何かに足をひっかけて、おれはびたーんと無様に転倒した。

 ……クモの糸! アンバーさんめ、やりやがったな!?


 ――!! 倒れ伏したおれに向かって、攻撃の気配を察知した。

 足に絡まったクモの糸を切り、慌ててその場を離れる。


 

 ジュ……ジャババババ~~~!!

 さっきまでおれの居た場所に、ウロコ嬢カサリナさんが吐き出した黄色い液体が降り注ぎ、シューシューと煙を上げている。

 げっ、なんか溶けてる……あっぶな。


 でもあの攻撃、見覚えがあるぞ……もしかして、カサリナさんの魔石は――。

 

 それにしても、あの【溶解液】は危ない。

 射程はそんなに長くなさそうだけど、広範囲ランダムに降り注ぐあれは、おれの苦手なやつだ。


 ――うん、止めとこう。カサリナさんとちびっ子は後回しだ。……できれば無視!

 スキル【飛翔】! おれは光の羽根を広げて飛び立つ。

 狙いはクモ男アンバーさん、アンタだ!



 おれのターゲットになったと知って、アンバーさんは懸命に距離をとろうとする。

 クモの糸を発射し、大空洞を飛ぶ。その姿はまんま、アメコミのヒーローみたいで格好いいじゃねーか。しかも後に残ったクモの糸がすごい邪魔!

 絡まると厄介なので、いちいち切断していくしかない。



 だが、そこまでだ! おれの剣の射程は、およそ12m!

 『不浄の剣』に500MPを突っ込む。――先鋭せんえい! 伸びろ【マジックコーティング】!!





 捉えた!! ……と思った時だった。

 おれとアンバーさんの間に、全裸のルルさんが割り込んでくる。

 

 ――あっぶね!? おれは、慌てて『不浄の剣』の魔力を散らし、赤い光の刃を消した。

 ちょっと、ルルさん何やってんの!? 500MP無駄にしちゃったじゃん!?



「ごめんなさいヤマダさん、なんだか声が聞こえるんです~。馴染みのお客さんの声なんですけど、私~そのお客さんとはすっごく相性がよくって、そのお客さんの声にはいつもぜんぜん逆らえないんです~!」


 ――声? アンバーさんが、馴染みのお客さんだったってこと?

 まさか二人がそんな関係だったなんて、こんな酷いシナリオあっていいのか!?



「言っときますけど、俺じゃねぇですよ? その色っぽいねぇさんとは初対面で……そこのところ誤解しねぇでくださいよ? しかし、ヤマギワさんでしたっけ? まさかこんな所で顔を合わせることになるとは思いませんでしたねぇ」


「……アンバーさん、一旦落ち着いて話し合いましょう。なんなら謝りますんで、ウルラリィさんを家に帰してもらえませんか? 確認してもらえば判ると思うんですが、パン屋の借金は昨日のうちにベネットさんへ全額返済が済んでるんですよ」



「はぁ借金ですって? ヤマギワさん、何をすっとぼけたことを言ってるんで? 今更話し合いもねぇでしょう? マギー、バルダー、それにテッド、兄弟達をあんな目にあわせといて、そりゃ虫がよすぎるってもんですぜー!」


 アンバーさんの手からクモの糸が発射し、おれの『不浄の剣』に巻き付く。

 くっそ、切り損なった……空中でバランスを崩したおれはやむを得ず着地。

 


 ――ぬ!? うぐっ!? 着地したおれを狙った、全裸のルルさんの連続キックを『竜鱗の具足』の効果【ドラゴンスキン】で受け流す。……あああ、いろいろ丸見えで気が散るよルルさん。  



 ルルさんの背後にネズミが一匹飛び出した。 

 ぐにゃりと巨大化したネズミは、黒いレオタード姿の女性になった。

 

 もしかして、アンタがスズカ教官か!? ……レオタードぴちぴちでエッチですね!

 スキル【危機感知】反応!! 真空の刃【飛刃ひじん】が来る。

 戦っているルルさんもろとも、おれを切断する気だ。


 カワイイ顔して、なんてイヤな女だスズカ教官!

 とっさにおれは全裸のルルさんを無理矢理抱き寄せ、自分と場所を入れ替えた。

 背中に【ドラゴンスキン】を発生させて、【飛刃】の直撃に備える。

 ――受けきれるか!?



「んぎゃっ!!」


 なぜか、おれ達の代わりに【飛刃】を受けたのは全裸のネコ耳美少年マギー君だった。

 さっきまでそこでのびてたはずなのに、いったい彼に何があった?





「はいはーい私が、私が蹴っ飛ばしたんです! えへへー! てゆーかヤマダさん、その裸の女の子は誰ですか!? 私というものがありながら、私というものがありながらー!!」


「マデリンちゃん! ええっと、この人はその……なんていうか――!?」


 正面玄関前で戦ってたはずのマデリンちゃんに追いつかれてしまったようだ。

 陽動を頼んで先行したのに未だウルラリィさんにたどり着けていないおれとしては、面目次第めんぼくしだいもない。……だけど、正直助かる!

 




「うぎやぁぁぁっ~~~!!」

「カ、カサリナねぇさん!!?」


 おっと、あっちからカサリナさんとちびっ子の悲鳴。

 犬耳のイケメン、ジェイDさんの登場だ!

 両手に曲刀をひっさげ、女子相手でも容赦ない連続攻撃。ああ、せっかくのボインが……!



 とにかく、マデリンちゃんとジェイDさん、二人が来てくれたってことは、上はいい感じで片付いたってことかな? 



「シラカミ諜報ちょうほう部長さんの無事を知って、皆さんまるっとすっかり改心してくれました! もちろん、ドノバン教官も含めてです!」


「そっか、まるっと、部長さんに会えて――それはよかった」





 同士討ちでネコ耳美少年マギー君の前尻尾を切り落としてしまいしばらく呆然としていたスズカ教官だったが、その時はっと何かに気付いて口ひらいた。


 

「あんた……、もじゃリン……!?」


「え? 見習い時代の私の愛称を知っている貴方は、もしかして、もしかして……スズカ先輩?」



「ちっ……、こんな所までもじゃもじゃ頭を突っ込んで来やがって、聖女になったからっていい気になってんじゃないよっ!!?」


「スズカ先輩は相変わらずおっかないですね? いったい、何歳いくつまでスケバンなんか続けるつもりですか?」


 ……スケバン!?

 マデリンちゃんとスズカ教官はどうやら因縁がありそうだ。任せてしまってもいいのかな?





「うぎやぁぁぁっ~~~!!」


「ふん、【超回復】か……さてはアンタ……?」


 切っても切っても回復するカサリナさんに、ジェイDさんも察したらしい。

 彼女の魔石は、おそらく「ヒドラ」だ。

 結構でかい魔石だったはずだけど、あんなボインなら埋め込むことも容易たやすかろう。



「はぁはぁ……アナタが何回斬ったって、無意味ですから……ゲボシャーーー!!」


 カサリナさんが吐き出した【溶解液】に、さすがのジェイDさんも飛び退いて距離をとる。



「ならば、その魔石ごと削り取るまで。俺の剣は、【範囲攻撃】で【二回攻撃】だ……!」


「うぎゃぁぁぁぁ~~~~~!!!!」


 うへぇ、【溶解液】の射程外から、ジェイDさんの斬撃がカサリナさんを切り刻む。

 カサリナさん自身は【超回復】でどんどん回復するけど、着ている服まではそうはいかない。

 むほっ……。





 ……他所よそ他所よそ

 おれはまず、こっちの全裸をなんとかしなければ。

 抱きすくめたルルさんから、にょろにょろと触手が飛び出しおれの鎧の隙間を狙ってくる。……「生理的にダメ」っていうのはガチかもな、トホホ……。


 そのままの体勢で、おれは足で地面に三角を描いた。

 ――スキル【超次元三角】、異次元に開く三角の窓! 

 開いた次元の穴に、無理矢理ルルさんを押し込む。



「えっ、え~? なにこれ~!? いやぁん、こんなの知らない! 知らない~!」


「すいませんルルさん、後で迎えに行きますんで、しばらく辛抱しんぼう願います!」





 振り返りざま、『不浄の剣』を斬り上げるおれ。

 ――じゅぱん!! 一瞬で12m伸長した赤い光の刃が、アンバーさんの射出したクモの糸ごと彼の片腕を切り飛ばした。 



「ぐあっ……!!」

 

 続けて、返す刃で足を狙う。


 ――ギィィィン!! 弾かれた!?

 とんでもないスピードで誰かが走り抜けて行った。

 強烈な風圧が、おれを吹き飛ばす。


 白いマントを身に付けた髪の長い女だった。

 ……犯人だ! 今のは確かに、ベネットさん殺害現場で見た犯人の姿だった。

※ドルDさんの名前をジェイDさんに変えました。理由はドリィさんとなんとなく名前がかぶるからです。

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