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353 天空の花嫁問題

 ……どうしてこんなことに?

 

 ネムジア神殿ニジの街支部を訪れたおれ達。

 礼拝堂で女神ネムジア様のおっぱいを拝んでから、居住区へと回り込んだのだが――、どういうわけか出会った瞬間、お互いを警戒し睨み合うジュリアちゃんとシーラさま。


 本当は、感動の親子対面のはずなんだけど……、幼児退行し若返ってしまった母親――シーラさま推定四歳に親の自覚があるはずもなく……、赤ん坊の頃にタイターさんに引き取られた子ども――ジュリアちゃん四歳が母親の顔を知るはずもなく……、そんなこと二人に説明できるわけもなく……。



「あなただれ!?」

 

 ――と、始めからケンカ腰のジュリアちゃん。

 隣で、リーフ君がオロオロしている。



「……わたし、シーラ」


 ――と、おれの尻の陰からシーラさま。

 ちょっと押され気味だ。……がんばって!



「なんで、ヤマダさーんといっしょにきたの!?」


「……シーラは、ヤマダのシンのヨメだから!」


 一瞬、シーラさまが何を言っているのか理解できず、うろたえるジュリアちゃん。

 ……まあ、無理もないね。



「ふ、ふーん。でも、ヤマダさーんはジュリアの”こぶん”なんだからね!」


「――!?」


 そんな……!? という顔でおれを見るシーラさま。


 ……えっと、子分? なんの話だ? ……いや、思い出した。

 王都の「聖女会議」に出発する前、タナカあての伝言を頼む時に「おやび~ん、頼みますよ~、おやび~ん」と三下ムーブをかましたのを思い出した。


 ……そういえば、まんざらでもないって顔してたな、ジュリアちゃん。



「ねえさんには、僕がいるじゃないですか」


 ――と、ロッドさん。確かに、弟分……てか、弟だ。





 一時はどうなるかと思ったが、日本のお土産みやげをひろげると、ジュリアちゃんとシーラさまはいつの間にか一緒に遊びだしていた。



「おほほ! おくさまったら、”ずんどう”でうらやましいわ~!」


「うふふ! あなたこそ、”たんそく”がかわいらしいですこと~!」


「おほほ……!」「うふふ……!」


 黒と白、色違いのお人形で遊ぶジュリアちゃんとシーラさま。……とうとい?

 一見仲良さそうな二人の様子に、やれやれ……と、あからさまにホッとしているリーフ君。配役は、”旦那”で”間男”というなんだか複雑なキャラクターらしい。


 そんな若いのに苦労人のリーフ君には、日本の漫画セットをプレゼント。ちょっと古いが、不朽の名作ラブコメ『気まぐれキックオフなやつら』全33巻だ!

 日本語が読めるのかって? もちろん、【言語変換】効果付きのメガネもセットだ。

 ベリアス様が使ってたやつをスキル【世界創造ワールドクリエイト】限定解除で『複製』した物。……ナカジマのだと、レンズに度が入ってるからね。





 帰り際、壊したままになっていた女神ネムジア像をスキル【世界創造ワールドクリエイト】限定解除で『修復』しておくことにした。

 ……いや、そのまま『修復』しても中身のラダさまがないから元どおりにはならないか。

 そうすると、【空間記憶再生】で再生した「在りし日の女神ネムジア像」をモデルに、なんか別の素材で『複製』だな。



「ナカジマ氏、なんか白っぽい素材ないかな? 女神像に相応しい、大理石とか、そういう感じの」


「スケルトンの骨なら大量にあるんだが、いいか?」


 ……バレたら怒られそうだが、まあ言わなきゃ判らんだろ?




 ***




「うるせーな、正月なんだからやってるわけねーだろ!!」


 ドワーフ親父の武器屋を尋ねたら、いきなり怒られた。

 どうやらかなり酔っ払っているらしい。


 シーラさま達をネムジア神殿に残してきてよかった。



「――ん、なんだおっさんかよ。あ、はっぴーにゅーいやーだぜ、がはは……!!」


 ちなみに、親父の言う”おっさん”とはおれのことだ。あと、このドワーフ親父が本物のドワーフかどうかは定かではない。



「そんなことより、頼んでおいた『飛竜素材の防具』はできているだろうか?」


「んー? おっさんから聞いてねーのかい? できてるよー、去年からなー、ぐはは……!!」


 ナカジマの問いかけに答えるドワーフ親父。

 ……? どういう意味だ? 親父の言う”おっさん”は、おれのことだよね?


 ドワーフ親父に招かれて奥の工房に入ると、鎧掛けに掛けられた、群青色に鈍く光るスケイルアーマーが目を引いた。

 ――おお、なんかすげー!



「まあ見てくれよ、俺と師匠の最高傑作だぜ! 胴体、腕、足、頭部まで飛竜のウロコを贅沢に使った全身鎧さ。もちろん裏地やマントも、飛竜の皮を使ってる。かなり丈夫だぜ? だが、それだけじゃねーのさ! 装着者の魔力を消費することで簡易『ドラゴンフィールド』とも言うべき効果を再現した。一つは重力操作による【軽量化】と、もう一つは瞬間的な【物理魔法防御力上昇】の効果だぜ! 防具に効果の付与なんて俺は初めてのことで……まあいいや、とにかく着てみろよ!!」


「ああ、それがいいな。”装着者の魔力を消費”とか言われてもな、言葉だけでは正直意味が判らん」


「かっけ~! マント、いいね~!」


 がちゃがちゃと、あーだこーだ言いながら新品の鎧を身に着けはじめるナカジマとタナカ。


 …………?

 ……ん? あれ?



「……親父、おれのは?」


「は?」



「え?」


「え? ……いや、まてまて。おっさん、なんで着てねーんだよ?」 







「――す、すまねぇ! 俺としたことが、証文も確認しねぇで……」


「……まあ、親父さんのせいじゃないですよ」


 親父の話によると、年末――四日前におれのニセモノが店に表れたらしい。

 そして鎧が完成していると知ると、自分の分だけ先に受け取りたいと言ったらしい。



「顔も声も、おっさんそのものだったからよ、俺はてっきりまた装備でも盗まれたのかと思ってよ……」


 ――と、すっかり酔いも醒めた様子のドワーフ親父。

 憎むべきはおれのニセモノ、とても親父を責める気にはなれない。


 それにしても、おれはニセモノが出るほどの有名人だっただろうか?

 そもそも、この店に防具を注文していることを知っている者なんて……誰か居たっけ?



 まあ、見れば判るか?

 ――スキル【空間記憶再生】発動! 年末、ここに来た人物を検索、再生!





 店にフードを目深に被った、背の小さい男が現れた。



「うおぉ、なんじゃこりゃ!?」


「おれのスキルです。四日前店に来たのはこいつで間違いないですかね?」


 突然現れた立体映像に驚くドワーフ親父に尋ねた。

 うなずく親父。


 おれは、フードの中を覗きこむ。

 ……この貧相な男は、どう見てもおれだねぇ……。


 確か【変化】とか、そんな感じのスキルがあったはずだ。

 ……ただ、そこまでするか? まあ、いい装備ではあるけど、だとしたらなんでおれの分だけ?



 嬉々として装備を身に着ける、ニセモノのおれ。

 兜を被り、バイザーを下げると目元が隠れて、フードで顔を隠す必要がなくなる。


 そのまま、親父に礼など言って店を出て行くニセモノのおれ。


 おれ達はその後を付けるが、細い路地に入り込むと【空間記憶再生】が途切れる。


 どうやら、闇に紛れてしまったようだ。……おいおい、もしかして【空間記憶再生】で追跡されるのを見越していたのか? だとしたら……。



「もしかすると、ヤマダさん本人かもしれんぞ? 昔やったRPGでそんなイベントがあった気がする」


 ――え、【時間遡行じかんそこう】? おれが? いやだなぁ、なんかややこしそうで。 



「あー知ってるー! ぼくは断然フローラ派だけど、ナカジマ氏はどうせビアンカ派だよねー年上好きだし」


「私はデボラ派だ、悪いか?」


 バカめ! 過去改変するRPGなんて他にもいっぱいあるだろ? ……でもまあ、ぱっとすぐ思い出せないのが辛いところではある。

 ……ちなみにおれは、ベラ派だけどね。

※ベラ ドラクエᏙの幼年期に短い間だけ仲間になる妖精の女の子。結婚イベントはない。

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