347 『異世界チートタナカ~わたしを日本につれてって①~』
どうもー。タナカです。
最近どっか出かけました? ぼくは今、なにを隠そう日本です!
ヤマダさんが手に入れたチートなスキル【超次元三角】で次元を超えて、みんなで異世界から日本へ一時帰郷というわけです。
ナカジマ氏が滞在場所に選んだのは、ぼくの実家! 伊香保温泉、旅館『玉月』でした。
年末のいいシーズンだというのにワリと簡単に部屋が取れてしまうウチの旅館、心配になってしまうんだけどー?
受付で、お母ちゃんとおよそ8年ぶりに再会。
バレやしないかってヒヤヒヤするけど、今のぼくはスキル【擬態】で完璧に変態済みだ。
――褐色の肌! 銀色の髪! 真っ赤な瞳!
――夜の貴公子、ムラサメ・リュウセイ!
…………。
……セ、セーフ! 一瞬気付かれたかと思ったけど、大丈夫だったみたいだ。
だよね? だってぼく、異世界で結構痩せたし。
1日目――!
移動はナカジマ氏の【空間転移】でらくちん! でも、出発前の準備とかでなんとなくバタバタしてたから観光は明日からかなー? とか思ってたんだけど、ベリアス様が「エロマンガはどこだ!?」とうるさいので、みんなで全国的に有名な古本屋さん『BOOK・END』に行きましたー!
「NTRはドコダ!?」
――と、おぼえたての日本語を連呼する見た目小学生のベリアス様に、店員さんも困り顔。当然だけど、その手の本は18歳未満お断りのブツだからねー。
「あ、読むのはおれですからダイジョウブ……です」
――と、ヤマダさんが苦しいフォロー。赤っ恥だね。
でも、端から見ている分にはおもしろいね。
リーダーとシーラ様が選んだのは、少し古い少年漫画のセット。文字は読めないだろうから、絵柄で選んだんだと思うけど、いい趣味してるね。
ヤマダさんとしては、シーラさまに少女漫画をおすすめしたかったみたいだけど、あの絵柄は異世界向きじゃなかったみたいだ。
オルフェさんは、料理のレシピ本を買った。
スイーツの写真が気になったらしい。近いうちに二人で作ってみようかな。
ロッドさんは、すました顔でヌード写真集を数冊買っていた。
――えっ!? あの女優さん脱いでたんだ! 後で、見せてもらお。
ナタリアちゃんに、CDやゲームソフトのことを聞かれたけど、どれもコンセントのない異世界じゃ使えないんだよねー。
――それならば、私達が買いますね! と、エルフメイドのルカさんとハナさんが申し出てきた。
中古のゲーム機とおすすめのソフトを数本、それと各ジャンルのCD、アニメのDVDを購入。
どうやら、彼女達とベリアス様は日本に移住するつもりらしい……本気かな?
ところで、ぼくとナカジマ氏はとある小説のコーナーで鉢合わせした。
異世界転移したり異世界転生する例のジャンルのやつだ。
……なんだか少し気まずいよねー。
2日目――!
朝食の後、みんなで東京へ観光とショッピングに向かう。
でもナカジマ氏は、ぼく達をスキル【空間転移】で秋葉原まで送った後、やることがあるといって一人、再び【空間転移】でどこかに消えた。
夕べも、『BOOK・END』から帰った後、夕食の席にも現れずに深夜まで帰ってこなかったし。
なんでも、ナカジマ氏が教員をやっていた当時の同僚や生徒の現在の居場所をスキル【詳細地図】と【空間転移】を駆使して探しているそうな、「ざまぁ」するためにね。
そんな根暗なことしているナカジマ氏はほっといて、ぼくらは勝手に楽しむことにした。
ベリアス様は、相変わらず「NTRはドコダ!?」の一点張り。
もう一周まわってすがすがしいね。
――おや? 街角でティッシュ配りをするメイドさんが尻込みしている?
どうやら、エルフメイドのルカさんハナさんに気後れしているみたいだ。まあ、無理もないねー。
リーダーとシーラさまは、昨夜見たアニメに感動したようで、アニメアニメと大興奮だ。
ヤマダさん迫真の通訳で、それなりに内容も伝わったらしい。
オルフェさんは、中古レコードを売る店の前で立ち止まった。聞けば、あっちの世界にもレコードを聴く魔道具が存在するらしい。
ぼくが昔好きだったアイドルソングとかアニメソングをおすすめしておいたよ。
ロッドさんは、美少女フィギュアに興味芯々だ。
「素晴らっ! 素晴らだね、この造形っ! あちらの世界でオークションにかければ、とんでもない利益を生み出すに違いないね!」
――と、大量の美少女フィギュアを買いあさる。
……? てゆーか、ロッドさん巨乳好き?
「あっちで、おっぱいの大きい偶像は女神ネムジア像という認識なんですよ! 他の部分は適当で、ネコ耳でも角があっても、翼も尻尾も、なんなら全裸でも女神ネムジア像ならそういう解釈も有りなんですよねぇ~。まー、確かに僕、大きいおっぱいは好きだけども」
――ん? ロッドさんって、モガリア教の人なのに女神ネムジア像なの? と思ったのだけど、「いやぁ、さすがに自分とこの女神様は売り物にできないよー」とのこと。
なるほどね、そういうもんかなー。
ナタリアちゃんが怪しい男にスカウトされた!
ダメダメ! たぶんそれ、いかがわしいヤツ! ガラス張りの車のヤツ……あーでもでも、ナタリアちゃんは娼婦だし、本人さえイヤじゃなければ……と思ったけど、ヤマダさんが止めに入っていた。あーあ、ちょっと残念。
その代わりに、ベリアス様の命令で、エルフメイドのルカさんとハナさんが付いて行ったよ……。すごいね、キチクだね! でも発売されたら、いつか絶対買う!
ところで、後で判ったことだけど、その怪しいスカウト、普通にちゃんとしたモデル事務所のスカウトだったようで、ルカさんハナさんは、モデルとして華やかな舞台に上がることになる。
そして、そんな期待外れは我慢ならないベリアス様の指令で、二人は偉い人の接待業務を体当たりでこなしたものだから、意図せず、人間離れした優れた容姿と盤石なコネを併せ持つことになり――、日本だけに留まらず世界で活躍するトップモデルとして成り上がっていくのだが、この時のぼくらにはまだ知る由もないのだった……!




