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340 ナカジマ「ざまぁ」する

 ――ここは、日本!

 伊香保温泉、旅館『玉月』に滞在すること4日間、異世界からやって来たおれ達一行は各々旅の目的を果たして、明日には帰還する予定である。


 おれ、タナカ、ナカジマの3人は、名物の「黄金の湯」に浸かりながら、今回の旅を振り返る。



「それで、ナカジマ氏の『ざまぁ』は上手くいったのー?」


「まあ、それなりにな。……ヤマダさんには、ゲスな行為に付き合わせて悪かったと思っている」


 ……それな。

 そもそも今回の旅は、それが発端だったのだから避けては通れない。




 ***




「おい、中島!! こんなことをして、ただで済むと思ってるのか!!?」

「犯罪だぞ!!? シャレになってねーよ!!」

「中島先生、わたしは何もしてないじゃない!!? なんでわたしまで!!?」

「ここから出しなさい! お金ですか!? 生活が苦しいんですか!?」


「中島先生、説明してください! 先ずは話し合いましょう!?」

「中島、いい加減にしないか!! 何が目的だ!!?」

「ごめんなさい!! 許して!! ここから出して!!」

「こんな幼稚な遊びに付き合っているヒマはない!! 自首しなさい、中島先生!!」


 ここは、おれとナカジマが異世界転移実験で最初に訪れた異国の漁村。

 あの日全滅させた武装勢力アジトの地下牢獄に、今は日本人の男女がぎゅうぎゅうに押し込められていた。

 それは、ナカジマがこの3日間、自身のスキルを駆使して集めた元生徒と元同僚、総勢23名。



 ナカジマは牢獄の鉄格子の前に立つと、彼等の言葉を一切無視して話し出す。

 途中、怒号で声がかき消されても、特に気にすること無く、一定の調子でただ淡々と伝えるべきことだけを告げる。



「さて皆さん、皆さんにはこれから異世界に行っていただきます。そこには、『スキル』があり『レベル』があり、『魔物』のいる世界です。お金も無く言葉も通じないその世界で、皆さんは暮らしていくことになるのです――」


「ぶはっ!! 異世界って中島、おまえマジで言ってんの……!!」

「おいおい、アニメの見過ぎじゃね!? 『魔物』って」


「外国か!? 外国に連れて行こうとしているのか!!?」

「中島先生、バカですか貴方は!? そんなの大使館に駆け込めば済む話です!」


「……いやでも俺達、ここまでなんかワープみたいに一瞬で連れてこられたような?」

「おい、まさか『魔法』とか『スキル』とか使ったとでも言うのかよ……?」


「バカな! トリックに決まってる!」

「そ、そうか、トリックか! トリックに違いないな!」



「――理由は、もちろん復讐です。私は学校を去りましたが、私以外は生徒も同僚も何事も無かったかのように、私の人生を台無しにしておいて何事も無かったかのように日常に戻っていった皆さんへのささやかな復讐です。”今更”とか”そのぐらいの事で”とか軽々しく言わないでいただきたい。私は、あの日から今でもまだ苦しみ続けているのです。私をおとしいれた生徒達、私を見捨て事件を無かったことにした同僚達も私はまだ当分許せそうにありません」


「ちょっと待て! 復讐だったら、なんで小野のヤツがいないんだよ!?」

「そ、そうだよ! 冬香が首謀者みたいなもんじゃない!? なんでいなの!?」


「さては君、小野くんとやはり何かあったんじゃないのか!?」

「中島先生、しらばっくれるのは止めなさい!? その生徒と、君はやはりできていたのではないのかね!?」



「……小野冬香ですか。もちろん一番最初に探しましたが……彼女の現在は、夫のDVと借金で酷いものでした。風貌ふうぼうも様変わりしていて、見る影もありませんでしたよ。異世界に連れて行くことが彼女にとって救いになってしまうようでは意味がありませんので、こっちの地獄に放置することとしました。ふふっ……ふふふっ……」


「…………!!」

「…………!!」





「……おい、ナカジマ、こいつら全員、まじであの森に? おれ達はスキルがあったからなんとかなったけど……」


「確かにフェアじゃないな。なので、『スキルの欠片』を一人一個づつ用意した。飲み込むことで、一つだけスキルを取得できる。だいたいは魔物由来のスキルだが、三つだけ『魔法スキルの欠片』も混ぜておいた。どれも買えば5万~20万はするものだ、仲良く分けてくれ。――あ、転移する場所は私の方で適当に5~6人ずつばらまく。ヤマダさんは、窓を開けてくれればいい」



「……じゃあ開けるよー、スキル【超次元三角】! あらよっ! ……あらよっと!」


「それじゃあ皆さん復讐の時間です、準備はいいですか? もしも私に言いたいことがあるなら、あちらの世界で私を探してください。生きていれば、どこかで会えるかもしれません」




 ***




「――ってな感じで、一仕事ひとしごと終えてきた」


「うげぇ、やっぱりぼく『ざまぁ』は、あんまり乗らないな~」


「ヤマダさんには世話になった。この恩はいつか何かの折に」



「……それで、反応はあったのか?」


「さてな……まだ、様子見だ」


 ナカジマが「ざまぁ」にこだわったのは、自身のED(性的不能)治療のためだ。

 そもそもの発端がその事件で精神をやられたことが原因だから、その件を片づけることが治療への第一歩だと本人は固く信じていた。





「うおぉぉ!! あっちぃぃ!!」


「わっはっはっ! 勝負は僕の勝ちのようだね、ベリアス君!」


 サウナから飛び出てきたショタベリアス様とロッドさんが、水シャワーで身体を冷やす。

 この人達はこの人達で、日本を満喫している。

 こちらに来た翌日には秋葉原を案内した。

 

 ロッドさんは、異世界調美少女フィギュアがお気に入りで、予算の10万円を早々に使い切りナカジマに追加予算を請求していた。


 ショタになっても相変わらずのベリアス様は、ジャンルのかたよった大量のエロ漫画、さらにはエロゲにまで手を出して、やはり追加予算を申請済みだ。

 そして彼とメイドのルカさんとハナさんは、当たり前のように、日本に永住することを既に宣言していた。

 ベリアス様は、四月から日本の小学校に通うらしい。



「ヤマダ、俺はさとった。真の『NTR』とは、”幼なじみ寝取られ”だ!! 友達以上恋人未満のイチャイチャ期間が長ければ長いほど、その時、俺の脳は大きく深くえぐられるってわけよ!! 俺は日本の小学校で、まだ見ぬ幼なじみと壮大な前フリを始めるぜ!!」


 ――とのこと。……アホか!!

 そのために、日本語の勉強を始めたとか。



 メイドのルカさんとハナさんにいたっては、ナタリアちゃん指導の下、女性だけが使えるという謎スキルを取得して、いつの間にかスキル【同時通訳】をロッドさんからコピーしてしまったらしい。 


  

「はっはっはっ、まいっちゃうなー!」


 ――と、ロッドさん。

 なにが「まいっちゃう」のかよく解らないけど、はて?





 そして、こちらに残ると言い出した人がもう一人……。     

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