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335 次元の外のそのまた外に開く窓

誤字報告、ありがとうございます。

あと、前の話で、ゴトウがどうなったのかイマイチ曖昧だったのでちょっと直しました。

「日本へ一時帰郷~? イイねー! そんなことできるんだ~! ぼくも、実家の様子とかちょっと気になってたんだよねー」


「ええっ? ナカジマ氏、『ざまぁ』するの? へー」


「『ざまぁ』系もよく読んだよぼく、スカッとするしね? まー、自分でやるのはコリゴリだけどさー」


「――え? ぼくの記憶? サキュバスにエッチな感じで【エナジードレイン】されちゃったんでしょ? だったら悔いはないよ」


 ――と、タナカ。   

 実際はタナカの記憶を【エナジードレイン】したのは『本の勇者』アマミヤなわけだが、本人が勝手に納得しているみたいだし、わざわざ訂正してやるのも気の毒かな?





「あ、そうだ! オルフェさんも誘っていいかなー?」


 ――と、続けてタナカ。

 ナカジマに視線をやると、【空間転移】で自分の他に10人までなら連れて運べるとのこと。

 どうやら、ヤツなりに負い目を感じているようだ。

 そういうことなら……。







「異世界? 異世界って『アメリカ』とか『ニッポン』のある異世界かい?」


「行けるの!? ヤマダのスキルで!? ヤッタ!! ボクもイクイク!! ぜったい、イクイク!!」


「は~ん♡ ありがとうヤマダ~! キミはどこまでボクをメロメロにさせるのさ!? もう好きにしてよ! ヤマダが望むなら、ボクをエビ反り緊縛して一晩中眺めていてもらっても構わない! むっちゅ~~~♡」


 ――と、ナタリアちゃん。

 かねてから「アメリカに行きたい」と、異世界に行くためのスキルを探して娼館でバイトまでしていたナタリアちゃんに声をかけてみたところ……、デレデレにデレた。





「……は! そうだ結婚しよう!! 決めた! 結婚なんてもうたくさんって思ってたけど、人生の最後にもう一回だけ結婚しよう! ヤマダ、ボクもお嫁さんにしてよ! ね、いいでしょ!? ね!?」


 ――と、続けてナタリアちゃん。

 たまたま手に入れたスキル頼みで結婚とかエビ反り緊縛とかまでしてもらうのはさすがに気が引けるが、一回ヤらせてもらうぐらいならバチは当たらんのじゃないだろうか? あわよくば、日本でお城的な建物をご案内したりして……うっしっし……。







「異世界ニッポン!? 行く! なぜならわたくしはリーダーだから!」


「いくー! ニッポンいくー!! なぜならシーラはシンのぼうけんしゃだから!」


 ――と、ラダさまとシーラさま。

 留守番をよろしくと言いたかったんだが、ウキウキのラダさまに今更そんなこと言えない。そして、仲良しのラダさまが行くと言えば、シーラさまも行きたがるのは無理もないこと。

 ちなみにシーラさまの言う「シンの~」というのは、最近のお気に入りフレーズらしい。





「シーラ様が行くなら、私も行かねばなるまい」


「いえいえ、姉さんの面倒は僕が見ますので、メイプル様とアサギさまには留守中道場のことをお願いします」


 ――と、プリメイラさんとロッドさん。

 なんだかんだもめていたようだが、結果的にスキル【同時通訳】を持っているロッドさんが同行することになったようだ。





「なにぃ!? ニッポンだとぉ!? まさか俺を置いていく気じゃあるまいな!?」


「異世界ニッポンと言えば『NTR』の聖地! よかったですね、ベリアス様!?」


「そ、そればかりじゃありませんよ? 私ども『メイド』や『エルフ』にとっても楽園のような場所ともいわれていますよ? 是非とも巡礼せねば……!」


 ――と、ショタベリアス様とエルフメイドのルカさんとハナさん。

 聖地? 楽園? ……アキバとかナカノとか案内する感じ? めんどくさ!



 そんなことで、日本行きツアー参加者はあっという間に定員となった。







「はいはーい皆さん、【疫病耐性】のスキルは取りましたねー?」


「「「「「はーい!」」」」」


「私達もこちらに来て8年、今の日本でどんな危ない病気が流行っているとも判らんからな」



「そうしたら、用意した地球の服に着替えてくださーい! あ、ルカさんハナさんは大丈夫です、そのままで。……ラダさま、鎧はダメだって言ってるじゃないですか」


「おこずかいは、とりあえず一人10万円ずつ渡しておく。無駄遣いしないように! ……おっと、シーラ様の分はロッドさん、お願いします」


「むー!」


 ――と、不満そうなシーラさまに、おれはスマホを手渡してご機嫌をとる。

 当然圏外なのだが、カメラとしては使える。パシャリ!

 後で全員に配る予定だけどね。



「おい、ニッポンではこんな紙がお金なのか?」


「それ一枚で、だいたい1万Gです。宿泊や食事はナカジマがもちますので」  


 配られた万札をヒラヒラさせているショタベリアス様に応じるおれ。



「10万Gか……NTRマンガは何冊買える?」


「……知りませんけど、文字、読めるんですか?」



「こんなこともあろうかと、【言語変換】効果付きメガネを俺は常備している!」


「ふむ。確かに、スキルや装備の効果は向こうでも有効だ。ただし、MPはなかなか回復しないので注意するように。魔法の威力もイマイチだ。――それから、鎧はもちろんだが武器をこれ見よがしにすると無用なトラブルに巻き込まれかねないので……」


 ――と、ナカジマの注意が続くが……ラダさまはいい加減鎧を脱げよ? ……セ、セクハラじゃねーつーの!





 ナカジマの割とくどくて長い注意が終わった頃合いを見計らって、おれはスキル【超次元三角】を使用し次元の向こう側へと三角の窓を開く。

 そして更にもう一度【超次元三角】を開くことで、その向こう側の次元――おれ達の生まれ育った地球への窓が開く!



 ――実を言うと、おれとナカジマは、昨夜の内にスキル【超次元三角】を使用した異世界転移実験を終えていた。




 ***




 ――スキル【超次元三角】!!


 ――もういっちょ、スキル【超次元三角】!!


 おれとナカジマの前には次元の外へ開いた三角の窓が開いた。

 そして、更にその向こうに開いた三角の窓には星空が見えた。……あの三つ並んだ星は、もしかしてオリオン座じゃね?



「……繋がったんじゃないか?」


「……判らんが、とりあえず跳んでみる。【超次元三角】は、念のため閉じずに保持してくれ」


 そう言うと、ナカジマは【空間転移】で跳んだ。

 次の瞬間、向こう側の三角窓から覗いた星空の中に姿を現したナカジマは、どうやっているのかその場にふわりと静止した。



「それ、スキルか?」


「ああ、うむ。スキルは問題なく使えそうだ。【アイテムボックス】を上向きに開いて、私はその上に立っている。どうやらここは海上のようだ」


 ナカジマの【アイテムボックス】には生物は入れない。そのことを逆手にとって足場にしているらしい。

 

 おれもスキル【飛翔】で羽根を広げて飛び立つと、三角の窓から星降る海上へと抜ける。



「ここって、地球だと思うか?」


「月も星もどこか懐かしくも感じるが、まだ確証はない。ひとまず、一番近い陸地まで跳んでみよう。掴まってくれ」


 おれがナカジマの肩を掴むと、そのまま数回【空間転移】を繰り返した。

 見知らぬ場所への【空間転移】は、目視できる場所かスキル【周辺地図】に表示される半径10kmが限界らしい。





 やがておれ達は、南国風の海岸に降り立つ。

 桟橋さんばしに停泊するたくさんの漁船、その中にちらほらと場違いに豪華なクルーザーが場所を占領している。……なんだかイヤな感じだ。



「スンスン……何か臭くないか?」


「……どうやら、あまり治安の良くない場所のようだなここは、見ろ」


 砂浜には、大量の死体が無造作に積まれていた。

 よく見ると、その中には女性や子供も含まれている。



 ――【危機感知】反応!?

 おれは飛来する銃弾の雨を予見し、【超次元三角】で作りだした三角窓を盾代わりに設置した。そしてその陰にナカジマを引っ張り込んで身を潜める。



 ――タタタン! タタタン!

 ――タタタン! タタタン!

 ――タタタン! タタタン!

 ひげ面の男達が構えたアサルトライフルから放たれる銃弾が、次元の向こう側へと吸い込まれて消えていく。



 ――ズズーーーン!!!!

 縦横30m×60m巨大な二枚貝――神獣クラムボンの死骸がナカジマの【アイテムボックス】からひげ面の男達の頭上へと落下した。同時に銃声が消える。



「……ここが地球なのは間違いなさそうだ」


「どうやらこの漁村はまるごと武装勢力に占領されているらしい。せっかくだ、ゴミ掃除といこう」


 そう言ってナカジマは、クラムボンの死骸と浜辺に積み上がった死体の山をスキル【アイテムボックス】で開いた亜空間に収納する。



「おい、ゴミって……」


「勘違いしないでくれ、私がゴミと呼ぶのは他人の人生や尊厳を踏みにじる身勝手な者達のことだ」


 ナカジマがレベル24で取得したスキルは【周辺地図】だった。なんと、レベル8で取得した【周辺地図】との被りである。

 しかし時に、スキルは二重に取得することで進化する! ナカジマのスキル【周辺地図】は進化し、スキル【詳細地図しょうさいちず】となった!


 スキル【詳細地図】に表示された村の全体図。その地図の中でうごめく人型を、ナカジマが次々と指定していく。

 その度に、遠くから悲鳴や銃声が聞こえては消える。


 ……おそらくは、指定した場所に【アイテムボックス】を開いて何かを落下させているのだろう。



「……で、何を?」


「死体一体およそ50kgとしても、2~30mの高さから落とせば十分凶器となるだろう。室内に居る場合は、5~6人セットで積み上げるまでののこと」



「悪者と村人の区別はついてるんだろうな?」


「そこが【周辺地図】との違いだ。【詳細地図】では人物の見た目、名前、性別、所属、HPといった詳細が明らかだ。検索もできる。ただ……、この村に悪人以外で生きているのは、地下で捕虜になっている女性が数人だな」



「そうか……」


「かなり弱っているが命に別状はないだろう」

   


「そうか……」


「……判ってる、殺人は確実に悪だろうさ。だがこの世には、死んだ方がいい人間がのうのうと息をしている……と、私は思っている」



「んなこと聞いてないし。……てか、こいつらお宝とか溜め込んでるんじゃないか? もらえるもんは貰ってこうぜ」


「……うむ。そうだな……金と服と、あとスマホも貰っていこう」




 ***




 異次元に開く三角の窓。

 向こう側に覗く今日の景色は、雪山のようだ。


 やっぱり地球は回ってるってことか、毎回繋がる場所は違うのだろう。



「はいはーい! それじゃあ皆さん、手を繋ぎましょう!」


 タナカ、オルフェさん、ロッドさん、ナタリアちゃん、おれ、シーラさま、ラダさま、ルカさん、ショタベリアス様、ハナさん、そしてナカジマと連なり、雪山の地球へと――【空間転移】で跳んだ!


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