表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ずっこけ3紳士! はじめての異世界生活~でもなんかループしてね?(ネタばれ)~  作者: 犬者ラッシィ
第八章 3紳士、都会で名を上げるⅢ 傷を舐め合う道化芝居編 【推奨レベル24~】
40/175

319 何も持たずに産まれただろう?

「ヤマダ流、秘技『昭和()りすすき』!!」


 ――スキル【勇気百倍】! モチモチの剣!!

 からの~?



『――スキル【遅滞ちたい】発動!!』


 クラウチングスタートで走り出したおれは、正面のベリアス様をほったらかして後衛の攻撃魔法特化のベリアス様へ向かう!

 

 通り過ぎるおれを視線で追いつつも、身体の反応が追いつかない正面のベリアス様。

 

 おれの内なる「もう一人のヤマダ」のスキル【遅滞】とは、おれが近づくほどに周囲のスピードが遅くなる。確か、およそ五分の一だったっけ?



『大迷宮でやりあったヨシザワの【遅延ちえん空間】程度と一緒にするなよ? おれの【遅滞】はヤマダのスピードに対して相対的な五分の一だからな?』


 ……? 意味が解らん。何が違うんだ?





     

 ――ジュパ!!!!

 おれは、魔法を撃っていた後衛ベリアス様の首を切り飛ばした。

 ……まず一人。



 てか、【遅滞】といい【劣化】といい、そっちのスキルが使えるなんて今日初めて知ったんだけど……!?

 


『スキル【遅滞】は、ピンチの時にはこっそり使ってたんだぜ? あの時とかあの時とか?』


 ええ~っ!? いつだよ!?

 てか、言えよー!





 ――――ジュパ!!!!

 続けて、鉄拳を操っていた後衛ベリアス様の首を落とした。

 ……二人。



『おれにはおれの事情があるんだよ……』


 ……?

 でもまあ、助かったよ。ありがとう。



『なあに、おれとしてもヤマダに死なれたら困るしな』


 そりゃそうか。

 よし、一緒に生き抜くぜ? そんで、ラダ様に逢いに行こう!




 

 ――――――ジュパ!!!!

 最後に残った正面のベリアス様だが、さすがに三人とも首を斬っては死んでしまうだろうから、両足を【王の領域】ごと切断して戦闘不能にしておく。


 

 おれの……、おれ達の勝ちだ!







 ――ぶるぉぉぉぉお!!!!

 一瞬の静寂の後、観客席から歓声が沸き上がる。



『う、うっそぉぉぉっ!!!! ベリアス様が死んじゃう~~~!!!!』


『ふふっ、ヤマダのやつ、本当に成し遂げたか』


『アザリン様、早いところヤマダ様の勝利宣言を――。そうすれば、わたくしどももケガ人の治療にとりかかれますっちゃ』


 両足を失い地面に倒れ伏したベリアス様は、なんとか身体を起こそうともがいている。

 まだ何かしてくるかもしれないので、おれは油断なく身構えつつ、実況者の判定を待つ。

 ……てか、早くして!





『ぐぬぬ……、仕方ありません。本日二回戦「王者ベリアスv.s.勇者見習いヤマダ」の決闘は、黒軍「勇者見習いヤマダ」の勝利ですぅ~~~!!!!』


 

 ――ぶるぉぉぉぉお!!!!

 いろいろな感情が入り交じった観客の歓声を聞きながら、おれはやっと緊張を解いた。


 

 貴賓席きひんせきを見上げ、ユーシーさんに手を振る。

 ……おいおい、凄い顔で泣いてるじゃん。不細工だけど、愛おしい。


 もじゃもじゃ頭が視線を遮る。

 マデリンちゃんがすごい手を振り替えしてくる。満面の笑みで、こっちまでつられて笑顔になる。


 貴賓席の少し下、シーラさま達にも手を振る。

 思いっきり手を振り替えしてくるシーラさまとナタリアちゃんと、鎧の人……誰だあの人?





 ――ざわ……ベリアス様が負けた……ざわわ……。

 ――ざわ……ヤマダが勝っちまった……ざわわ……。

 ――ざわ……ヤマダが勝ったってことは……ざわわ……。


 観客席から、期待に満ちたざわめきが聞こえ始める。



 ――ざわ……純潔を賭けるって話は……ざわわ……。

 ――ざわ……グレイス様はともかくセリオラ様は……ざわわ……。

 ――ざわ……ざわわ……うっきぃぃぃぃ……ざわ……ざわわ……。

 

 時々、奇声を発している辛抱溜まらんお兄ちゃんもいるようだ。

 ……ちょっとまたドキドキしてきた。









 ――!! 【危機感知】反応!?

 おれを中心とした広い範囲に攻撃魔法の気配……!!?


 スキル【飛翔】で攻撃範囲外に慌てて飛び出すおれ。

 いけね……! 動けないベリアス様を放置しちゃったけど、【王の領域】があるから死んだりしないよね?





 ――ドッゴォォォォン!!!!

 あわわ……、円形闘技場が大爆発!! ベリアス様が吹っ飛ぶのが見えた。


 

 ……お、おれのせいじゃないよ!? 誰だ!? 誰がやった!?

 スキル【危機感知】を頼りに、魔法を撃った犯人を捜す。




 

 ――居た!! あいつか!?

 観客席上段の通路に、悪意の残滓ざんしをまとわせた若い神殿騎士の男を発見!


 背中の羽根をはためかせ、そいつに向かって真っ直ぐに飛ぶ!

 おれに見つかったことを悟った男は、「うっきぃぃぃぃ!!!!」と奇声を発し剣を抜いた。   



 ――キィィン!!

 おれは【飛翔】の勢いのまま接近し、「モチモチの剣」で男の剣を切断した。


 ――ボコ!! ボコ!! ボコ!! ボコ!!

 そして、剣の腹の部分で大人しくなるまで繰り返しぶん殴る。







 おれは、ボコボコにした若い神殿騎士を円形闘技場に引っ張り出した。

 

 てか、ベリアス様はどうなった……?

 爆発でえぐれた地面の底に、なんだかグロいものが見えたけど……お、おれのせいじゃねーし……! こいつのせいだし……!

   

 ……てかこの後、こいつ、どうしよう?

 おれは、若い神殿騎士の首根っこを押さえ込んだまま、実況席へすがるように視線を投げる。



『え、え~っとぉ、乱入者は、見たところネムジア教会の神殿騎士のようにお見受けするのですが~、解説のアイダ様~?』


『う、うむ。若い神殿騎士や神官の中には、特定の聖女に執着し心酔する者も少なくないのだ。彼もそういった熱狂的なファンの一人ではなかろうか……?』


『ですが、あのタイミングで仕掛けてくるのは――さて、どの聖女様のファンですっちゃろ~?』


 観客達の視線が貴賓席のグレイス様とセリオラ様に集まる。

 

 おれは、泣きべそをかいている若い神殿騎士に問いかけた。



「あー、きみってさ、グレイス様派? それともセリオラ様派? おれは、どっちかって言うとグレイス様派なんだけど……」


「うっきぃぃぃぃ!!!! セリオラしゃまの純潔わ~~~っ、誰にもわたしゃ~~~ん!!!!」


 ……わ、判ったよ。落ち着こうぜ? おれはグレイス様派だって言ってるじゃん?




 

 ――と、その時だった。再び、おれのスキル【危機感知】が反応……!?

 貴賓席のセリオラ様がおれを狙っている。

 おれに向かって一直線の射線。おそらくは、【光線】の魔法が来る……!?


 飛び退くと数秒遅れて、おれの居た場所を白いビームが走り抜ける。そしてそのまま横薙ぎに神殿騎士の若者を切り裂いた。

 ……まじか!? 殺しやがった……!!?





『ひやぁぁぁあ!!!! テロです!! 暗殺です!! あの神殿騎士は王様を狙っていました!! 王様に向かって【爆発】の魔法を撃とうとしていたのです!! まだ仲間がいるかも知れません!! すぐに避難いたしましょう!! こんな決闘は中止です!! さあ、早く避難を!!』


 セリオラ様のスキル【独壇場どくだんじょう】! 自分以外周囲の音を消し去り、言いたいことを言いつのる。

 

 ――ウソつけ!! と、聖女セリオラ様を知る関係者達は誰もが思っただろう。


 だが、観客のお兄ちゃん達は別だ。始めこそ「いやいやそんな無茶な!」と思ったに違いない。――でも、セリオラ様の迫真の演技に「え? もしかしてマジなの?」とやがて思い始めてしまったとしても、誰が純粋なお兄ちゃん達を責められようか……!?


 観客席がパニック状態に陥ったところを見計らい、セリオラ様のスキル【独壇場】が解除され音が戻る。       





『……み、皆さん!! 落ち着いてっ!! 慌てず落ち着いて、スタッフの誘導に従い避難してくださ~い!!』


『ばかな……、アザリン殿も落ち着け、パンツが見えているぞ?』


『本当に嫌なスキルだっちゃ……え?』





『皆のもの、静まれぇい!!!!』


 威厳のある声が円形闘技場に響き渡り、避難を開始していた観客達が一瞬で沈黙し硬直する。

 

 声の主を探せば、実況席の前に一人の背の高い青年が立っていた。

 エリエス様のマイクを使ったようだ。



「スキル【威圧いあつ】の進化形【王の威厳いげん】だぜ?」


「えっ!? もしかして、ベリアス様!?」


 背の高い青年は、どうやら六人目のベリアス様らしい。

 背は高いが他の五人と違い、ベリアス様の代名詞とも言える筋肉は見る影もない。

 むしろ、やせっぽっちな印象だ。



「これが本当の俺さ」


「……!」



「それにしても、案の定だったな。あの女が素直に抱かれるわけないって言っただろ?」


「……おれはグレイス様派だし、最初からそんなに期待してませんでしたよ」



「そうは言っても、お客さんは納得しないぜ? もちろん俺もな! 決闘に負けてこんな無様な格好を晒してるくせになんだが、俺の作戦はまだ終わっちゃいないんだぜ?」


「作戦って……。おれは、そういうの本当にいいんで、他所よそでやってくださいよ!?」



「そう言わずに愉しめよ、ヤマダ!! ――スキル【王の領域】を【進化】!!」


 ――!!

 世界が変わる感覚。


 この感覚には憶えがある。

 シレンタ村で、湖の小島に上陸した時に感じた……。











 気がつくと、おれは全裸だった。



 目の前の痩せたベリアス様も全裸。



 実況席のキャプティンもアイダ様も、エリエス様も全裸!



 貴賓席のユーシーさんも聖女様達も、王様も、お客さんも全裸!! 全裸!! 全裸!!!!





「――【王の領域】の進化形、【神域しんいき/何も持たずにまれただろう?】……だぜ!!」

 

    

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ