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ずっこけ3紳士! はじめての異世界生活~でもなんかループしてね?(ネタばれ)~  作者: 犬者ラッシィ
第八章 3紳士、都会で名を上げるⅢ 傷を舐め合う道化芝居編 【推奨レベル24~】
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318 チート大好き

 ――キィィン!!

 おれの『ガリアンソード』が、ベリアス様の大剣を【王の領域】ごと切断した。


 そのまま振り下した次撃は、惜しくも空を斬る。


 スキル【反射】か【超反射】かは知らないが、素早い反応で距離をとるベリアス様。



『うっそ~~~!!? ベリアス様の剣が折れちゃいましたよぉ~~~っ!!?』


『いや、折れたのではない、斬られたのだ。おそらく、ヤマダのあの剣の輝きこそが、本物の「勇者のオーラ」……!』


  

『……おかしいっちゃ』

 

『どうした、聖女エリエス!? アザリン殿の胸はほれこの通り、不審な点などどこにもないぞ?』

『……ちょ、アイダ様!? ああっ……!!』



『完全に折れていたヤマダ様の右腕が、いつの間にか元どおりになってるっちゃ! 【自然回復】だけでどうやって……!?』


『――ま、まさか、不正ですか!? 不正ですね!? ヤマダのやつ、やっちまいやがりましたね!!?』



『おいおい、二人共落ち着け。ヤマダは罪人ではないと言っただろう? スキルや魔法でないなら、「回復アイテム」に決まっている。この決闘、武器やアイテムの持ち込みは自由だったはずだ』


『言われてみれば……。わたくしとしたことが、うっかりしてたっちゃ』


『……ですけど、当のヤマダ本人が「その手があったか……!」という顔をしているように見えるのは、キャプティンの気のせいでしょうかー?』





 ――その手があったか……!

 ちなみに右腕の骨折は、「もう一人のヤマダ」のファーストスキル【劣化】で治した。


 【劣化】は、触れた物の時間を超スピードで進めるスキルだ。おれ自身の時間を一日だけ進めることで、骨折を含むダメージはスキル【自然回復】により完治した。





「……ちっ、『勇者のオーラ』か。見るのは二度目だが、やっぱりすげえもんだな……!」


 そう言って、刀身を失った大剣を捨てるベリアス様。

 どうやら替えの武器はないらしく、その両拳に金色のオーラ【王の領域】をまとわせる。

 後衛のベリアス様二人は、それぞれ「攻撃魔法」と【浮遊鉄拳】を担当するようだ。



 鉄拳はともかく範囲魔法はおれにとって厄介。ならば、一気に間合いを詰める!

 ――と、一歩踏み出した時だった。





「ベリアス様~~!!」

「お、お待たせしました~~!!」


 観客席から、女の子の声。

 思わず視線を移すと、見覚えのあるメイドエルフさん二人だった。


 その内一人が、円形闘技場に何かを投げ込む。

 ……!?


 

 ベリアス様の金色のオーラで形作った腕がみょんと伸びてそれをキャッチする。


 それは一振りの剣だった。





「待ってたぜ~、いい時に来てくれた!!」


 怪しい光沢のその剣をベリアス様が装備する。

 おれはついつい立ち止まり、ぼけーっと成り行きを見まもっていた。

 

 ……えっと、観客席から武器の受け渡し? ……それはありなの?





『お、おい、アザリン殿、あれは有りなのか!?』


『ええ~っとぉ、白軍執行人の武器が壊れた場合は替えの武器を用意することになってますので~、有りじゃないでしょうか~?』


 

『なっ……!?』


『アイダ様、止めましょう。観客も王様も、ぜんぜん気にしていないようですっちゃ』





「実は着の身着のままでここまで来ちまってよ、さっき屋敷まで伝言を走らせてたんだよ、こいつを持って来てくれってな~。間に合ってよかったぜ!」


「……!! その剣は……!?」


 ベリアス様が抜き放った剣の刀身には「無数のスジ」が見て取れた。

 ……なんだかとても見覚えがある。



「ヤマダのと同じ、『ガリアンソード』さ。見かけだけの安物じゃないぜ? 素材も『天魚』のウロコを使った国宝級の逸品よ!」


「こ、国宝級!?」


 おれは、自分の手の中の『ガリアンソード』をまじまじと見直した。

 もしかして、おれの『ガリアンソード』も国宝級だったりするんだろうか?



「空の彼方、宇宙から時折やって来る『天魚』もまた、この世界のことわりから外れた存在だ。『天魚』のウロコは、たとえ『勇者のオーラ』でも易々とは斬れないはずだぜ!? つーか、俺はそう聞いてる」


 そう言うとベリアス様は、切っ先を地面に置く様に自身の『ガリアンソード』を構えた。

 

 ……ん!?


 

 いくぜヤマダ!! と、三人の内どのベリアス様が言ったやら――? 後衛のベリアス様二人から【光線】の魔法と【浮遊鉄拳】がおれに向かって同時に放たれる。


 スキル【危機感知】と【認識阻害】を駆使して、最小限の動きで攻撃をかわすおれ。


 

 正面、前衛のベリアス様が動く。

 下段から、『ガリアンソード』で地面の土を跳ね上げた!


 続けて上段から振り下ろすと同時にギミック作動、刀身が細かく分解しワイヤーで数珠繋じゅずつなぎのムチ状に変形伸長する!



 ――ギリリィィン!!

 ベリアス様の攻撃を「モチモチの剣」で受ける。

 

 ……なるほど斬れない。

 どうやらベリアス様は、「勇者のオーラ」についてきっちり対策していたようだ。

 

 てか、今の連撃ってまさか……?



草原そうげん流『草刈くさか連斬れんざん』! だぜ? ヤマダも草原流だろ?」


「……い!?」





『なんとぉ~! ベリアス様ってば、ヤマダと同じ武器を持ち出しましたよ~!! 素晴らしい、フェアプレイの精神ですぅ~!!』


『流行ってるのか? あの武器は』


殿方とのがたは、ああいうオモチャが大好きだっちゃ』





 ムチ状になった『ガリアンソード』を剣に戻しながらベリアス様が語る。


  

「二年前の夏、街の住人の半数がアンデッド化するという事件があった。かつて城塞都市と呼ばれたキタカルのゾンビパレード事件だ。――その最前線で、俺はあの人に会った!」


 ベリアス様が膝を着く。

 しゃがんだ姿勢から、『ガリアンソード』を横薙ぎにすると同時にムチ状に変形伸長させる――草原流『青田薙あおたなぎ』!!


 ……その横薙ぎをジャンプでかわすおれ。


 

「――小柄な身体に全身鎧と輝くオーラをまとい、誰よりも速く、誰よりも多く群がるゾンビどもを切り伏せた真の勇者! 右手にたずさえしは異世界の秘剣『ガリアンソード』! 名乗る流派はほまれ高き『草原流』!」


 ベリアス様は、ムチ状の『ガリアンソード』を一旦剣に戻し、突きを放つと同時に再度刀身を伸長させる――草原流『雑草突き』!!


 ――ガリィィン!!

 おれはその突きを、自身の『ガリアンソード』で受け流す。



 ……なんとなく察したぞ? おい。



「――俺が憧れた心の師、『草原の勇者』ハチローターさん。あの人が『魔族領』で消息を絶ったって聞いた時には本当にショックだったが……俺は思った、あの人の後を継ぐのは俺しかいないと……!!」


 大ジャンプから体重をかけて切り下ろす――草原流『唐竹からたけ落とし』!!

 

 草原流一番弟子はこの俺だ!! と、ノリノリのベリアス様。





 ――だから、「草原流」ってなんだよ!?

 おれはベリアス様の攻撃をかわしながら、内なる「もう一人のヤマダ」に問いかけた。



『……まあ、思いつくことは一緒ってことだな。おれってほら、「草原の勇者」だったから「草原流」みたいな?』


 言えよー! おれの「ヤマダ流」がなんかバッタモンみたいになってるじゃねーか!

 てか、二年前にベリアス様と会ってるの? どこぞのゾンビパレードだっけか?



『言われて思い出したけど、キタカルのゾンビパレード事件の時、妙に金回りのいいお坊ちゃんに懐かれてよ、色々おごってもらったりしたもんだから、ついつい調子に乗って「一番弟子にしてやる!」とか言っちゃったかなー……?』


 おれが忘れてしまった8年間の記憶からなる「もう一人のヤマダ」。

 その「もう一人のヤマダ」が「言われて思い出した」って、なんだかとてもややこしい。



『あの時のひ弱な坊ちゃんが、たった二年で変われば変わるもんだな』





 ――ん!? ベリアス様のあの構えはなんだ?

 

 『ガリアンソード』を逆手に持ち替えて、両手を地面についた見知らぬ構え。

 陸上の短距離ランナーみたいな……クラウチングスタートだっけ?



『――な!? まさか、あの技を……!?』


 ――えっ!? えっ!? あの技ってなんだよ!?





「草原流奥義!! 『ショウワりススキ』!!」


 クラウチングスタートの構えから一気に加速するベリアス様。

 ――【危機感知】反応!! や、やべ……!?



 ――ギリィン!!!!


 ――――ギリィィン!!!!


 ――――――ギリィィィン!!!!


 ――――ギリィィン!!!!


 ――ギリィン!!!! 


 ――――ギリィィン!!!!


 ――――――ギリィィィン!!!!


 ――――ギリィィン!!!!


 ――ギリィン!!!! 





『ベリアス様の息もつかせぬ連続攻撃に~、次第にヤマダが追い詰められる~~~!!』


『あのスピード、あれはスキルではないのか!?』


『単純な身体能力によるものでしょう。レベル48は、伊達じゃないっちゃ』


 ――ぶるぉぉぉぉお!!!!

 派手な攻防に観客のお兄ちゃん達も大喜びだ。


 おれは、ベリアス様の連続攻撃を辛うじて受けきる。


 ……とうとう、おれの知らない技が出てきた。

 今のは一体どういう技なんだ……?


 

『説明しよう! 草原流奥義「昭和刈りすすき」とは!? ――ダッシュで敵の横を走り抜けて、すれ違いざまに斬る……!』


 それな。誰でもできるやつ。

 ……でも、なんで奥義?



『本来はおれのスキル【遅滞ちたい】を使ってやるから、とんでもなく速い』


 なるほど。スキルでスピードを盛るのか、ずるいな。

 てことは、ベリアス様のやつは劣化版だったわけだね。



『とはいえ、スキルなしの自力であの技を再現した努力は認めざるを得ない。いいんじゃないか、彼が草原流一番弟子で?』


 だな。草原流はベリアス様に任せよう。



『ところでヤマダ、ずる(チート)は嫌いだっけ?』


 ずる(チート)、大好き。





「……ちっ、全部受けられちまったか。ハチローターさんの『ショウワ刈りススキ』は、まだまだこんなもんじゃなかったぜ!?」


「いえ、お見事でした。『草原の勇者』さんも感心してましたよ?」



「……そりゃどいうことだい?」


「おれの流派は『草原流』じゃありません」


 おれは『ガリアンソード』を逆手に持ち替え、地面に手をつきクラウチングスタートの構え。



「……!!?」


「ヤマダ流、秘技『昭和刈りすすき』!!」


 ――スキル【勇気百倍】、モチモチの剣……!!

 からの~?



『――スキル【遅滞】発動!!』





 ――ジュパ!!!!

 魔法を撃っていた後衛ベリアス様の首を切り飛ばす。





 ――――ジュパ!!!!

 続けて、鉄拳を操っていた後衛ベリアス様の首を落とす。




 

 ――――――ジュパ!!!!

 最後に、正面のベリアス様の両足を【王の領域】ごと切断した。

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