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ずっこけ3紳士! はじめての異世界生活~でもなんかループしてね?(ネタばれ)~  作者: 犬者ラッシィ
第七章 3紳士、都会で名をあげるⅡ 僕が先に好きだったのに編 【推奨レベル16~23】
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282 ドジな奴

 ――ばおん!!!! と、突然大きな音と光が大迷宮56階層の通路を満たした。



「んぎゃぁぁぁ~~~!!!!」


 振り返ると、ヤグチが燃えていた。

 ……あれか、ジェフ君の「地雷」っぽいスキルの罠。

 どうやら、逃げながら適当にばらまいていったそれを、ヤグチがまんまと踏んだらしい。……エグいな。



「あちゃー、ヤグチ君はもうダメかもねー?」

「ドジな奴。仕方がない、このおっさんは俺とヤスダでやる。ミチシゲは、ゴトウと一緒に鎧のヤツ担当な?」


「ちぇ、また追いかけっこか」


 上手いことばらけてくれた。

 ゴトウとミチシゲが、鎧のヤツ……『クラムボンの鎧』を身に着けたシマムラさんを追いかけていったので、どうやらおれの相手はとりあえずヨシザワとヤスダの二人らしい。


 



 大迷宮56階層は暗い。

 ダンジョンと言えば、壁や床がほんのり発光して灯りいらずというのが常識なのだが、55階層以降の壁や床はまるで作りかけのように発光しない。

 今は、ヨシザワとヤスダが頭の上に浮かべている光の玉【浮灯うきあかり】の魔法が周囲を照らすばかりである。 

 

 だが、おれにとってこの暗さはむしろ好都合。

 なんなら真っ暗でも、おれにはスキル【危機感知】があるから……って、うそだろ……!?

 

 ……アンディ君に【スキル封印】された【危機感知】が、まだ封印解除されていない。 

 

 ――ひゅん!

 おれの顔の横を、魔法【石礫いしつぶて】がかすめる。

 思わず通路の暗がりに逃げ込もうと身体が動いたが、それは返って危険だ。

 明るい場所で狙えば狙うほどスキル【認識阻害】の効果で、おれへの遠距離攻撃はほぼ当たらない。しかし、暗い場所では偶然当たってしまいかねない。

 


「あれれー? ヨシザワ君、何コレ? 全然魔法が当たらないんだけどー?」 

「避けてるようには見えないが? だったら、範囲魔法で……」


 それは勘弁して欲しい。

 おれは、一気に距離を詰めた。

 ……ここから、『ガリアンソード』を伸長させて、二人まとめて横薙ぎにする!



「ヨシザワ君!」

「そう来ると思ったぜ! スキル【遅延ちえん空間】!!」


 ……!? なんだこりゃ!?

 ヨシザワの周囲およそ3m、粘るような空気がおれにまとわりつき……身体が重い!?

 スピードが著しく減退した。


 おれが減退したスピードでゆっくり『ガリアンソード』を振る隙に、ヨシザワが余裕で剣を抜きおれに斬りかかる!


 ――ギィィン!!

 辛うじて、ヨシザワの攻撃を『ガリアンソード』で受けた。

 

 慌てて距離をとると、身体のスピードが元に戻る。

 どうやら、ヨシザワの周囲およそ3mに近づくと、スピードが減退してしまうというスキルらしい。


 ……かといって、距離をとれば範囲魔法が来る。

 おれはヨシザワを大きく迂回し、ヤスダに近づいた。



「あわわ……」

「おいヤスダ、俺の【遅延空間】に入っとけ!」


 ……させるか!

 おれは、背中を向けたヤスダのフトモモを『ガリアンソード』で貫いた。


 

「い……痛てぇぇ!!」

「ちっ……」


 顔面から床に滑り込んだヤスダにヨシザワが駆け寄ってきたので、おれは再び距離をとる。


 ――ゴゴウッ!!

 ヨシザワが放った魔法【火柱ひばしら】の熱がおれの頬を焦がす。

 

 ……あぶね!! やっぱり、範囲魔法は不味い。

 おれは、通路の奥の暗がりへと走る。



 ――ゴゴウッ!!

 ――ゴゴウッ!!

 繰り返し放たれる【火柱】の魔法。炎の灯りが周囲を照らし、おれを追い込む。

 くっそ……。





 ――ゴゴウッ!!



「ぐぎゃぁぁぁ~~~っ!!!!」


 遂に【火柱】の魔法がおれを捉えた。

 断末魔の悲鳴が、暗い通路に響き渡る……。



「やったのー?」

「たぶんな」





 ……やってねーよ。

 魔法をくらったのは、スキル【空間記憶再生】で再生した「さっきまでそこに居たおれ」の立体映像だ。

 本物のおれは、少し離れた暗がりで『貴婦人の黒マント』を頭から被り身を潜めている。

 断末魔の悲鳴も、おれの迫真の演技だったというわけだ。



「――念のため死体を確認してくる。ここに居ろよ」

「オーケー。……っとその前に、【浮灯うきあかり】がそろそろ切れるね、出し直すよ」


 ヤスダがそう言って【浮灯】を消すと、周囲は暗闇に包まれた。


 その後直ぐに新たな【浮灯】が浮かび、周囲を照らす。


 ヨシザワが、こちらに向かって歩き始める。

 

 ……来い。ヨシザワさえ仕留めれば、ヤスダはどうにでもなる。

 『ガリアンソード』の射程6.6m。射程に入った瞬間に……、ヤツを仕留める。


 殺人はやはり嫌な気分だが、確実に仕留めないとこっちが危ない。

 それに、シマムラさんやアンディ君達のことも気になる。

 巻き込んでしまった以上、きっちりやるべきことをやろう。





 ヨシザワが近づく。

 ……距離6m。――今だっ!! 【勇気百倍】! 貫け、「カチカチの剣」!!

 手元のスイッチで『ガリアンソード』が変形伸長!

 分解し数珠つなぎとなった刃の切っ先は、一直線にヨシザワの胸を刺し貫いた……!



 ……!?

 手応えがおかしい。

 これじゃあまるで……。


 『ガリアンソード』に貫かれたヨシザワの身体が、ぼろっと土塊つちくれになって崩れた。


 ――【危機感知】反応!! おれが慌ててその場から飛び退くと、一瞬遅れて今まで居た場所に範囲魔法【火柱】の炎が立ち上った。



「ばーか! 今のはおれっちの【土人形】さー! 顔にヨシザワ君の写真を貼り付けたんだぜー」


「……やっぱり隠れてやがったか。さてはおっさん、あんた俺と同じようなスキル持ってやがるな!?」


 本物のヨシザワが、【土壁】の陰から現れる。

 ……くっそ、だまされた。さっき【浮灯】を一回消して出し直した時に入れ替わったのか……。  

 

 危なかった。【危機感知】がなかったら、危うく火だるまになってるところだった……って、いつの間にかスキル【危機感知】が復活してるじゃん! ……時間経過か? それとも、アンディ君が思い出して封印解除したか?

 

   

 ――ゴゴウッ!! と放たれるヨシザワの魔法【火柱ひばしら】。

 ――ひゅん! と頬をかすめるヤスダの魔法【石礫いしつぶて】。

 スキル【危機感知】と【認識阻害】のおかげで当たることはないが、おれの方も反撃の手立てがない。


 ……ヨシザワのスキル【遅延空間】範囲外から『ガリアンソード』で狙う? さっきは【危機感知】がなかったが、今なら範囲魔法を避けながら……いけるか?

 

 ……いや。さっきまでは【危機感知】がなかったから見えなかったが……、今ならもっと別の道筋が見える……!





「えーっと、おれのスキルは【空間記憶再生】、そっちのバッタモンと一緒にしないでくれるかな……!」

  

 おれは、今まで逃げ回った「おれ自身の残像」の立体映像をできる限り沢山、通路中に再生した。



「うおっ、なにこれキモっ!!」

「ちっ、なめやがって……!」


 ――ゴゴウッ!!

 ――ゴゴウッ!!

 と、繰り返し放たれるヨシザワの範囲魔法【火柱】が、再生された「おれ自身の残像」を焼くが、いくら焼いたところで立体映像が消えるわけもない。





 おれ本人は、ヤツらを無視して、通路の奥へと走っていた。

 途中から、スキル【浮遊】で20㎝浮き上がって、滑るように進む。

 灯りがないので、スキル【勇気百倍】で『ガリアンソード』を光らせ足下を照らす。





「や、野郎~、ふざけやがって! 待ちやがれ!!」


 ヨシザワがおれの逃走に気がつき追ってきた。

 ヤスダはフトモモの傷のせいで、まだあまり動けないのだろう。


 おれは、『ガリアンソード』に灯った光を点けたり消したりしながら、追ってくるヨシザワを誘導する、……スキル【危機感知】で見たあの場所へと。







 ――ばおん!!!! と、突然大きな音と光が大迷宮56階層の通路を満たした。



「あああぁぁぁ~~~!!!! あああ~~~っ!!!!」


 振り返ると、ヨシザワが燃えていた。

 ジェフ君が残していった「地雷」っぽいスキルの罠を踏んだのだ。

 ……エグいな。てか、おれだってスキル【危機感知】がなかったら、危うく踏んでたかも判らん。

 よくよく目をこらして見れば、通路にはまだそこかしこに設置されたままになっている罠の気配がある。


 おれは、20㎝浮き上がったままスイーッと燃えているヨシザワに近づいた。



「……た……たすけ……て……」


 さすがに気の毒になったおれは、一撃でヨシザワの首を落とした。

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