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ずっこけ3紳士! はじめての異世界生活~でもなんかループしてね?(ネタばれ)~  作者: 犬者ラッシィ
第八章 3紳士、都会で名を上げるⅢ 傷を舐め合う道化芝居編 【推奨レベル24~】
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308 積もらない雪

 円形闘技場を埋め尽くした観客を前に、大罪人であるウナルぴょんこと元枢機卿ウナル・バズーカは、巨大なアビススパイーダーを含むクモの魔物十数匹と命を賭けた決闘を強いられる。

 それは処刑であると同時に、娯楽に飢えた王国民に供される残酷なショーでもあるのだ。



 ――しゅびびびび~~~!!

 と例のビーム、【光線】の魔法が小型のクモ達をなぎ払う!


 始めは、ウナルぴょんが一方的にクモ達に群がられてバクバクかじられたりするB級スプラッターな展開を予想していたのだが、なかなかどうして結構戦えてるじゃねーか!?



『おおっと~!! ウナルぴょんの魔法がポイズンスパイダーを一掃~!! 元枢機卿の名は伊達じゃな~~~い!!』


 実況者のキャプティン・アザリンが叫ぶ!



『ふむ、やつめなかなかよく動く。自ら戦うなど久方ぶりだろうに』


『あの方のレベルは28! めぼしいスキルは――【魔力回復】、【並列思考】それに【絶倫】だっちゃ! あの程度の魔法なら何百発でも発射し続けられるに違いないっちゃ!』


 解説はネムジア教会の長身メガネ聖女アイダ様と、【鑑定】スキル持ちの聖女エリエス様である。



『……聖女エリエス、そのしゃべり方まだ続けるのか?』


『……文句あるっちゃ!?』



『すんご~い!! ウナルぴょんの勢いが止まらない~!! 両手から【光線】をドピュっと発射!! 発射!! 発射しまくり~~っ!!? さて~、解説のアイダ様、このままウナルぴょんが生き残ってしまった場合はどうなるんですかぁ~!?』


『そうだな、やつの場合はやらかしたことがことだけにな、減刑、ましてや無罪なんてことはありえないだろう。どのみち死罪は免れんだろうが、刑の執行は来年の「護国祭」まで猶予されるかもしれん』


『きっと、あの人とかあの人は、これ以上余計なことを口走る前に死んで欲しいと思っているに違いないっちゃ~!』


 エリエス様のコメントに歯ぎしりするのはグレイスにゃんだけではないかもしれない。捕まっていないだけで、あの反乱事件に関わっていた役人や兵士、ネムジア教会関係者はまだ結構いるんじゃねえかな?

 ……キャラ作りに余念が無いけど、底意地の悪さがちょっと出てしまっていますね~、うちの上司エリエス様ってば。



「はあはあ……死んで……、死んでたまるか~~~!!!!」


 ――しゅびびびび~~~!!

 ――しゅびびびび~~~!!

 おお、ウナルぴょんが猛烈に熱血している……!



『止まらない~!! ウナルぴょんが止まらな~い!! ついに、ポイズンスパイダーとディープスパイダーを殲滅してしまったぞぉ~~~!! 残るは大物一匹、アビススパイダ~!!』


『上手いな。アビススパイダーには最後まで手を出さず、ターゲットにされるのを避けた』


『大技の【光芒こうぼう】で反撃されることなく仕留めるつもりだっちゃ!』



『おっと、ウナルぴょんの足が止まったぞ~!!? 出るか~!? 出すのか~!? 大技、だしちゃうのか~~っ!!?』



 ――カカッッッ!!!!

 灰色の雪雲を切り裂いて空から降り注いだ強烈な光の柱が、アビススパイダーの巨体を焼く!!



『出た~~~っ!! 白き【光芒】の一刺し~~~!!!!』


 黒焦げのアビススパイダー。何本かの足は炭となって崩れ去り、支えを失った胴体が地に伏す。



 ――ぶるぉぉぉぉ!!!!

 大いに盛り上がる観客。

 例え大罪人であっても、ナイスファイトに惜しみない賞賛の声を投げかける。

 

 腕を振り上げ、観客の声援に応えるウナルぴょん。

 ……あんた今、最高に輝いてるぜ!!





 しかし、そんなウナルぴょんが突然ふらりとバランスを崩して膝を着いた。

 ……おっと、足にきちまったかい!? 中年あるあるだよな、解るぜ。



 ――!? いや、違うぞ!!?

 あれは、クモの糸か!? やばいぞ、まだアビススパイダーはくたばっちゃいなかった!!



『ああ~っ!! 倒したかに見えたアビススパイダーの糸が、いつの間にかウナルぴょんの身体を絡め取る~~~!!?』


『あの糸は固いぞ……!』


『せっかくの【並列思考】だというのにリロードを怠るなんて、所詮は事務方だっちゃ!』


 みるみる内に糸でぐるぐる巻きにされてしまうウナルぴょん。

 どうやら、両手を封じられて魔法も撃てないらしい。



 ――ぶるぉぉぉぉ!!!! と、ますます盛り上がる異世界ピープル。

 この後、食べられちゃうのか、ウナルぴょん!? グロシーンは勘弁だなー、見たくねーなー!!



「だ……誰か~~!! 助けて~~!! グレイスにゃん、助けてくれ~!! グレイスにゃん~!!!! グレイスにゃ~ん!!!!」


 降り続く雪は勢いを増すが、闘技場の熱気で積もる間もない。


 次第に静まりかえる観客席に見まもられて、ウナルぴょんの嘆きの声だけが大きくなっていく……。



 そして――。





 ――ぐじょん!!!!


 上空から雪を蹴散らして降ってきた「巨大な鉄拳」!


 アビススパイダーの巨体を一撃でひねり潰した。





「すまねえ! 待たせちまったよな!!」


 観客席から闘技場に飛び降りたのは鎧姿のイケメン、遅刻のベリアス様だった。



『なんとー!!? ここで、ベリアス様の登場だ~~~っ!!!!』



『ベリアスっ、貴様どういうつもりだ!!?』


「げっ、アイダ様!? そんなところでなにやってんだよ!? ……って、あれ? 誰だよこのおっさん!? ヤマダじゃねーのか?」



『その方は、元枢機卿ウナルぴょんだ。貴様が遅刻したせいで、二回戦の日程が繰り上がったのだ』


「なにぃ!? このおっさんが元枢機卿!? じゃ、じゃあ、こいつがグレイス様の……愛人なのか!!?」


『ち、違います~~~!!』


 でかい声で指摘するベリアス様。

 貴賓席から悲鳴のような声で否定するグレイスにゃん。



「……なんだ違うのか?」


『お二人は、ウナルぴょんグレイスにゃんと呼び合い、互いのおしっこをすすりあう仲だっちゃ!』



「お、おしっこだとぉ~~!!?」







「とにかく、俺はまだ不戦敗にはなってねーんだよな? 間に合ってよかったぜ~!」


『そんなことよりどうするつもりだ!? 貴様のせいで、大罪人であるウナルぴょんが生き残ってしまったぞ! この不始末をどうつける!?』


 アイダ様に言われて、ベリアス様は頭をかきながら、クモの糸から抜け出そうと四苦八苦しているウナルぴょんと、大中小クモ達の死骸を見渡した。



「あー、このでかいのはまだ生きてるんじゃねーかなー?」


 いやいや、胴体がぺっちゃんこだし、どう見ても死んでるぞ?

 苦し紛れに何を言い出すやら……と、思ったのだが……ん!?



 もぞもぞ――っと潰れたアビススパイダーが身じろぎしたかと思うと、バクバク――っとウナルぴょんの頭にかじりついた。

 

 ……ああっ!! ああああ~っ!!?



『しっ、しっこーう!! 死刑執行~~~!!!! アビススパイダー最後の執念か~~~っ!!? 「元枢機卿ウナルぴょんv.s.昆虫軍団」は~、相打ち引き分けとなりました~~~っ!!!!』



『――ばかな、何をしたベリアス!!?』


「魔物の生命力ってのはあなどれねーもんだぜ!?」



『……さっき一瞬、ベリアス様のスキルが一つ増えて……消えたっちゃ?』


「おっと、エリエス様は【鑑定】持ちか、あぶねぇあぶねぇ……つーか、そんなしゃべり方だっけ!?」







 闘技場からウナルぴょんと昆虫軍団の亡骸が運び出されていく。

 この清掃が終われば、いよいよおれの出番らしい。  


 ドキドキが止まらん。

 そして、時々不整脈が……。


 

 ベリアス様はそのまま闘技場内に留まり、観客席の知り合いと何事か言葉を交わしているようだ。

 

 ……って、あれ!?

 ベリアス様と話してるメガネのあいつ、ナカジマじゃねーか……!?



 控え室の格子付きの窓から手を振るおれ。

 おーい、ナカジマー! あんた、なにやってんの? 

 

 ……まさか、おれを応援しに来てくれたのか?

 てか、ベリアス様と知り合いなの?



 おれとバッチリ目が合ったナカジマだったが、なぜか気まずそうに目を逸らした。


 ……? なんだあいつ、きもちわりーな……?

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