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ずっこけ3紳士! はじめての異世界生活~でもなんかループしてね?(ネタばれ)~  作者: 犬者ラッシィ
第八章 3紳士、都会で名を上げるⅢ 傷を舐め合う道化芝居編 【推奨レベル24~】
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304 『はぐれパラディン純情派⑥』

 一方その頃、谷底に取り残されたベリアスは焦っていた。



「くそっ、結局逃げるんじゃねぇか! どこだよ、ここ……?」


 目の前にそびえる「境界の山脈」の近さからして、王都から北へ100~200㎞といったところだろうか? 例えベリアスが全力で走ったとしても、日没までに王都にたどり着けるか微妙なところだ。


 絶壁を見上げるベリアス。

 ここを登れば、王都が見えるだろうか? ――と、金色のオーラで形作った腕で、ほぼ垂直に切り立った壁に取り付く。



 およそ50mはありそうな絶壁だったが、苦もなく這い上がり数分で頂上まで手が届く。後は身体を引き上げるばかり――と、その時だった。

 べリアスのオーラの腕が掴んだ岩壁と周囲一帯に、急激な魔法力の収束を感じた。


 ――ドゴン!!!! 魔法【爆発】が、ベリアスの眼前、絶壁の頭頂部で弾けた!



「うおぉぉぉ!!?」


 崩れた壁面ごと谷底へと落下していくベリアス。

 その視界が、階段を登るように空へと駆け上がるカスパールの姿を捉えた。


 やつめ、戻って来やがった! ――と、なぜか少し嬉しそうなベリアス。着地も気にせずに、二対の巨大な鉄の拳、スキル【浮遊鉄拳】を発射した!



 階段状に設置したスキル【透明障壁】を足場にして、空高く駆け上がって行くカスパールに鉄の拳が迫る!


 ――スキル【位置交換】! 落下中のベリアスとカスパールの位置が一瞬にして入れ替わる!



「そのスキルはもう見飽きたぜ!!」


 ――スキル【超反射】! ベリアスは目の前に迫った鉄の拳を、金色のオーラの腕でキャッチすると、着地したカスパールに向かって投げつける!



 地面を滑るように【疾走】し、攻撃を避けるカスパール!


 今度こそ逃がさねぇ! と、落下しながら鉄の拳を操るベリアス。

 




 突然、カスパールがターンして振り返る。

 

 どういうわけか、追いすがって来ていた二対の鉄の拳が、カスパールの左右を素通りしていった。



「ベリアス君、よそ見しすぎ」


「あぁぁああ……!!?」


 落下の途中、ベリアスが空中で静止していた。

 

 肩口から深々と、不可視の壁面【透明障壁】が肉厚の刃のように食い込んでいる。

 カスパールは、落下してくるベリアスの真下に【透明障壁】を縦に設置し罠を張っていたのだ。


 空中で身動きのとれないベリアスは、金色のオーラの腕を伸ばし、【透明障壁】を破壊して地面に落ちた。





「ごふっ……お、俺の【王の領域】を貫くなんてな……ずいぶんHPを削られちまった。だが、俺には【大回復】の魔法があるから……!?」


「おっと、ステータスを見たね? 気付いちゃったかい?」

 

 両手に剣を装備したカスパールが歩み寄る。



「こいつは……、どうなっていやがる……?」


「スキル【影狩】……!」


 魔法【大回復】で傷の治療を始めたベリアスに、カスパールが斬りかかる!


 通常攻撃ではベリアスの金色のオーラ【王の領域】を貫くことはできない。

 それでもカスパールは、二本の剣で、繰り返し斬りかかる!



「あんたの攻撃は【王の領域】で全部弾いてるっていうのに……!?」


 カスパールは両手の剣で繰り返し斬り続けた!


 その全ての攻撃は【王の領域】に阻まれ、ベリアスにダメージを与えることはなかったが、斬りつける度にベリアスの「MP」を確実に削っていった。

 

 スキル【影狩】とは、敵の防御を無視して「MP」にダメージを与える……!



「……最初からだ、僕は最初からこのスキルを使って、君の『MP』だけを削っていた」


「せこいまねしやがって……!!」


 ベリアスは急激に減っていく「MP」にもうろうとしつつも、スキル【浮遊鉄拳】で四つのの鉄の拳を出現させ、至近距離からカスパールを狙う。


 カスパールは、構わず切り続ける! 今までの鬱憤うっぷんを晴らすように、斬って斬って斬りまくる!!



「うぉおおおーーーっ!!!!」


 そして、鉄の拳が放たれる前に、ベリアスの全ての「MP」を削り切った!


 

 『MP』(ゼロ)――、昏倒し前のめりに倒れるベリアス。


 鉄の拳は全て、地面に落ちて消えた。


 身体を覆っていた、金色のオーラも消えた。





「……トドメだ」


 カスパールは、ベリアスの無防備な背中に向かって魔法【掘削】を撃つ。

 

 ぼごっ!! というイヤな音がして、ベリアスの背中に大きな穴が穿うがたれた。







 ――直後。


 再び、ぼごっ!! というイヤな音がして、カスパールの胸から金色の拳が飛び出した。



「がふっっ……な? ……だ、誰だ……!?」



「俺は王者ベリアス。やっと掴まえたぜ! このまま、王都まで送ってくれよ」


「……!? だ……ったら、僕が今まで戦ってたのは……?」



「そいつも、さっきまではベリアスだった」


「……!?」



「さっさと王都へ戻してくれよ? そしたら、特別に【大回復】をくれてやるぜ?」


「……い、嫌だって……言ったら……?」



「この拳を引き抜けば、あんたは回復魔法を使う間もなく死ぬだろうぜ?」


 だよね――とつぶやいたかと思うと、カスパールは一歩前に出て自らベリアスの腕を引き抜いた!


 ――スキル【位置交換】! カスパールは、自身とベリアスの位置を交換し、ベリアスの背後をとった!

 そして、渾身の一撃を叩きつける!


 ――ギィィン!!

 カスパールの剣は、ベリアスの金色のオーラに弾かれて折れた。



「ばかやろうが……!」


 次の瞬間、四方から打ち込まれた鉄の拳が、カスパールの残された命を削り飛ばした。







 ***







 ――十二年前。

 『護国祭』で賑わう祭りの雑踏の中で、迷子のカスパールは聖女ユーシーに手を引かれていた。



「おねえちゃん」


「なあに?」



「おねえちゃん、かわいいね。大きくなったらぼくのおよめさんにしてあげるよ」


「ぷぷ。ざんねーん、私は弱虫で泣き虫のおぼっちゃんとは結婚しませーん」



「ぼ、ぼくは弱虫でも、泣き虫でもないぞ!」


「えー、そうだっけー? カスパール君、そうだっけー?」



「今からだ! 今からぼくは強くなるし、ぜったい泣かないし」


「へー、ふーん。じゃあせめて、ベンジャミンより強くないとねー」



「――!? ベンジャミンってだれさ!?」


「ヒミツー」





 ――えー、おしえてよー、ずるいよー!


 ――ずるくありませーん。



 とか話している二人と、カスパールは雑踏の中ですれ違った。

 

 そうか、六歳の時の僕はあんなことを話していたのかと、鮮明に思い出す。



 信仰だって? ただの初恋じゃないか――と。



「僕は相変わらず弱虫で泣き虫のままです、ユーシー様」


 カスパールはそうつぶやくと、顔を拭い雑踏の中に消えた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] シリアスな感じですね………カスパール君最後かっこよかったです ヤマダ対べリアス楽しみです [一言] べリアス様まさかのツンデレ? あとパラディンたちの殺す事しか考えないのすごいですw
[良い点] カスパールかっこよかった。ゲスいこともするけど一途ないいキャラ [一言] ヤマダやったれ!
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