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ずっこけ3紳士! はじめての異世界生活~でもなんかループしてね?(ネタばれ)~  作者: 犬者ラッシィ
第十一章 3紳士、無双したり成り上がったり、ずっこけたりする
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429 『異世界チートタナカ~混浴温泉殺人音頭①――ハニワ人形は見ていた!? 湯けむりに消えた鬼女たちのゲラゲラポー!~』

 おー待たせー。タナカです。

 最近踊ってますか? ぼくはよく踊ってます。

 なにしろ、ダゴヌウィッチシスターズの振付ふりつけは主にぼくなので、日頃から研鑽けんさんを怠らないのです。

 え? 日本のアイドルが踊ってたダンスの丸パクリじゃないのかって?

 いえいえ違います。パクリではありません。だってここは異世界なんだから、それをいうなら「知識チート」っていってください。


 それはさておき、前回までの『ずっこけ3紳士』は?



 地道な宣伝のかいもあって、旅館「玉月」モガリア教道場支店は大晦日おおみそかから大忙し。

 ぼくたち『紳士同盟』も、昨日から旅館業にてんてこ舞いなわけで。


 そんなフィーバータイムもやっと終わりが見え始めた夕暮れ時、ちょっと困ったお客さん達が巨大ドラゴンに乗ってやって来ました。

 それはちょっとキャラ濃いめのお婆ちゃん達、ラケシス様、クルエラ様、ミモザ様、エマ様の四人組に眼帯のエルフメイド、アマネさんを加えたモルガーナ公爵様御一行だったのです。


 シーラ様に会わせろだとか、宗教施設で旅館業なんてけしからんだとか、女性客向けのサービスをしろだとか、なんだかんだと文句の多いモルガーナ公爵様達。

 困ったぼくらは知恵を絞って、日本から中学の時の友人、宮坂ハジメ君を助っ人召喚したのです!


 ハジメチンのイカしたダンスに圧倒されて、口うるさかったモルガーナ公爵様達も何も言えなくなってしまうのでした。

 助っ人召喚作戦、大成功!


 更にダメ押しで、女性客向けのスペシャルサービス、オルフェさんとアンソニーくんの素肌をうつわにした「男体盛り」をご提供~!

 

 このスペシャリテ、モルガーナ公爵様達の食いつきはかなり良かったのですが――、思わぬトラブルを招いてしまいました。

 アンソニー(♀)を勝手にヒロイン認定したハジメチン。「男体盛り」のアンソニー(♂)にイタズラしようとしたミモザお婆ちゃんに向かって『妖怪ババァ』とか言っちゃったからさあ大変!


 哀れハジメチンは、怪しいスキルで女性に性転換させられてしまい、逆に男性になったモルガーナ公爵様達にねちょり輪姦された挙句、最後は巨大ドラゴンのエサにされてしまうのでしたー。

 ああ、合掌。さすがにぼくのスキルでも、身体の残骸一つなけりゃ回復も復活もできないよ。



 ――というわけで、そろそろ皆さんお持ちかね、ここからはやっとぼくのターンです!




 ***




 境界の山脈を一望できる断崖絶壁に面した大露天風呂は、うちの旅館「玉月」モガリア教道場支店の新たな目玉設備だったりします! 貴族の保養所だった時代に作られた後、資金難で使われなくなったまま荒れ放題だったので、旅館業の本格始動に合わせて、つい最近整備して復活させたというわけなのです! いやぁ、絶景かな。


 冬のキレイな星空の下、お湯がダバダバと注がれ続ける広い岩風呂に浸かるのはモルガーナ公爵様達です。

 あと、隅っこの方には、眼帯とタオル一枚のアマネさんも控えています。おっぱいは控え目だけど、スポーツ選手みたいないい身体してますね? どうやら、周囲を警戒しているようですが、さすがにぼく等の視線に気付くのは難しいでしょう。





「はぁ~、相変わらずここの湯はイイねえ!! 何年ぶりだったか」


 年齢の割りに引き締まった身体をしているラケシスお婆ちゃんが言った。いちいち声が大きいよね。



「ふ~ぅ、およそ二年ぶりざます。ここ数年はいつも誰かしら体調が悪くて、四人揃って旅行すること自体久方ぶりざます」


 痩せてて、おっぱいもべろーんとしてるクルエラお婆ちゃんが応える。三角メガネが湯気で真っ白だ。

  


「ぶふ~っ、体調不良を理由に『降臨祭』も欠席した不甲斐ないわだし達はもう、連中にどうこう言えた義理じゃないのだワさ~。そうじゃなくって?」


 そういえば太っちょのミモザお婆ちゃんは、旅館経営とかにそれほど否定的じゃないみたいな印象だったよねー? 四人の中でも案外アタマ柔らかい方なのかな、ハジメチンのことは許せないけども。



「あらあら、シーラちゃん久しぶりねぇ! 結婚したって聞いたわぁ。よかったねぇ。ん~、そのお人形さんはなんなのだわぁ?」


「すーざん」


 長い白髪をまとめたエマお婆ちゃんと、言わずと知れたヤマダさんの嫁シーラさま。おっかないお婆ちゃん達にも物怖じせず、一緒に入浴中だったりする。

 ここからだと魅惑の幼女ボディが角度的に見えないけど、ハジメチンの遺品「ハニワっぽい人形」を湯船に持ち込んでゴキゲンみたいだ。



「はっ!! 『降臨祭』のことを言ってこないのはロッド坊なりの駆け引きだろうさね! 肝心な時に領地に引きこもって関わり合いを避けたアタシ達は、ただ卑怯で口うるさいだけの老人だろうさね!」


「あの絶望的な状況から教団が持ち直したのは、やはり異世界人……殊に教祖タナカの活躍によるところが大きいと聞くざます。もっとも、非公式に英雄ナタリアが動いたとも漏れ聞こえてきているざますが、真偽のほどは判りかねるざます」


「ぶふう、そういやもう一人、メイプルって女は何者だワいな? わだしゃ、てっきりオーク病患者かと思って肝が冷えただワさ」



「あらまあ、よろしくねぇスーザンちゃん。わたくしはエマよぉ」


「よろしく、えまちゃん!」



「どっちにしろ、もうアタシ等が出る幕じゃないってことかね――ってエマ、さっきから……誰だいそのおちびちゃんは、親は一緒じゃないのかい?」


「いやねぇ、ラケシスさんたら。シーラちゃんよぉ、忘れちゃったのぉ?」



「シーラちゃんってアンタ、あの子が何歳いくつになると……」


「でも、確かに小さい頃のシーラ様にそっくりざますねえ…………あ……!」


「ぶふぅ……、似すぎだワいな…………”娘”……ってことかいな……」



「あらまあ、異世界日本で”あにめ”を観たの? すごいわぁ! ”あにめ”ってなあに?」


 日本で観た女児向けアニメの変身ヒロインについてエマお婆ちゃんに熱く語るシーラさま。――うん。まったく伝わってなさそう。

 確かシーラさま、元々は三四歳だったっけ? でも今は、ぼくのスキル【状態異常治療】で見た目四歳の幼女になっちゃってるから、モルガーナ公爵様達が勘違いするのも仕方ないんだよね。

 でもなぜか、エマお婆ちゃんだけはシーラさまをシーラさま本人と疑ってないみたいだ。


 そんな、どこかちぐはぐな二人を、痛ましそうに見つめるラケシスお婆ちゃん。



「……しかし、あてが外れちまったねえ、シーラ様のスキルならエマを治せるんじゃないかって一縷いちるの望みに賭けたんだが……」


「年齢を重ねれば、誰もが至る道ざます。わたくし達四人、たまたまエマが最初だったというだけざます。そもそも、かのやまいにスキル【再生】が効くのかどうか――、わたくしとしては過度な期待はしないほうがよいのではないかと思うざます」


「ぶふぅ……、それにしたってね、思い出が消えてくのをただ見送ることしかできないんじゃあ、哀しいだワね」



「この温泉に、噂どおり”若返り”やら”老化防止”の効能があるなんてことは望むべくもないだろうねえ」


「わたくし達はここの温泉には昔から何度も浸かっているざます。それこそ、今更ざます。……もしも”若返り”などという奇跡があったとするなら、それはやはり亡くなった教祖タナカの用いたスキルであったのではないかと……。つくづく、教祖タナカの死が悔やまれるざます」


「ぶふ~っ、ハナタレのオギノスめが……! 踏み潰してやりたいのだワさ!」


 どうやら、ちょっとボケが始まっているらしいエマお婆ちゃん、他のお婆ちゃん達が第二王子をクソミソにののしっててもそんなことは気にした風もなく、シーラさまとキャッキャと楽しそうにしている。「認知症」っていうんだっけ?

 

 一口に「認知症」って言っても種類があってだな――とか、ナカジマ氏がまたどうでもいいうんちくを語ってるけど、結局のところどうなの?



「ふむ。おそらくだが、タナカ氏のスキルなら認知症も治せるんじゃないか?」


 ――とのことなので、そろそろお風呂に乱入しようかな。ハジメチンの弔い合戦だ!





「……おいアマネ、無防備な露天風呂で警戒はもっともだが、いい加減その辺にして湯に浸かれ!!」


「オホホ……目の届く周囲と空と、わたくしのスキル【俯瞰ふかん視点】、【熱探知】に不審な影、なしざます」


「ぶふ~っ、手足が凍えていては、いざというときに動きが鈍るだワよ?」



「はっ――いえ、わたしには【環境適応】のスキルがありますので……」


「……? アマネ、どうかしたか!? 何かあるのかい?」



「……実は、先程からいくら呼びかけてもライティの心の声が聞こえないのです」


「久しぶりの遠出、ドラゴンといえども疲れて寝てしまったざましょ?」


「ぶふぅ、ボスオーク十数体とデザートにさっきのダンサーまで食べたのだから、大食いのあの子でもさすがにお腹いっぱいで眠くなるのも無理ないだワさ! 眠ってたって呼べば来る――んな!?」





 ――ズ、ズスーン!!!!

 露天風呂に開いたナカジマ氏の【アイテムボックス】から、巨大ドラゴンの生首がズスーン! と落っこちた。ついさっき、ヤマダさんが切ってきた切りたてほやほやだ。



「なっ……!!?」

「ざますっ!!?」

「ぶふーっ!!?」

「あらまあ!?」


「ラ、ライティ……!!?」


 しめしめビックリしてる。とばっちりの巨大ドラゴン「ライティ」はちょっとかわいそうだけど、ハジメチンを食べちゃったから殺処分はしょうがないよね?

 

 ちなみにぼくらは今、次元の隙間にいる。シーラさまが持ち込んだ「ハニワっぽい人形」に開いている小さい三角窓から露天風呂の様子を見たり聞いたりしている。ヤマダさんのスキル【超次元三角】だ。





「どうもー。『紳士同盟』です! はいはい、混浴失礼、失礼~!」

 

 ヤマダさんが開いた大きめの三角窓をくぐって、ぼく、ヤマダさん、ナカジマ氏の三人組は露天風呂に突入した。


 巨大ドラゴンの生首に気をとられているお婆ちゃん達の隙をついて、ナカジマ氏が【空間転移】でシーラさまをいつもの教祖専用風呂へと避難させる。ここから先は、エログロ注意だかんね。



「おのれぃ、便所虫どもが……!! わたしのライティ……ライティを、よくもこんな目にっ……許さん!! 絶対に許さんぞおぉぉぉぉっ!!」


 ひゃー、コ、コワい……! 激昂するアマネさんの手の中に柄の長い大斧が出現する。ハルバードってやつかな?


 ――ギョリィィン!!

 空気を切り裂く強烈な一撃を、ヤマダさんの『ガリアンソード』が受け流した……ように見えたんだけど?



「いでででっ!!?」


「――【衝撃付与】!! ドラゴンライダー・アマネの槍斧は、回避不能!! 死ねぇぇぇ!!」


 ――ギリィィン!! ギリリィィン!!

 アマネさんの暴風のような連続攻撃を受ける度に、ヤマダさんにダメージが入る。ああいう範囲攻撃っぽいやつは、ヤマダさんが苦手なやつだね。

 いででっ!! とか連呼しているヤマダさんをスキル【肉体治療】で回復するぼく。



「真面目にやってよヤマダさん、死んじゃうよ?」


「そんなこと言ったって、難しいんだぞ!?」

 

 アマネさんぐらいの実力者を殺さないように無力化するのは難しい。ヤマダさんが言ってるのは、多分そういうことだと思う。



「でもその心配は無用だよ、ぼくがいるからね」


「……それもそうか」


 

「なっ……なにいっ!!?」

 


 ヤマダさんが超スピードで距離を詰める。スキル【遅滞】を使ったと見たよ。


 ――ジュパッ!! ジュシュッ!!

 下段から振り上げる一撃! 続けて振り下ろす一撃!



「ヤマダ流、草刈り連斬……!」


「うぐぅっ!!?」


 ポロリと落ちるアマネさんの切断された両腕の肘から先。


 ついでに、身体に巻いていたタオルがはらりと落ちた。寒空に晒されるアマネさんの控え目なおっぱいと割れた腹筋、幼女みたいなツルツルお股! ――ウヘへ、両腕がなくては隠しようもないですな~?

 

 そんなアマネさんを庇うように、巨大なタワーシールドを構えたラケシスお婆ちゃんがドン! と立ち塞がった。ぶー邪魔だなー。



「おうおうおう!! うちのライティとアマネによくもやってくれたねえ!? 汚らしいクソ虫どもがっ!! ラケシス・モリ・モルガーナの名において、アタシの目の届く全てを焼き払い滅菌焼却してやんよ!! ――アンタ達、二十秒稼いどくれ!!」


 タワーシールドで防御を固めつつ、高価そうな杖を天に掲げるラケシスお婆ちゃん。どうやら、なんか大魔法の準備を始めたらしいけど、せっかくリニューアルしたばかりの大露天風呂でそういうのはご遠慮願いたいんですけどお客様ー!?



「――スキル【照準】、狙イ撃ツざます!!」

「ぶふぅ!! 来るのだワ~、わだしの眷属けんぞく達よ!!」


 湯船から出た全裸のクルエラお婆ちゃんが、魔法【石礫いしつぶて】を連射する!

 同じく全裸のミモザお婆ちゃんが【眷属召喚】! 緑色の肌をした女魔十数体が床からニョキニョキ生えてくる。すごく森の精霊ドリアードっぽい。多分、ドリアードだ! 全裸だ!


 だけど、なんてこったー! 「不思議な湯気」が、ドリアードちゃん達のおっぱいや股間を隠してるんですけどー!? つーか、どうでもいいけど、お婆ちゃん達のおっぱいや股間まで「不思議な湯気」がなんか隠しているよー!? どうでもいいけどー!



「あらあら、まあまあ、イヤラシイわぁ! スキル【スモークシールド】で恥じらいをひとつまみ」


 むむむ、あの「不思議な湯気」は、エマお婆ちゃんのスキルだったらしい。ちょっとボケてても、スキルは健在かー。


あ、ヤマダさんが凄いテンパってる。クルエラお婆ちゃんやドリアードちゃん達からの魔法攻撃雨あられをまるでアニメの主人公様みたいにかわしたり受け流したりしてるけど、だんだんキツくなってきてるみたいだ。

 さっさと前に出てヌプっとやっちゃえばいいのに、お年寄りとか女の子と戦いたくねーなーとか思ってそう。どうせヤマダさんのことだから、きっと一旦空に逃げたりして問題を先送りにしようとするんだろうな。――あれ? でもそうすると、残されるぼくが危なくなーい?


 そうこうしてる間に、ラケシスお婆ちゃんの掲げた杖の先に巨大な火球が完成しつつあった。

 ……って、それ、【プロミネンス】とかいう上級魔法じゃないの!? あの破天荒なラダ様にして、人に向けて撃ったらダメなやつと言わしめたー!? ヤバイよ、ヤバイよ!!



「原始、女は太陽だった!! 産むも増やすもはぐくむもアタシら女次第、オスどもは黙ってかしずき、貢ぎ、奉仕してりゃいいのさ!! 立場もわきまえず、女に手をあげるようなクソ虫はっ存在する価値も意味もないのさ!! 食らいな、【プロミ――ぬぅ、うげぇぇ!!? な……なんじゃこりゃあ!!?」

「ラ、ラケシス様ーっ!! ぐうっ!!?」


 ――だばだばだばだばばばぁ~~~!!

 間一髪、頭上から降り注いだ大量のヌメヌメした「物体」にラケシスお婆ちゃんとアマネさんは埋もれて、ヤバイ魔法は放たれる寸前で消失した。たぶん、潰れて死んだりはしてないでしょ? ――で、あのヌメヌメした「物体」が何かっていうと、ナカジマ氏が【アイテムボックス】から放出した巨大ドラゴンの臓物ぞうもつだったりする。



「危ないじゃないかヤマダさん、真面目にやらないと死んでしまうぞ?」


「そんなこと言ったって、ドリアードさん達には罪はないっていうか愛らしいっていうか、見えそうで見えないっていうかさ……」


「遅いよー、ナカジマ氏――って、オルフェさんとアンソニー君まで連れてきたの?」


 シーラさまを送って行ったきりなかなか戻って来ないと思っていたら、二人とお手々繋いでご登場だよ、ナカジマ氏ときたら。



「ラ、ラケシス姉様! アマネさん! ……あんた方、やってくれたざますね!?」

「ぶふ~っ!! 許さないだワよ~!! 眷属達よ、もっと来るだワさ!!」

 

「あらあら、まあまあ、なんだか美味しそうねぇ」


 ――確かに。ナカジマ氏のせいで、温泉がモツ鍋みたいだよ。

 でも別に、鍋パーティーがしたかったわけじゃないんだよね。



「チェックメイトだ……!」





「ぶはっ……!」

「ぶほっ……!!」


 ……ぼくの渾身の決めゼリフに吹き出すヤマダさんとナカジマ氏は、大概たいがい失礼だよね?

 でもまあ気を取り直して――、スキル【肉体治療】! か~ら~の~【魂の回帰】! 続けて、発! 動!!





『『『『ブヒィィィッ!!!!』』』』『『『『ブヒィィィッ!!!!』』』』『『『『ブヒィィィッ!!!!』』』』『『『『ブヒィィィッ!!!!』』』』『『『『ブヒィィィッ!!!!』』』』


 ナカジマ氏が温泉にぶちまけた巨大ドラゴンの臓物だけど、それは主に胃袋と小腸だったりする。当然ながら、胃袋と小腸には巨大ドラゴンが最近食べたウンコになる前の残骸が詰まっている。

 ぼくはその残骸をスキル【肉体治療】で復元し、【魂の回帰】で一度肉体から離れた魂をあるべき場所、復元された肉体に戻したというわけ。



『『『『ブヒィィィッ!!!!』』』』『『『『ブヒィィィッ!!!!』』』』『『『『ブヒィィィッ!!!!』』』』『『『『ブヒィィィッ!!!!』』』』『『『『ブヒィィィッ!!!!』』』』



 巨大ドラゴン、ライティのエサは主にオークだから、温泉に復活したオークが次々と出現していく。

 あの巨大ドラゴン、大食いだったみたいだからね。多分、三十体ぐらい?



『『『『ブヒィィィッ!!!!』』』』『『『『ブヒィィィッ!!!!』』』』『『『『ブヒィィィッ!!!!』』』』『『『『ブヒィィィッ!!!!』』』』『『『『ブヒィィィッ!!!!』』』』『『『『ブヒィィィッ!!!!』』』』『『『『ブヒィィィッ!!!!』』』』『『『『ブヒィィィッ!!!!』』』』『『『『ブヒィィィッ!!!!』』』』『『『『ブヒィィィッ!!!!』』』』『『『『ブヒィィィッ!!!!』』』』『『『『ブヒィィィッ!!!!』』』』『『『『ブヒィィィッ!!!!』』』』



 ……あっれー? ちょっと多くない? 五十、六十体? 大露天風呂が、オークで満員になってしまいそうだよ。



「ぎゃぁ~!? なんざます!? なんなんざます!!?」

「ブブっ!!? ブ、ブタどもが~、近寄るんじゃないだワよ!! わだしの、ドリアード達に触るんじゃないだワよ~!!」

「あらあら、まあまあ! 乱交パーティーかしら? イヤラシイわぁ」


 女性と見れば見境のないオーク軍団、およそ六十体が全裸のお婆ちゃん達に迫る!

 でもやっぱり、ピチピチのドリアードちゃん達の方が人気みたいだ。

 

 たいして強くないオークとはいえ、この数は驚異だね。至近距離に突然出現したオーク軍団になすすべもなく捕まってしまったドリアードちゃん達があちらこちらでヌプっとやられて大乱交!


 おっと、オーク軍団の足下にハジメチン発見! 湯船にぽっかり全裸のおしりが浮かんでいる。巨大ドラゴンのエサにされてしまった彼だけど、ちゃんと復活できたのかな?


 意識のないハジメチンを慌てて回収に向かうアンソニーくん。――彼、なんか顔とか耳とか乳首とか赤いけど……エッ? まさかね。


 

 それはそれとして、ドリアードちゃん達をおとりに後退しつつ魔法攻撃でオーク軍団を殲滅するお婆ちゃん達! でもなかなか数が減らないのは、減った分をぼくがちょいちょい復活させてるからだったりして。てへぺろ!





 やがて、両腕を切り落とされて瀕死のアマネさんと、臓物に押し潰されて気を失ったままのラケシスお婆ちゃんがオークに捕まってしまった! うーん、見たいような見たくないような、この先の展開ー!



「ああっ、ラケシス姉様!! や、止めるざます!! アマネ、アマネ!! 起きて、アマネ!!」

「ぶふっ!! ……こ、降参するのだワ!! 止めさせるの、ああっ――!!」

「あらあら、太いわぁ、イヤラシイわぁ」


 その太いのがアマネさんにねじ込まれる直前に、オルフェさんの剣がオークの首を切り飛ばした。ほぼ同時に、ラケシスお婆ちゃんに突っ込もうとしていた方のオークを、太いそれごと真っ二つにするヤマダさん。



「――ぶはっ!! げふっ、げふっ!! ……な、なんだい!? なにがどうなって……!!?」

   

 オークに両脚を抱えられたまま湯船に落っこちたラケシスお婆ちゃんが意識を取り戻した。

 女山賊みたいでおっかないラケシスお婆ちゃんだけど、大量のオークの死骸と混浴していることに気がついて、さすがにギョっとしているみたいだ。



「あー、お目覚めですかー? どうします、まだ戦いますかー?」

 

「……なっ……ぐっ!?」


 ラケシスお婆ちゃんの喉元には、ヤマダさんの『ガリアンソード』が突き付けられている。

 瀕死のアマネさんは、オルフェさんに背後から押さえ込まれている。



「ブタがぁ、よ、寄るんじゃないざます!! ひぃぃ、や、やめて――っ!!」

「ぶひっ!!? こいつら、倒しても倒しても……もうっ、降参するって言ってのだワよーっ!!」

「あらあら、凄いわぁ! ご立派ねぇ!」

 

 いつの間にか今度は、クルエラお婆ちゃん達三人がオーク軍団に囲まれて追い詰められていた! これはうーん、イマイチわくわくしないなぁ~。

 

 でも念のため、たった今減ったオークを追加しておこうかな。

 ほい、スキル【肉体治療】からの~【魂の回帰】っと。  



「ば、ばかな……、アンタ今、首の無いオークを回復……いや、まさか蘇生させたのかい!? そんなでたらめなスキル、あるはずが……」

  

「えっと、あっちのミモザ様とかは、もう降参するって言ってますけどー? つーか、ぼくとしては初めっからオトナの話し合いをしたいっていうかー?」



「お、あった。――ヤマダさん、このハニワっぽいやつ、置いてきちゃったってシーラさまがブーたれてたぞ」


「まじか、シーラさま。気に入ったんかな? スーザン人形」



「ちっ、異世界人め……つまり、アンタが教祖タナカってことかい……!! 生きてたとはね!!」


「ぼくの名前はムラサメ・リュウセイ! 異世界の【料理人】さー」



「くはっ、くははっ!! そうくるかい、生意気な異世界人が!! ……だがまあ、あんなもん見せられた後じゃ、アンタたらの事情も察するさね。――ふん!! 気にくわないが、そのオトナの話し合いってやつをしようじゃないか!! アタシらの負けだよ……!!」


 ラケシスお婆ちゃんの敗北宣言にぼくがうなずくと、ヤマダさんとナカジマ氏が残ったオーク二十数体の殲滅にとりかかる。それほど時間もかからずに終わると思う。

 ――ふう、やれやれだ。

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