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415 『ヒロイン達の事情~毎度お馴染み「ターメリック倶楽部」①~』

 「護国祭」最終日に華やぐ王都歓楽街。表通りの喧噪けんそうから外れた寂しい路地の奥の奥に、知る人ぞ知るショーパブ『ターメリック倶楽部クラブ』はあった。


 あえて人を拒むような立地も店構えも相まって普段ならほとんど客のいない店内に、今夜だけは常連客以外の客も来店し今年一番の賑わいを見せている。


 なぜなら今夜は大晦日おおみそか――言い換えるなら、一年の「ケツの日」であるから!





(……なんで!? なんで私がこんな目に……!?)


 薄暗い店内の小さな舞台にしつらえられた壁一面の大鏡。白い小さなビキニと目元を隠すマスクだけを身に付けた四人の美女達は、その大鏡に両手を付いて、ひたすら左右に尻を振り続けていた。

 客席から見て左から二番目の一番小さく引き締まった尻の彼女、ダゴヌウィッチシスターズの「とがめ」担当チハヤ・ボンアトレーは、その夜何度目かの問いかけを心の中で繰り返す、「なんで!? なんで私がこんな目に……!?」と。

 

 なぜ誇り高き「悪役令嬢」チハヤがそんな舞台に立っているのか? 時間は少しさかのぼる。




 ***




 三日前、旅館『玉月たまつき』モガリア道場支店の宴会場で踊ったのを最後にチハヤは、リーダーのデイジーにダゴヌウィッチシスターズからの一時脱退を申し出た。

 シスターズの「とがめ」担当、悪役令嬢チハヤとして、スターダムを駆け上がる可能性と手応えを感じ始めていた彼女だったが、英雄ナタリアの格の違うダンスパフォーマンスに打ちのめされ、また宴席にゲヘヘと醜く笑う憎らしいヤマダの姿を見つけて、本来の自分の目的が「勇者になること」であったことをはたと思い出したのだ。


 デイジーから、「シスターズのとがめ担当はあなたしか有り得ないもの、いつでも帰ってきてね? わたくしも、ファンのブタ野郎どももずっと待ってますから」と見送られ、後ろ髪を引かれつつも旅館『玉月』モガリア道場支店を後にするチハヤ。


 短い活動期間ではあったが、何度かの握手会で【エナジーアブソーブ】――触れた相手の記憶や経験値を吸い取り自分の物とする――を繰り返し、チハヤのレベルは29から38まで上昇していた。レベル32では有用なスキルも手に入れた。勇者選考会の始まる来月下旬までの期間に新しいスキルを習熟しつつ大迷宮で修行を重ねレベル40を目指したいと意気込んでいた。


 かくして一人王都に帰還したチハヤ、通い慣れた大迷宮とはいえ必要最小限の準備は必要であろうと、先ずは学園の宿舎を目指す。

 

 「護国祭」で賑わう王都、メインストリートに立ち並んだ出店でみせから漂う食欲を刺激する香りや珍しい楽器の奏でる陽気なメロディーがチハヤを誘うが脇目も振らず先を急ぐ。



軟弱なんじゃくな心は踏み潰せ、今は勇者になることこそ私のすべて!)


 しかし、ふと目に入ったオープンカフェに後輩の女生徒3人と男子生徒3人が楽しそうに語らう姿を見つけて思わず立ち尽くす。



(楽しそう……だと? 惰弱だじゃくな! 立ち止まるなチハヤ、私の青春は走り続けること、勝利へ向かって!)


 パチン! と自らの両頬を張り活を入れるチハヤ。

 決意も新たにまた一歩踏み出そうとしたその時、細い路地から髪の長い痩せた男が彼女を呼び止めた。





 王都に蔓延しつつある「中毒性のある粉薬」、その猛威は王城の中、国王マグナスの身体をも既にむしばんでいた。

 それを持ち込んだのが国王の一番新しい側室、エルフのロレッタであることは簡単に判明した。周囲の者達はロレッタを反逆の意思ありとして捕縛しようとしたが、「このクスリは毒ではありません。王様にキモチイイ夢をご覧になって頂くためのモノ」と返され、国王も「そのとおりだ」と彼女を庇ったため無理矢理投獄することも、クスリを止めさせることもできずにいた。


 それでもどうにかロレッタを国王から遠ざけようと周囲の者達が画策するが、王自身がそれを許さず、常に彼女を傍らに連れて歩くようになった。国王はロレッタを、いつしか「ナタリア殿」と呼ぶようになっていた。

 ロレッタと英雄ナタリアは、銀髪とエルフであるということ以外さほど似ていなかったが、「中毒性のある粉薬」に蝕まれた国王マグナスの目には、ロレッタの姿が少年時代から憧れたナタリアの姿に映っているようだった。


 髪の長い痩せた男、パラディン№8ロハン・ジャヤコディは、ロレッタの背後関係を調査していた。ロレッタが王城に入った時には持っていなかったはずの「中毒性のある粉薬」をどこで手に入れたのか? 彼女が手持ちのクスリを使い切れば、それを補充するために何者かと接触するはずと、彼は王城に潜入し監視を続けていた。





「おっと、ロレッタちゃんが出かける準備を始めたようでっせ? どうりで今夜は早めにおっぱじめると思ったんよ。チハヤちゃんも準備しといてくれや」


 メイド姿のチハヤのエプロンのポケットで、髪の長い小人が言った。


 髪の長い小人、パラディン№8ロハン・ジャヤコディのスキルは【分裂】である。身体の肉をむしり取り、小さなもう一体の自分を作り出す。最大で十二体まで【分裂】できるが、細かく別れるほど、彼は痩せ細ってその分弱くなる。それらの分身体をスキル【多重思考】で同時に操り、相互に情報共有できるので、彼は戦闘よりも諜報活動を得意としていた。

 スキル【分裂】で作り出した髪の長い小人六体は王城の中に隠れ潜み、城外の本体に情報をもたらしていた。その内、国王の寝室を毎晩覗き続けた一体が見た光景から、ロレッタが隠し持つ「中毒性のある粉薬」の在庫が少なくなってきていることを察したジャヤコディは、近い内に彼女がクスリ補充のための行動を起こすと予測した。





「何度も聞くけどジャヤコディさん、本当に予選免除枠があるんですよね? ウソだったらタダじゃおきませんよ?」


 ダゴヌウィッチシスターズとして、神殿騎士やパラディン№9竜人エルマと敵対したこともあり、ネムジア教会とは完全に関係が切れたと思っていたチハヤだったが、昨日パラディン№8ロハン・ジャヤコディに声を掛けられこの話を持ちかけられた。


 最初は何かの罠かといぶかしんだが、話を聞きチハヤはジャヤコディに協力することを決めた。

 城内にメイドとして潜入して、国王を薬漬けにした悪女ロレッタを監視しする。あわよくば彼女に接触する黒幕を、戦闘の苦手なジャヤコディに代わって力ずくで捕らえるという作戦が、チハヤの正義の心を揺さぶったのだ。

 もっとも、ジャヤコディが報酬として提示した、「ネムジア教会が持つ勇者選考会の予選免除枠にチハヤ・ボンアトレーを充てる」という話が、彼女にとって願ってもない好条件であったからというのも否定できない。



「おっとっと、ワイはこれでもパラディン№8でっせ? 見くびって貰っちゃあ困りますがなぁ。情報収集、情報改ざん、ワイの得意分野だっつーの」


「ふん! 黒幕が出てきたらゴツンとやってしまい――で、いいですよね?」



「そらまあそうやけど、殺さんといてや? それと当たり前のことやけど、黒幕が接触してくるまではくれぐれも見つからんようにな? 短気はあかんで――って、ややや? どうやらあの女、バルコニーに出るみたいでっせ!? チハヤちゃん、外から上手いこと回り込めるん!?」


 国王の寝室に潜んでいるジャヤコディの分身体、髪の長い小人が見ているリアルタイムの情報を、チハヤのポケットの中の髪の長い小人が伝える。



「バルコニーに!? 外に誰かいるってこと!?」


「いいやちゃう――げげっ、こらあかん! なんやあの羽根? 飛ぶんかぃ? ……飛びよった!!」

 

 エプロンから髪の長い小人をつかみ出し、城内の廊下を早足で歩くチハヤ。

 突き当たりの窓を夜空に向かって開け放つと、冷たい風が彼女の頬をなでた。



「ロレッタが飛んだの!?」


「こらあかん、まさか直接街までクスリを仕入れに行くつもりでっか? 想定外やん。追っかけられまっか、チハヤちゃん?」



「追います」


「せやなぁ、さすがに空飛ぶんは無理やろな――って、追うんかい!?」


 そう言ってメイド服を脱ぎ捨てるチハヤ。下には薄いレザーアーマーを着込んでいる。

 窓枠を乗り越えるとチハヤは、王都の夜空へと一歩踏み出した。

 ――スキル【空中歩行】、チハヤがレベル32で新たに取得したスキルである。





 後から思えば、あの時に追うのを止めておけばよかったとチハヤは後悔する。

 なまじ新しいスキルが【空中歩行】であったばかりに、彼女はロレッタの後を追うことができてしまった。

 

 「護国祭」最終日で華やぐ夜の王都を見下ろし、コウモリのような羽根を羽ばたかせて飛ぶロレッタ。

 彼女に感づかれないよう屋根から屋根へと身を潜めてチハヤは尾行を続けた。



 やがてロレッタは、人目を避けて歓楽街の外れに降り立つ。いつの間にか、目元を隠す怪しいマスクを着けていた。

 寂しい路地を抜けて奥へ奥へと進み、怪しげな店にたどり着くと、慣れた様子で裏口から入店するロレッタ。汚れた看板には、『ターメリック倶楽部』とあった。


 ロレッタが黒幕と接触するとしたら店の中だろう。しかし、このまま後を追って裏口から入店するのはどう考えてもまずい。

 チハヤが迷っていると、ジャヤコディの本体が息を切らせて駆けつけた。



「遅いです!」


「ふぅーふぅー、そんな無茶言わんといてや」





 到着して早々チハヤに急かされて、ジャヤコディは手のひらサイズの分身体二体を偵察に放った、店の正面入口と裏口へ。



「あの女は、居ましたか?」


「店内には見当たらんなあ……裏口の方は――ふぎゃっ!? あかん、見つかってもうた」



「はぁ!? 見つからんといてって言ったのはジャヤコディさんじゃないですか、どうするんです!?」


「あ、いや、ネコに見つかってもうた……食われとるワイ」


 ジャヤコディのスキル【分裂】で作り出す分身体の大きさはある程度調節できるが、大き過ぎれば見つかり易くなってしまうし、小さ過ぎればネコよりも弱かった。





 ちょうどその時、狭い路地を抜けて冒険者風の娘が一人姿を現した。背格好、年頃はチハヤとそれほど変わらない。ボーイッシュなショートカットがよく似合う、素朴な雰囲気の美少女だった。


 人目を避けるように店の裏口へと向かう彼女が、腰のポーチから取り出した目元を隠すマスクを見て、チハヤは躊躇ちゅうちょせずに飛び出した。

 

 ――スキル【加速】、チハヤがレベル8で最初に取得した最も使い慣れたスキルである。

 一気に距離を詰めたチハヤは、ショートカットの美少女を背後からしたたかに殴って昏倒こんとうさせた。




 ***



 

 今になって思えば、この時にマスクの強奪などしなければよかったとチハヤは後悔する。

 なまじ【加速】などというスキルがあったばかりに、手際よくショートカットの美少女を昏倒させて、奪ったマスクを身に付け店の裏口へと潜入できてしまった。


 そのせいで今、チハヤはきわどいビキニを着せられて、舞台の上で客に向かって尻を振っている。



(……落ち着け私。こんな水着なんて、ダゴヌウィッチシスターズの衣装と大差ない。そんなことより落ち着いて、今の状況を見極めるんだ)


 店の裏口は楽屋へと通じていた。

 待ち構えていたエルフのスタッフに、有無を言わさず着ていた服を剥ぎ取られ、小さな水着を着せられたチハヤ。何が何やら解らない内に、舞台へと上げられてしまった。


 スタッフから伝えられたルールは二つ。両手を鏡から離さないこと、音楽に合わせて尻を左右に振り続けること。

 


 やろうと思えば力ずくでスタッフを振り払い逃げ出すこともできただろう。しかしチハヤがそれをしなかったのは――左隣に、彼女と同じようにきわどい水着を身に着けて、両手を鏡に付き客席に尻を振る悪女ロレッタがいたからである。



(この女、王の側室のくせに、こっそり城を抜け出してこんなところで何やってるの? 黒幕と接触して「中毒性のある粉薬」とやらを受け取るんじゃなかったの? ――いや、ここの客の中に黒幕がいるってこと?)


 鏡越しに薄暗い店内を見回すチハヤ。店の奥で小さく手を振るジャヤコディと目が合った。



(――な!? くそっ、ロン毛オヤジが、こっち見んな!! くそっくそっ、屈辱で涙がこぼれそうだ……くそっ!!)


 ぐすん……と、切なく鼻をすする声がした。見れば、右隣でチハヤと同じように鏡に手を付いて尻を振っている女が泣きべそをかいていた。



「えっ!? もしかして、ミズキさん……ですか?」


「――は!!? いっ……違っ……これはっ…………」


 不意に名を呼ばれビクッとして目を見開いている右隣の女は、ザマ流槍術の師範代にして、ダゴヌウィッチシスターズの「ゆるし」担当ミズキであった。

 たった今まで気がつかなかったのは、目元を隠したマスクのせいもあるが、こんな所に彼女がいるはずがないというチハヤの思い込みのせいもあるだろう。


 なぜこんな所に? と、重ねて聞こうとするチハヤだったが、それを言わせまいと先に口を開いたのはミズキの方だった。



「ま、待ってくれ! 私のことを知っている方だとお見受けするが、どうか今夜ここで私と会ったことは忘れて欲しい! どうか、頼む……」


 妙な言い回しではあったが、忘れて欲しいというミズキの気持ちはチハヤにも痛いほど解った。

 きっと何か事情があるのだろう……いや、それは自分も同じことだったと、チハヤはそれ以上何も聞けなくなった。

 

 それにしても、何の因果かダゴヌウィッチシスターズのメンバーが二人も揃ってしまった。ひょっとしてミズキの更に右隣に居る女も知り合いだったりしたらイヤだな……と、そっと横目で覗き見るチハヤだったが、よくよく目をこらしてみてもそこに居たのは、やたら派手なマスクで目元を隠した見知らぬ金髪縦ロールの女だった。


 そうそう知り合いばかりとこんな所で出会うはずないかと、少しだけ安堵あんどするチハヤ。音楽に合わせて尻をひたすら左右に降り続けることに没頭ぼっとうしていく。







「ナイスヒップ! 吾輩、どちらかというと尻派でしてな」


 店内のテーブル席から初老の男が声をかけた。

 その男の顔を知る者がいれば驚愕きょうがくしたことだろう。なぜなら男は、およそ二ヶ月前、第二王子の反乱で命を落としたはずの第一王子イグナスであったから。



「お、おい……何だよこの店? ぼ、ぼくがこういう下品なの嫌いだって、アマミヤだって、し、知ってるだ、ろ? 個室はないの……?」


「ナイスヒーップ! ――まあまあ、そう言うなって、イノハラ君よ。ブルースさんが言うにはさ、殿下は月末、高確率でこの店に出没するらしいよ。なんでも、ここのオーナーなんだってさ」


 イグナスと同じテーブルを囲む二人、骸骨仮面で顔を隠した青年は『人形の勇者』イノハラ・カゲキ。もう一人、軽薄そうな茶髪の青年は『本の勇者』アマミヤ・ヒカルである。



「天才と呼ばれた叔父上おじうえはどこか近寄りがたく、生前あまり言葉を交わすこともありませなんだが、死した今ならばこそ、立場もしがらみも忘れて旨い酒が飲めるやも知れませぬ……ミズキ殿の尻などさかなに」


 イグナスは、『人形の勇者』イノハラのスキル【死体操作】で、動く死体「屍人しびと」となった。生前の記憶を持ちながら、イノハラの忠実なしもべとして、常識にうとい彼の執事のような立場に納まっていた。


 一方同じく彼に従う者として無理矢理舞台に上げられ尻を振っているミズキは「屍人」ではない。レベルと記憶を失い海岸で拾われた彼女は、違法スキル【隷属れいぞく】によって生きたまま命令に絶対服従の奴隷メイドとなっている。


 三日前イノハラ達は、S級冒険者キララ・アーケービィの急襲を受け、ねぐらにしていた海岸沿いの砦を失った。上級魔法【流星】、降り注ぐ星の雨によって、蓄えた財産も「薄い本」の原稿も全て灰燼かいじんとなった。

 着の身着のままで逃げ出した彼等であったが、【空間収納】に数日は食うに困らないだけの金はあった。しかし問題は、数千万Gで特注した印刷機が設計図ごと失われてしまったことだった。印刷機が無ければ今後の出版活動に大きく差し支える。



「ぼ、僕はどうもあの人が信用ならないっていうか……な、なんていうか……、なんかイヤなんだよね。人を見下してる感じがさ……」


「そんなこと言ったって、スポンサーになってくれそうな人、ジーナス殿下以外に誰か居たっけ? それとも久しぶりに潜るかい、ダンジョン? ちょっと気が進まないなぁー」


「はて、あの叔父上が担保も無しに金を出してくれますかな?」



「担保……か……そ、そうじゃなくても、何かしろ……とか、む、無理難題ふっかけてきたり……あの人なら、有りそう」


「それなんだけどさ、あそこでお尻ふってる人でよくない?」


「ほほぅ! なるほどミズキ殿ならば申し分ありませぬな、金額にもよりますが」 



「ちょっ……ちょっと待ってよ、ミズキさんは、ぼ、僕のメイドだぜ!? 勝手に話、進めないで、よ!?」


「へー、意外な反応――。イノハラ、キミってロリコンだったろ?」


「ふむ、ミズキ殿は熟れたオトナの女でありますな」



「そ、そういうんじゃなくて……ただ、な、なんて言うか……かわいそう、だろ……!?」


「……!?」

「……!?」


 舞台の上で尻を振らせるのはかわいそうじゃないのか? と思うアマミヤとイグナスだった。



「な、なに……?」 


「いや、分かったよ。最悪、ダンジョンでもしゃーない――そんなことより、うどん食おうぜ、うどん! ブルースさんが言うには、店長の手打ちシコシコ麺が有名なんだってさ」


「おお、年越しうどんでありますか! 来年も太く長くありたいものですな」



「……そば、じゃなくて?」


「うちの地元じゃうどんだったよ、イグナス君のところは?」


「そばも嫌いではありませぬが、王宮の習わしで、大晦日には年越しうどんを食するのが通例でしたな」





 店内の音楽が変わり、舞台に黒メガネの中年男性が登場する。

 彼こそがこの店の店長、ミスター・ターメリックである。



『毎度お馴染み、マニアのショーパブ「ターメリック倶楽部」でございます』

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