411 『ワクテカ! ドッペルゲンガー㉕』
ぷよんと大きい尻、きゅっと引き締まった尻、つるんと小さい尻、恥ずかしそうに尻尾で割れ目を隠そうとする尻。
魔法【浮灯】が四つの生尻を照らし出す。
『ふむふむ、ど〜れ〜にしようかのぉ~くっくっくっ……!』
魔王の胃袋の中に現れた全裸の男――人間サイズの魔王ジーナスは、心底嬉しそうに目の前に並んだ生尻を見比べる。
最初に、大きい尻をむにゅっとわしづかみにした。
ひぃっと、悲痛な声を上げる”妹系美少女”アーリィちゃん。ぷるるん! 合法ロリ巨乳。
続けて、引き締まった尻をペチペチと叩く。
しかし、呆けていて反応の薄い”長身アスリート風美女”。彼女は、レナスちゃんというらしい。
次に、小さい尻をぺろんと撫でる。
ぎりりと奥歯を噛むパラディン№10のマルク君。
……? 男の尻とか、いらなくね?
最後に残ったパラディン№9エルマさんの尻尾を持ち上げて、肛門に指を突き挿し、抜いた指先の臭いを嗅ぐ。
「くっ、うぐっ……なぜっ!? 【ドラゴンフィールド】が使えない……だと……!?」
『スンスン……おお臭い臭い、のう? くっくっくっ……!』
胃袋の肉壁から無数に生えた「魔王の尻尾」に四肢を拘束されたエルマさん達四人は、操り人形のように吊るし上げられ、魔王ジーナスにヤリたいほうだい生尻をもてあそばれ続けている。
そんな様子をおれは、オナモミ妖精の視覚を通して覗き見ていた。
まさかあのおっさん、本気でウンコをすするつもりなのか? マジか? 続きを見たいような見たくないような……どうかせめて、マルク君以外で頼む!
(おおィ! ちび女は、オレサマのだぞ~!! ウンコだってオレサマのだぞ~!!)
どうやらオナモミ妖精は、ちび女ことアーリィちゃんのウンコをすすりたいらしい。
『ふうむ、やはり一番反応の良さそうな”大きい尻”に決めようかのぉ、くっくっくっ……のぉ?』
(おいィィィ~~~!!)
「――ま、待ってくれ!!」
オナモミ妖精とほぼ同時に反応したのは、マルク君だった。
『むぅ、魔王たる吾輩に進言するなら相応の覚悟をせよ?』
「お、俺で良くないか……?」
そう言って、マルク君は男のくせにつるんとキレイな生尻をくねらせた。
――いやいやいや、いくらなんでもそれは無理があるんじゃ……ん? 七色のリングがマルク君の頭上に浮かびあがる。同時に、なんだか神々しく輝くマルク君の白い素肌、艶めく髪、潤んだ瞳、妖しい唇、背中の白い翼も美しい……え? え? え? 待って、おれのポコチンが反応している? う、うそ……そんなバカな……これはナニかの間違いだ……!?
ほう……と、魔王ジーナスが感嘆の声を漏らした。見渡せば、アーリィちゃん、エルマさん、呆けていたレナスちゃんまでもが頬を赤らめている。
『……ふむ、良かろう! 衆道は王族のたしなみ。実のところ吾輩は、美少年もイケる口での――』
マルク君の手と足と白い翼が「魔王の尻尾」で八方に引っ張り上げられ、魔王ジーナスの前に彼の肛門が捧げられた。
そうなると必然的にマルク君の真正面はアーリィちゃん達にさらされ、更にもう一本の「魔王の尻尾」に巻き付かれ絞り上げられると、彼女達が見守る前でムクムクと硬くとがった。
「後生だ……見ないで……くれ……」
『くっくっ……、せっかくの晴れ舞台であろう? さあ皆の者、もっと近う寄って見るがいい! ――さて、行くぞ?』
――ぬぶ、ぬぶぶ……ぬぶぶぶ……!!
ジーナスの股下から生えた「魔王の尻尾」が、マルク君の肛門を無理矢理押し広げ侵入していく。
「は……ッ、ぐぁ――ッ!!」
『ぬ、おっ、これは、なかなか――』
「あはぁ……あはぁ……ん、んんっ!!」
『さあさあ皆の者どうした? 少年の前の方が寂しそうであるぞ? ホレ、どうしたどうした?』
そう言ってジーナスは、「魔王の尻尾」に拘束されたアーリィちゃん達をマルク君の正面に近づける。
言われるがまま、レナスちゃんがマルク君の乳首にペロペロと舌を這わせ出した。それを見て、アーリィちゃんも負けじとペロペロ始める。
最後まで抵抗していたエルマさんも、やがてチュバチュバとむさぼりついて夢中になった。
(……なあ、オレサマもペロペロしよっかな……どう思う……?)
『くっくっ……くあーっはっはっはっはっ――!!』
その光景は、まるで一枚の宗教画のようだとおれは思った。
後で知った話だが、マルク君のスキル【天使化】は全耐性と回復力を上昇させるのと同時に、男女問わず惹きつける神秘的な魅力をかもしだすらしい。
そうとも知らずにその時のおれは、男のマルク君に反応してしまったことに焦りつつも、オナモミ妖精の視界を覗くことに夢中になっていた。
びよよーん!
不意にズボンとパンツを下ろされて、おれの下半身が外気にさらされた。
「え? は?」
「ヤマギワさん、作戦の第二幕をシンコウします。魔王ジーナスにスキル【共感覚】を使ってください!」
声に振り向くと、エリナちゃんはルルさんに背後から目隠しをされていた。
……? てことは、おれの足下にいるのはヘルガさんで間違いなさそう。
え!? ヘルガさんがおれのズボンとパンツを下ろしたの?
待って待って――、え!? え!?
え――!!?
落ち着けおれ、先ずは状況を整理しよう。
おれのポコチンは、オナモミ妖精の視界で見た光景によって既に臨戦態勢である。
それを足下でガン見しているヘルガさんの中の人は、おれが七年間一緒に旅をして、プロポーズしてフラれたニセモノのラダさまだ。ちなみに旅の途中、おれとの間に色っぽいイベントはさっぱりなかった。せいぜい、覗きイベントぐらいだ。
さてそれを踏まえて、「魔王の腹の中の生存者救出作戦」第二幕でのおれの役割は、スキル【共感覚】で魔王と五感を共有することである。――おっとイカン、さっさと魔王に【共感覚】しなければ……!
『――お!? おおおお!? ぬおおおおお!!?』
今や、身長70mに達しようかというほど巨大化した魔王ジーナスが、奇妙な声を上げて前屈みになった。
それもそのはず。ヘルガさんが、おれのタマタマをそのキレイなお手々でコロコロともてあそんでいるから、【共感覚】で魔王にも同じ感覚が伝わっているはず。
――お? お? なんだコレ? なんだコレ? どうなってるの? どうなっちゃうの、おれ?
心臓が早鐘を打つ。足が震える。なんだコレ? なんだコレ?
ヘルガさんが、おれの相棒の残念な皮を引き剥き、裏のスジから軒下にまで指を這わせていく。――え? そんなところ、ばっちいよ? ばっちぃよ?
『ぬ、ぬぬぬぬおおおおおう……!!?』
クリスティアさん、オデットさん、イセリアさんの三人組を追い詰めつつあった床面から生えた無数の細い「魔王の尻尾」と、魔王の内股にぶら下がった太い「魔王の尻尾」が一斉に硬くこわばって動きを止める。
……えっとえっと、待ってくれ。考えろ、おれ。
これはどうゆう作戦だっけ? おれはスキル【共感覚】で魔王と五感を共有して――、ルルさんはエリナちゃんの目隠しをして――。
それからそれから、ヘルガさんがおれの下半身をエロエロに……てか、ルルさんとヘルガさんの役割って逆なんじゃ? ……いや、それはいいか、おれ得だからいいか、でもこの先どうなるの? 繰り返すけど、これはどうゆう作戦だっけ?
――んな!? ヘルガさんの細い指が、おれの肛門に侵入してくる。
そして奥の方の、おれの知らない秘密のスイッチに……触れた!!
『んなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
身長およそ70mの魔王は、ひときわ激しく大きく身を震わせる。
ヤツが自身の内股から生えた「魔王の尻尾」を持て余しているのが解った。だって、おれも同じ感覚だったから。
そんな時どうする? 簡単だ、手を使えばいい。普通そうする。
おれだったらそうする。ヘルガさんが見てなかったらそうする。
ああ、もどかしい……。
しかし魔王はたまたまそれを見つけた。
持て余した「魔王の尻尾」を収めるのに非常に都合がいい「穴」を。
それは、”生肉”と化した「地下大空洞」にぽつねんとあった。
パラディン№6ランポウさんがエリートゴーレムとの戦いの中、魔法【掘削】で下の階層まで貫通させたという「穴」が、いい感じで残っていた。
本能のおもむくまま、魔王は「魔王の尻尾」をその「穴」に挿し込んだ。
ジャストフィット! 床に腹ばいになった状態で激しく腰を振る魔王。
――ビタン! ビタン! ビタン! ビタン!
同じ時、胃袋の中の魔王ジーナスも、マルク君のつるんとした尻に激しく腰を打ち付けていた。
一方おれは、近づいてくるヘルガさんの小さな唇を見つめていた。
――ハァハァ……そんなところ、ばっちいよ……? ばっちぃよ……? でもどうか……止めないで……!!
不意にヘルガさんの熱い吐息が、おれの敏感な部分を刺激した。
――アッ!! アアッ――!!
たまらず、おれはヘルガさんの顔面に向かってフリーハンドで発射してしまう。
ガクガクと腰を振るおれ。
ふと視線を感じてそちらを見れば、廃墟の上から大司教ユーシーさんがこちらを見下ろしていた。……でも、止まらないビクンビクン!!
『おおおお、アッ――!!!!』
おれが発射するのと同時に、魔王も下の階層に向かって大量に発射したようだ。
胃袋の中の魔王ジーナスも、マルク君の奥の方にたっぷりとぶちまけたっぽい。
「今でしゅ!!」
スキル【音速】!! クリスティアさんがオデットさんとイセリアさんを抱えて、発射直後「アッ――!」っと開いた魔王の口内、喉の奥に向かって【音速】で突入した!!
亜空間にある魔王の胃袋だが、口から食道を経由すれば容易く侵入できるらしい。
胃袋内に三人組を侵入させることこそが、「魔王の腹の中の生存者救出作戦」第二幕の主たる目的なのだ。
おれは慌ててパンツとズボンを引き上げ、兜のバイザーを下げた。
……顔を見られたか? いや、三十歳女子、ポコチンの方を見ていた可能性もなくはない。
イカンぞ、ユーシーさんの視線を感じる。てかあの人、おれのココロを一方的に読むんだった。マズい……!
(――マズい? 今、マズいって考えました? もしかしてヤマダさんですよね? 婚約者の私を放っておいて、こんな所でいったいナニをヤってるんです!? 返答次第ではこっちにも考えが……)
……全裸! 緊縛! 一晩中! 全裸! 緊縛! 一晩中! 全裸! 緊縛! 一晩中! 全裸! 緊縛! 一晩中! 全裸! 緊縛! 一晩中! 全裸……!
(……きんばく!? ヤマダさんなら、「おっぱい、おっぱい……」と考えるはず――ってことは、ヤマダさんじゃない……?)
……緊縛! 一晩中! 全裸! 緊縛! 一晩中! 全裸! 緊縛! 一晩中! 全裸! 緊縛! 一晩中……なんとか……全裸! 緊縛! 一晩中! 全裸……ごまかせた……緊縛! 一晩中! 全裸! 緊縛……かな……?
「あーあのー、何も見えないのですが、作戦はウマくいってるのでしょうか? あとこの目隠しは、ナゼ必要だったんでしょうか?」
「さあ~? でも侵入は上手くいったみたいですよ。久しぶりに姫さまのテクニックを拝見しましたが、衰え知らずの現役さながらでしたね~」
エリナちゃんの問いかけに、目隠し役のルルさんが答える。
ふーむ……考えれば考えるほど、ルルさんとヘルガさんの役回りって逆じゃない? まあ、おれ得だったから別にいいんだけど。
「わたくしはネムジア教会の大司教ユーシー! あれに見える魔王討伐にどうかご協力ください! ――それから、パラディン№22ヘルガさんは状況を報告なさい! どういうことになっているのか、今すぐに!」
よそ行きの口調で声をかけてくるユーシーさん。傍にパラディン№6のランポウさんもいる。
ハンカチで顔を拭っていたヘルガさんだったが、上司に呼び出されては仕方ないかといった様子で、けだるそうに立ち上がった。
表情の読み取れないヘルガさんに、おれは慌てて声をかける。
「す、すいませんヘルガさん、ひっかけちゃって……あー、あとそれから、おれのことはくれぐれもヤマギワってことでどうかひとつ……」
大丈夫です……と一言、素っ気なく言い残して去って行くヘルガさん。
――ああ、あの唇。もうちょっと我慢できれば、あの唇が直接触れていたかもしれなかったのに……、おれの残念なキカン棒のヤツめ、トホホ……。
おっとイカン、ユーシーさんがこっちを睨んでいる――全裸! 緊縛! 一晩中! 全裸! 緊縛! 一晩中! 全裸! 緊縛! 一晩中! 全裸! 緊縛! 一晩中! 全裸! 緊縛! 一晩中……!
「さあ、いよいよ作戦も最終幕です! ヤマギワさん、胃袋のナカの様子はどうなってますか?」
「……全裸! 緊縛! ああいや違った……いや、違ってなくない。いや、えっと……」
ともかく後は、クリスティアさん達が生存者四名とオナモミ妖精を連れて脱出できれば、作戦は成功だ。
マルク君の肛門は尊い犠牲になってしまったけど、いつかきっと笑って話せる日が来るさ……、多分ね。