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ずっこけ3紳士! はじめての異世界生活~でもなんかループしてね?(ネタばれ)~  作者: 犬者ラッシィ
第七章 3紳士、都会で名をあげるⅡ 僕が先に好きだったのに編 【推奨レベル16~23】
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290 いちばん恐ろしいもの、なーんだ?

「ヤ、ヤマダさん! セクハラは止めてくださいって何度も……ひゃっ! そ、そこは……!」


「いやいや、おれの両手は塞がっていますので」


 「黒い霧」に覆われ互いの顔も見えない60階層を、おれ達は手を繋いで歩いている。

 おれの左手はマイちゃんと右手はジェフ君と繋いで、「勇者のオーラ」を時折補充している。



「えっ!? じゃあ、もしかしてジェフ君なの?」


「僕の両手も、左手はヤマダさん、右手はスーザン様と繋いでいますよね?」



「そうね、ごめんなさい。じゃあいったい誰が私のお尻を……」


「欲求不満なんじゃないのー?」


「こらこら、マイちゃん。そういうことは思っていても言わないこと。きっと『黒い霧』のメンタル攻撃によるものじゃないですかね?」


 「黒い霧」のメンタル攻撃を防ぐには「勇者のオーラ」が有効だ。

 シマムラさんは、ぶつぶつと「私の祖父は……」と語り出す。なんでも「勇者のオーラ」を使う時のルーティーンなのだそうだ。語りに時々「はうっ!」とか「あんっ!」とか甘い声が混じる。……ジェフ君、ほどほどにね。



 きゃっ!? と、声を上げたのはマイちゃんだった。



「誰かが私の胸をむっくらむっくらいやらしくもんだの!」


「ふむ。メンタル攻撃だね」

「マイちゃん、それはメンタル攻撃に違いないよ」



「イヤ! イヤだぁ~!! ヤマダさん、もっと『オーラ』入れてよ! 早く!!」


「任せて、ほーら。モリモリモリモリ~~~!」





 おれの視界の隅に見え隠れしていたおかっぱ頭の「市松人形」も、努力の甲斐あってかなり薄く小さくなった。エロはすげえな。


 あれは、おれ達から漏れ出た恐怖の象徴。見る者によって、その姿は違うという。

 多分あの「市松人形」は、ガキの頃見た、心霊ドラマに出てきた呪いの人形に違いない。浄霊で炎にくべられると、こどもの声で泣き叫ぶシーンがちょー怖かった思い出。







 暴走してしまったアンディ君の反応をスキル【危機感知】で追って、おれ達は61階層に下りる。やはり「黒い霧」で覆われ、隣にいる者達の顔も見えない。


 また少し、「市松人形」がくっきりはっきりしてきた気がする。

 やはり、暗闇というのは根源的な恐怖を呼び起こす。







 62階層に下り立つ。スキル【危機感知】の反応によると、アンディ君はこの階層まで来ているようだ。

 

 歩き出そうとするが、手を繋いだ二人が動かない。

 手が小刻みに震えている。

 ――いかん、「勇者のオーラ」を補充してやらないと……!



「ダメだ、これ以上は……」


 シマムラさんが震える声でつぶやく。


 ……え!? もしかしてイクの? ジェフ君、テクニシャンだね。



「僕も……身体がすくんで……一歩も……」

「無理……無理だって……」


 足下で水が滴る音がする。

 マイちゃんが漏らしたようだ。





「やっぱ、ここまでだなー」


 今までずっと黙って付いてきていたイガラシさんが言った。

 ちなみに、シマムラさんと手を繋いでいたのはイガラシさんだ。なので、ジェフ君の右手はフリーになっていた。

 あと、マイちゃんのおっぱいをもんだのもイガラシさんだ。彼は、腕が猿のように長いのだ。



「みんなどうなったんです?」


「恐慌におちいってる、恐ろしい者を見てね。ヤマダには見えないのかい?」


 確かに、例の「市松人形」が沢山増えて、さらに一体一体がちょっと生々しく変貌しているが……。小便ちびるほどじゃない。



「見えますが、そこまできつくはないです。よく見ればかわいいというか……」

 

「すげえな。元の世界でどんな生活してたら、そんな『オーラ』になるのやら。……おねえちゃん達はこれ以上無理だ。恐ろしい者を見て発狂しかかっている。無理に進むと、同士討ちが始まるぞ」


 皆が各々、発狂するほど恐ろしい者を見ているという。

 ちょっと想像できないが、想像すると怖いな。



「じゃあ、ここからはおれ達だけで行きましょうか」


「……いや。どうやらオレもここまでだ。『勇者のオーラ』が三人分もあれば行けると思ったんだけど、あまかったよ。さっきから、あいつらがオレを責めさいなむんだ。……言ってなかったが、……言わなかったがあの13人のパーティメンバーを殺したのは多分オレだよ。よく憶えてないんだけどな……」





 イガラシさんに、シマムラさん、ジェフ君、マイちゃんの三人を預けて、おれは一人62階層の奥へと歩き出す。

 別れ際に、「あいつらに会ったらよろしく」とイガラシさんに言われたが、あいつらに会う状況がどういう状況かよく解らなかったので、曖昧あいまいに返事をしておいた。









「おま――」





「お前は誰――」




「お前は誰だ!!!!」



「お前は誰だ!!!!」


「お前は誰だ!!!!」

「お前は誰だ!!!!」

「お前は誰だ!!!!」

「お前は誰だ!!!!」


 ――【危機感知】反応! 同じセリフを連呼しながら、「黒い霧」の中でアンディ君が暴れているのを見つけた。



「おまっっ……!!」――ぽかり!

 

 おれは「ガリアンソード」の腹で、アンディ君の無防備な頭を叩いた。


 大人しくなるアンディ君。

 しかし、またしばらくすると……。



「お前は誰だ!!!!」

「お前は誰だ!!!!」

「お前は誰だ!!!!」


 と、始まったので――ぺこり!

 おれは「ガリアンソード」の腹で、今度はアンディ君の後頭部を叩いた。



「~っくぅぅ…………」


 大人しくなるアンディ君。

 しかし、またしばらくすると……。



「お前はだっ……!!」――ぼこ! ぼこ! ぼこ!


 おれは「ガリアンソード」腹で、繰り返し……。





「……って~な、ヤマダ!! ふざけんな!!」


「お、正気に戻ったか、アンディ君」


 アンディ君を殴る時、「ガリアンソード」には「オーラ」をまとわせて、「勇気モリモリの剣」にしてあった。「黒い霧」のせいで、光は見えてなかったけど。





「ここって……?」


「62階層だけど、どうする?」



「62……!! みんなは!? 近くに居るのか?」


「62階層に下りたところで限界だってさ。アンディ君はどうする?」



「どうするって……?」


「まだ行けそうか? 行くなら、付き合うけど?」



「ぜんぜん行けるぜ、なめるなよ!?」


「じゃあ、手を繋ぐぞ」



「は、はあ!? なんでそうなるんだよ!?」


 うるせえ。おれだって、いやだっつーの。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] アンディくん死体ででてくるかなーと思ってました……ヤマダさん紳士すぎます あとカスパールくんとかナカジマ的な人がいないと前日までに戻るのヤバそう……ルーシーさんピーンチ! [一言] …
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