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神様の憂鬱

作者: 海宝 新

銀色でできた美しい鏡を見ながら、神様は今日もため息がとまりません。

どうしたことでしょう。天使が理由を尋ねても、神様は首をふるばかりで答えてはくれません。何とか神様のお役に立ちたい天使は、神様のいない隙をみて、そっと鏡の中を覗き込みました。

 銀の淵に、たっぷりの聖水が注ぎ込まれたその鏡の中には、一人の人間が映っていました。

天使は、この人間を助けたら、きっと神様も喜んでくださるに違いないと思い、人間を助けてあげることにしました。

 聖水を一掬ひとすくいしてから、手鏡をつくり人間のもとへ贈ってやることにしました。

そうすることで、人間は手鏡に喜び、きっと神様が見てくださっているのだと喜ぶだろうと思ったのです。その手鏡というのは、持つと自分の理想の生き方がのぞけるのです。こんな特別な手鏡をつくれるのは、きっと神様くらいしかいないと考えるだろうと思いました。天使の思惑通り、手鏡を贈られた人間は、たいそう喜びました。

 けれども、他の人間が自分の元に手鏡がないことに嫉妬し、それは悪魔の仕業だと噂を流しました。たちまち、人間は困り顔になってしまいます。

 確かにいわれてみれば不審な点が多いのです。神様の贈り物だったとしても、どうして贈られてきたのか見当もつきません。手鏡を贈られた人間は、手鏡を怖がるようになりました。こうして、幸福な気分にさせておいて、あとで何か見返りを要求されるのではないだろうか。手鏡は人間の手から離れ、仏様に渡ってしまいました。今では、呪いの品として扱われています。そればかりか、拝観料500円で展示されるようになってしまいました。

 その様子を見ていた天使は、悪魔のような形相で人間界に飛び立ちました。神様の聖水で作った手鏡を、仏に渡すなんてなんたる所業でしょう。神様に仕える天使としての名が廃ります。天使は、人間から手鏡を取り返し、人間の行いを反省させねば気がおさまりません。

「これで、また犠牲者がでました」

天使が悪魔になる様子をみて、神様はため息をつきました。

人間の都合によって、天秤が動かされてしまう世の中に、今日も神様はため息がとまりません。いつの日か、仏と対峙する鬼だといわれてしまうのは、目に見えています。

神様は、自分が鬼として扱われる日がくるのではないかと、毎日悩んでいるのでした。

そして、人間によって悪魔になった天使をもとに戻す手はないものかと、密書を仏に送っては、念仏を唱えてもらっているのでした。

「いっそ、私も仏になるべきなのか」

神様の悩みは尽きることがありません。


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