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09話 現実と夢の狭間

〜ゴブリン村〜 夜


シックスは状況を最初は上手く飲み込めてなかったが俺が「話し合いで決着をつける」と言うと素直に承諾してくれた。ザップは少し怪しい雰囲気をしていたが、好意的に話を進めてくれた。今日の夜にシックスが寝た後、俺とザップの2人で話をしてみることになった。シックスは村の中にある民家でゆっくり寝てもらっている。ゴブリン達にはザップの方から絶対襲わないように注意してもらった。ザップに案内されて俺は村長室のある大きな藁の家に上がることになった。ザップは親切な事にスープを用意してくれていた。


ザップ「大丈夫。変なものは入ってないよ。遠くまで来たんだからゆっくりしていってくれ。」


俺はザップによそわれたスープを口に運んだ。魚介の出汁が効いている、魚類モンスターなのかは不明だが大きな骨からガラの出汁をとっているそうだ。これがまた美味い。俺は1杯目を飲み干すとおかわりをしてしまった。シックスも呼びたい所だが、話がある以上難しい。何分かスープを堪能した後、ザップの方から話し始めた。


ザップ「冒険者ギルドの依頼で来たんだよな?」


アシル「いや、俺とシックスは護衛軍に入っててその依頼でゴブリンに占拠された村を救いにきた。実はもう依頼主から報酬は貰ってるんだ。」


ザップ「なるほど。王様の軍に入ったんだな。俺は気楽にゲームを満喫してるよ、まだクリアのことは考えてない。」


アシル「ザップはどうして村を襲ったの?」


ザップ「アシル。少しメタな発言をするがゲームが誰かにクリアされれば異世界の全てがリセットされる。プレイ前にネットで見た情報だから確実じゃないけど。NPCは言ってしまえば情報の塊、生きてる訳じゃない。」


アシル「でも血は出るし、息切れもする。腹も減るし俺たちは寝る。ゲームとはいえ現実と比べても見分けがつかないんだ。俺にはとても人を殺さない」


ザップ「その考えは危険だと思うよ。俺はゲームって割り切って今日は村人NPCを配合スキルでゴブリンに変えて他のモンスターと配合して戦力を上げようとしてた。そうでもしなきゃ誰よりも早くゲームをクリアできない。やれる事はなんでもするよ俺は。」


アシル「さっきクリアは考えてないって・・・」


ザップ「そう"今"は考えてない。まだ危険度Sのモンスターの配合が十分にできてないんだ。今日アシルと女の子の2人で倒した危険度Sのゴーレムがあと20体は必要なんだ。魔王はそれだけ強いのさ。」


アシル「・・・凄いな。俺はただ生き残りたくて、ニグマから逃げて護衛軍に入ったから、クリアとか考えてなかったよ。ただシックスと旅が続けられればいいと思ってた。」


ザップ「!・・・そうか、ニグマと会ったのか」


アシル「ニグマを知ってるの?」


ザップ「あいつはプレイヤーの中で1番有名だからな。100人のプレイヤーのうち40人はあいつ1人の手でリタイヤされたって噂だ。特に城下町でコツコツ頑張ってる人を狙ってるらしい。俺は森の中でスポーンしたから奴に出会わずに済んだ。今戦ってもニグマに勝てる人はそういないと思うよ。」


アシル「・・・ザップ」


ザップ「おう。なんだ?」


アシル「ニグマは、城下町の人たち、NPCの人々に決闘者として褒め称えられてたよ。本物の勇者みたいにさ、俺はまるで悪役みたいだった。そんな気分にされて沢山のプレイヤーがリタイヤしていったと思うとやるせない。冒険してみてわかったんだ。この異世界転生VRゲームのNPCは人格を持っていて俺たちプレイヤーの好感度によってNPCの対応は変わってくるんじゃないかな」


ザップ「NPCが人格を?そんなバカな。最新の技術を使ってまるで生きてるみたいに見せてるんだよ。ニグマが街のNPCに英雄扱いされてるのは少し腑に落ちないけど、そういう仕様なんだよ、きっと」


アシル「今回ザップの件で酒場から直接依頼があったのもきっとプレイヤーの行動から起こったイベントだよ。もし、ニグマがNPCも殺してたら、違ったストーリーになってたかもしれない。ニグマはそれを計算した上でNPCの好感度を下げずにプレイヤーを狩っている、ていう考えてるけどどう思う?」


ザップ「確かに、その線は濃厚かもな。でも、俺はもう数えきれないくらい村や街を占拠してNPCを素材にしてモンスターを配合しまくってるし、好感度は最悪かもな。もう取り返しがつかないや」


アシル「いや。まだ取り返しはつく。」


ザップ「どうやって?」


アシル「護衛軍にザップも入ればいい。そうすればこの世界での信頼は取り戻せると思う。俺も手伝うから、一緒に頑張ろうよ。そんで友達作ろう。」


ザップ「・・・アシルはいいやつだな。でも、それは聞き入れられない。俺には俺のやり方がある。どんな手段を使ってでも勝つ。使えるものは何でも使う。俺の目標は誰よりも早くゲームをクリアすることだから。のんびりしてる余裕はないんだ。それこそ発売されてからじっくりやり込めばいい。俺は配合した最強のモンスターで魔王を倒す。」


アシル「そうか・・・ありがとう話してくれて」


ザップ「この村は元通りにしておくよ。そうしないと依頼達成できないだろ?俺は次の村を探して、また素材になるNPCを探すよ。今度は1人も逃さずゴブリンにする。そうすれば護衛軍に依頼が行くこともない。それで良いよなアシル?」


アシル「助かるよ、もうザップのやり方に口出しはしない。お互い最後まで生き残ってゲームをクリアしよう!」


ザップ「そうだな。それにすぐにまた会う事になる。」


アシル「・・・また会う?」


ザップ「いや気にしないでくれ。元気でな。」


アシル「ああ。ザップも元気で。」


こうしてゴブリン村の一件は無事に解決した。シックスと2人で村を出るとゴブリン達は村人に戻っていた。ザップとはいつか戦うことになる、その日のためにまだまだ強くなると俺は心に誓った。

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