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05話 強襲 バジリスク

〜町外れ 蒼葉の草原〜


シックス「えぇ!それ武器なのー!不思議!」


アシル「商人に勧められて買ってみたんだが、どれだけの効果があるのかわからない。単独で戦闘する時になったら使ってみる。もしかしたらガラクタかもしれないけど。商人が言うにはSランクの武器らしいが。」


俺たちは任務を終えエンド王国までの帰路にいる。音を聴いた者を攻撃できる"真髄の笛"を商人から買い取ったんだが周りにいる味方にも攻撃してしまうのでなかなか戦闘では使いづらい。シックスは目をキラキラさせて触っているが、吹かないでもらっている。


ナズナ「この周辺の森は比較的安全だが最近妙な噂があってな。森に生息するポップタイガーの個体数が減っているらしい。強い部類のモンスターで中々数を減らさないといわれてる。手練れの冒険者が素材目当てで狩っているのか、それとも・・・。みんな警戒を緩めず王国に帰ろう。」


タケヒコ「ポップタイガーは冒険者組合のモンスター図鑑には危険度Bのモンスターと記されてます。単体での危険度がBで群れるとA級並みに危険とされています。森の中で何かあったとしか思えませんね・・・」


それから1時間後、俺たち護衛軍は森を抜けようとしていた。なかなか広い森ではあったが、モンスターの数は広野や野道の方が多い印象だった。森の中はどこか異質な雰囲気に包まれたようだった。シックスは長旅の為か俺を膝枕にして眠ってしまっている。俺もナズナさんの許可を得て眠ろうかと思ったその時だった。馬車の上で寝転んでいたカンジョーが空の何かに気づいたようだ。


カンジョー「空に何かが飛んでるな。いや・・・こっちに飛んできてるぞ、あれはなんだ・・・!・・・ナズナ!!」


ナズナ「全員戦闘態勢を取れ!大型のモンスターが飛来してくるぞ!!」


飛んでいる影はどんどん大きくなる。そして。

ドズーンと俺たちの目の前に降り立った。それはおぞましい生物だった。カメレオンの頭と鷹の様な羽と足を持つ奇怪なモンスターだ。俺はひとまず寝ているシックスを馬車で放置し、ナズナ率いる護衛軍に加勢した。


ナズナ「嫌な予感が当っちまったらしい。こいつは危険度Sのモンスター"バジリスク"だ。大食漢で凶暴、目についた生物を強烈な物理攻撃で弱らせ丸呑みにする。森にいるモンスターの生態系もこいつによって崩壊された、ってのが大筋か。私が正面で攻撃をいなす!タケヒコとロロンは援護!リーンとカンジョーは援護役を守りつつ攻撃を加えろ!」


バジリスク「グギャガガス!!」


ナズナは青い旋光を放つ双剣を手に取りバジリスクに目にも止まらぬ速さで剣撃を浴びせかける。凄まじい猛攻だがバジリスクの体が非常に硬く皮膜を削っている程のダメージだ。がバジリスクは猛撃にすくんで動けないでいる。このまま行けば硬い外角を貫通し致命傷を与えられる。だがバジリスクは攻撃された傷の下から新しい皮膚を作りダメージを回復していた。


ナズナ「これでは決定打にならない!カンジョー!奴の肉を砕け!そこから攻める!」


カンジョー「しゃあ任せとけ!!俺の城壁をも貫く拳の一撃!食らいやがれ!「岩砕爆裂拳」!!!!」


スカッ


バジリスクはカンジョーの渾身の一撃をかわす。そして間髪入れずナズナに能力強化魔法をかけていたタケヒコに羽をぶつける強烈な一撃を打つ!ドゴォ!鈍い音と共に骨の砕ける音がした。その場にうずくまるタケヒコ。バジリスクは非常に頭が良くスペックが高い。倒すのは困難に見えた。


ナズナ「カンジョー!タケヒコを頼む!ロロンとリーンは隙を見て馬車に乗り込め!カンジョーとタケヒコも馬車に避難しろ!私を置いて逃げろ!!」


リーン「!?・・退却命令ですか!?」


ナズナ「このままじゃ犠牲が出る!皆が避難できたら転移魔法で王国に戻る!こいつは冒険者ギルドに報告して討伐依頼を出して貰えばいい!はやく行け!!」


ナズナとバジリスクは両者傷だらけになりながらも互角の死闘を繰り広げている。タケヒコを抱えたカンジョーが馬車に乗り込むと同時に馬車が走り出す。その時だった。バジリスクが急にナズナから距離をとり全速力で馬車に突進してきたのだ。


ナズナ「しまった!」


俺は護衛軍を守るべくバジリスクの前に立ち塞がり奴は俺を丸ごと食らった。バジリスクは俺を飲み込みすぐさま消化液を浴びせてきた。俺が庇っていなかったら馬車ごと飲み込まれていたかもしれない。


ナズナ「アシル!!!なんてことを!!!」


シックス「アシル!?いやだよ!死んじゃうなんて!いかないで!私を庇って死ぬなんて私は望んでない!貴方のとなりにいたいのに!いやだ!」


バジリスクは満足げに平らげるとすぐさま馬車に追撃を開始する。ナズナが渾身の剣撃でバジリスクの肉をえぐり断つ。血が噴き出す。だがバジリスクは傷を癒し続けナズナに翼の羽ばたき攻撃をお見舞いした。バキッ!もうナズナの体力も限界に近い。誰もがバジリスクの恐ろしい強さに絶望した。


ナズナ「最悪だな。仲間を守らなかった。仇も取れず死ぬのか私は。回復ももう間に合わない。せめて私の血肉を奴に捧げ仲間が逃げる時間を稼ごう。私は・・・最低だ。」


バジリスクが大口を開けナズナを飲み込もうとしたその時。バジリスクが急に苦しみ出す。カメレオンの様な目をグリグリと回し顔を翼で押さえて後ろにたじろいでいる。まるで吐き気を堪えている様に。そして。


ゲロォ!


バジリスクの大量のゲロと共に俺は吐き出された。


シックス「アシル!!!!」


アシル「死ぬもんかい。こいつの腹の中で俺は毒液そのものになって消化されるのを回避できた。そして"真髄の笛"を吹いてみた。そしたら毒の音波でバジリスクが苦しんでるのが体内から分かったよ。笛を吹き続けてたらゲロみたいに吐き出された。」


バジリスク「グルゥギュアアス」 ズゥーン


バジリスクは苦しみ抜いたすえ生き絶えた。こんな勝利で後味が悪いが仲間を守れたんだ。バジリスクは強烈な腐臭を放ち倒れている。傷の再生も止まっていて確実に死んでいる様に見える。


シックス「私、私、あなたを守れなくて、足がすくんで動けなかった、・・私、私」


シックスはパニックを起こしているのか涙を浮かべながら俺の元にくる。その時俺はハッとした。


アシル「シックス!今は来ちゃダメだ!ゲロに俺の毒液が混ざって危険だ!」


がシックスは泣きながらゲロまみれの俺に抱きついた。だがシックスは毒に苦しむ様子もない。


アシル「毒状態にならない・・・グスン・・」


シックス「ウゥン・・グスン、グスン、わたしずっとアシルといて分かったの、グスン、毒が平気だって、金属モンスターだからかな、ごめんなさい」


アシル「泣かないでくれよ、俺まで涙が溢れてくる、うぅ、ありがとう、俺聞こえてたよ、シックスの声、バジリスクの腹の中からずっと聞いてた、本当に心強かったよ、ありがとう」


シックス「うぅう、うわああああんうわああ」


ナズナ「アシル、隊長である私がお前を守る事ができなかった・・,本当にすまない。隊長失格だ私は」


アシル「とんでもない。ナズナさんが時間を稼いでくれなかったらみんな食われて殺されてました。毒が効くまでには時間がかかります。2人で掴んだ勝利です。」


ナズナ「!そうだ・・タケヒコは!」


タケヒコ「痛てて、僕なら大丈夫ですよ。バジリスクの一撃を食らってすぐキュアで回復しましたから。でも衝撃で気を失ってしまいました。ナズナ隊長に回復魔法をかけれたらもっと楽に勝てたかもしれません。本当に申し訳ない。」


ナズナ「いや。今回はアシルがいなければ勝てなかった。バジリスクは想像以上の強さだった。バジリスクは解体して素材を持ち帰る。アシル。毒を取り除いてくれるか?」


アシル「お安い御用です!」


そして俺たちはバジリスクの討伐を完了し、エンド王国に無事帰還することに成功した。

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