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Terminus Of Wonderland  作者: 工藤流優空
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終章

『Terminus Of Wonderlnad』めでたく最終話です!

最後までおつきあい頂きありがとうございました!

 正気に戻った元祖フィア、フィア、アリス、ティアシオン、ランベイル、白の女王、ハートの女王、そして本から抜け出たままの元祖アリスは、白の女王の城の中庭へとやってきた。


「あらまあ、派手に散らかしたわね」


 ハートの女王がため息をついて言う。中庭はたくさんの蔓で無残な有様だった。その中心で、青い花が真っ二つになっていた。隣には、エメラルド色の花が咲き誇っている。


 元祖フィアは、青い花だった残骸に駆け寄ると、言った。


「ごめんなさい。わたしが望んではいけないことを望んでしまったから……、あなたの最期がこんな形になってしまった……っ」

「最期じゃないよ、これが始まりなんだ」


 ルクアが、元祖フィアの肩に手を当てた。そして隣の小さな地面の盛り上がりを指さす。


「私の力じゃ、これが精いっぱいだった。私が望んだのは青い花に、願いを叶える花ではなく、普通の美しい青い花に再誕してもらうこと。もうすぐ、芽が出てくると思うよ」

「あなたは……ルクアさん? 死んだのでは?」


 元祖フィアの言葉に、ルクアが驚いた表情をし、フィアを見る。


「え、何? 私殺されちゃった設定?」

「ごめんなさい。だってあなたが生きてるって言ったら、フィアさんが青い花を守りに行ってしまうかもしれないと思って」


『ちなみに、あたくしたちが元の世界に強制的に戻された後以降に来た、物語修正師関連の人たちで死亡した人は、一人もいませんわ。相変わらず天然ですのね、元祖フィアさん』


「ほなら、オレの相方やったヤツも無事ってことやんな!?」


 中庭へとつながる扉が開かれ、ヘルツとクレールが入ってくる。クレールは、白の女王の姿を認めると、地面に片膝をつき頭を垂れた。


「白の女王様。お迎えに上がれず申し訳ございませんでした」

「いいのです、あなたが無事でよかった」


 白の女王の言葉を聞き、クレールは立ち上がってもう一度彼女に会釈した後、ルクアの元へとやってきて言った。


「青い花のブローチをした女王軍は行動不能、他の白の女王軍は説得完了し戦闘終了しております」

「ありがとうね、クレールさん」

「……感謝する」


 ルクアとトゥルーは、感謝の意を伝える。その時、盛り上がっていた土から、小さな芽が出た。ルクアは、元祖フィアに言った。


「青い花さんは、願いを叶える花として戦の種となっていた。だから、白の女王様がこの中庭に避難させたんだって。自分勝手で理不尽な願いしか叶えてこなかった青い花さんは、自分の存在理由に疑問を抱いていた。だから、願いを叶える力をなくして、ただ美しい花として再誕してもらった。ただ、最後に美しい願いを叶えてほしいと思って、あと一度だけ願いを叶えられるよう、お願いしてある。元祖フィアさん、あなたの手で始めた物語だから、あなたの手で、幕を引いてほしい」


 それを聞いて、元祖フィアは頷いた。そして小さな芽を優しく撫でて、願いの言葉を口にした。


♢♦♢♦♢


 それは、新しい記憶。彼女がまた、夢は思い続けていれば叶うと信じ始めた頃のこと。小高い丘の上、一人の少女が、一本の大きな大きな神秘的で生命感あふれる木の太い根の一つに腰かけ、その幹に体を預けている。


 大きな木は穏やかな風を受け、その大きく広げた枝葉をしなやかになびかせていた。心地好く、気持ちよさそうに。そして、まるで少女を見守るように。


 少女の隣には真紅のチョッキを着て、同じく体を木の幹に預けているうさぎ。そのうさぎは、オリジン時計ウサギという名前を持った物語の住人である。彼は最初は黙って少女の隣に腰かけていたが、ふと自分の首から下げていた懐中時計をしばらく眺めた後、彼女の方を振り返ってこう尋ねた。


「ねえフィア・アリス。君の時計では今何時だい」


 その問いに少女は怪訝そうな顔をした。そして先ほどまでうさぎが眺めていた懐中時計を見る。不思議と、オリジン時計ウサギが自分のことをフィア・アリスと呼ぶ理由を問い返そうとは思わなかった。彼女の名前は、フィア・アリスではない。しかし、彼が自分のことをフィア・アリスと呼ぶ理由は、分かっていた。フィア・アリスが作り出した物語を修正したフィア・アリス、それが物語の住人たちの共通理解だからだ。


「今ですか? 今はちょうど、午後三時です」

「それなら、時間にズレはないね。物語は無事修正され、元の物語が紡がれている。……素晴らしいことだ」


 オリジン時計ウサギは言って、パチンと懐中時計の蓋を閉じた。


「よかった。現在は無事に元の物語が紡がれているんですね。他の巻き込まれた人たちも、元の世界に帰れたんですよね」


「もちろん。全ての人々は収まるべきところに収まった。ハートの女王は若干暇そうだけどね、仕事だから仕方ない。白の女王は新生青い花さんの世話に忙しいようだ。エメラルドの花も手伝って、いい感じに育ってきているようだよ」


 そういえば、と彼は思い出したように言った。


「どうだい、暇つぶしに帽子屋のお茶会にでも出かけようか。エドワードが白の女王の王室付き帽子屋に任命されたそうでね、これからパーティをするみたいなんだ」


 それを聞いて、彼女は隠されたお菓子を見つけた時のように瞳を輝かせて言った。


「行きます! でも、もう少しだけ待って頂けませんか? 他にもお茶会に誘ってあげたい友達がいるんです」


 首をかしげるオリジン時計ウサギ。フィアは、立ち上がって丘を見下ろした。すると、一匹の猫が丘を駆け上がってくるのが見えた。その後ろには小柄な女性。


「だぁ~かぁ~らぁ~! 待ってって言ってるでしょ、ヴォルフガング! 老体に鞭打つとはこのことよ! 本当に勘弁してよね!!」


 猫は、ちゃんと女性がついてきているか時々後ろを振り返りながらも、走ってくる。そして先に丘の頂上にたどり着くと、後ろを振り返ったまま待機する。女性は丘を登りきると、肩で息をする。その足元を先に走ってきた猫とは別の、白い猫がくるくると心配そうに走り回る。フィアが女性に声をかけた。


「お久しぶりです、ルクアさん、トゥルーさん、クレールさん」

「おー、フィア、久しぶり! 聞いてよ、ヴォルフガング……――トゥルーがさ、本当に冷たいんだよ。猫なんだから、もうちょっと仕事で疲れて帰ってきた私をねぎらってくれたっていいと思うんだけどさあ。クレールくんは、こんなにもいい子なのに」

「……猫はあくまで仮の姿だ。そこまでお前に優しくする必要がどこにある? だいたい、20代で老体に鞭うつという言葉が出てくること自体、おかしいだろう」

「トゥルー先輩には優しさの欠片もありませんから」


 人間の姿に戻ったトゥルーが、そっけなく言う。その言葉を聞いて人間の姿に戻ったクレールがため息をついて首をすくめる。


 物語を修正した後、トゥルーはルクアと共に現実世界へとやってきた。以前彼女が飼っていた猫の名前、ヴォルフガングという名を再び名乗って。普段は猫の姿をとって、ルクアの家に住み込んでいるらしい。そしてクレールもまた白の女王の親衛隊を辞め、ルクアの家に住み着いたらしい。


 続いて、ランベイルと共にアリスが姿を現す。ランベイルは半ばアリスに押し切られるような形で、現実世界へとやってきた。


「もう、こんな急な坂を登るなんて、聞いてませんわ。服が汚れてしまいましたわ」

「僕は忠告しましたよ」


 ランベイルがそっけなく言うと、クレールがまた、ため息をつく。


「どうしてこうも、女性にそっけない男性ばかりなんでしょう」


 そこへ元祖フィア、元祖アリス、元祖ルクアがやってきた。ファクトも一緒だ。



 その様子を見てうさぎが満足そうに笑って頷く。そして言った。


「時を刻むのをやめてしまった時計は、永遠に同じ時を刻み続ける。生きることをやめてしまった者と同じさ。時と共存することを放棄してしまった者は、過去も未来もなくただ虚しく続く毎日を永遠に繰り返すしかない。でも、君のおかげで止まっていた元祖フィアの時計は、再び動き始めた」


「わたしの時計も、フィアさんと同じで動き始めたんです」


 物語を修正して元の世界へと戻ってきたフィアは、真っ先に母親に自分の気持ちを正直に話した。自分は母親が思っている大学へ行きたいわけではないこと、自分がやりたいことを話した。最初は戸惑っていた母親も、最後はあなたの人生なのだから、と許してくれた。


「多分、ここにいる全員がそうじゃないかな。巻き込まれた形だったけど、結果的にはあの世界に行って本当によかったと思ってる」


 うさぎは呆気にとられた表情のまま少しの間動かなかった。しばらくしてから笑顔になり、嬉しそうに言った。


「ありがとう、みんな。……言葉というものは難しい。関係を作るのも、壊すのも簡単で……おそろしいものだ。だけど」


 ここで言葉を切り、オリジン時計ウサギは微笑んで言った。


「元祖フィアを救ったのは、似た境遇のフィアの言葉だった。言葉はまた、誰かを助ける糸口になることも、あるんだね」


 そしてかつてフィアからもらった懐中時計を空高く掲げ、言った。


「物語は無事に修正され、物語が消し炭になることは免れた。めでたし、めでたしだね」


「あ、そうだ。元祖アリスさんに質問。物語修正師候補生の資格を持った者が『脱落』していってたけど、あれは死んだわけではなかったんだよね? でも初め会ったとき、死ぬって言ってなかった?」


「そう。物語が修正されなければ死ぬ、そう言ったわね。あれはあくまで脅しのつもりで言った嘘。でも、あなたたが物語を修正できていなければ、もしかしたら本の中で灰になる……、つまりは本当に死ぬ可能性もあったのよ? それに、物語の中で死ぬ……、例えば、ジャバウォックに襲われて死ぬなど、現実世界なら死んでしまうようなことをしていたら、死ぬことになった。だから、あながち嘘ではなかったとも言えるわ」


「いやあ、恐ろしいことに巻き込まれてたんだねぇ」


「ちなみに『脱落した』というのは、ハートの女王サイドやそのほかの物語の住人につかまったという意味だったの。つまりは自由に行動できない状態ってことね。ヘルツなんかは、自分の相方が自分が目を離した間に脱落したということを、死んだと勘違いしたみたいだけど」


 ヘルツも無事に物語修正後、相方に再会してこの世界に来たようだわよ。そう付け足して、元祖アリスは微笑んだ。その時。


「おいフィア、オレを放って行くとは、どういうことだよ」


 丘へ最後の1人がやってきた。仏頂面のティアシオンは物語修正後、フィアの家に身を寄せている。


「あ、ごめんなさい。あんまり気持ちよさそうに寝てたから、起こしたらまずいかと思って……」


 一行の笑い声が丘にこだまする。その時だった。一行が身に着けているブローチから声が響いてきた。


『物語修正師および、物語修正師候補生へ業務連絡。物語修正を必要とする物語が新たに発見された。修正実行可能な者はすぐ向かうように』


「ウサギさん、残念ながらお茶会参加はお預けです。行ってきます」


 それだけ言い残して走り始めるフィアの耳に、うさぎの声だけがこだまのように響いてきた。


「君なら大丈夫。次の行き先でもきっと君は、世界を変える力を携えて……」


 彼女が最後までその言葉を聞くことはなかった。なぜなら、彼女は既に仲間たちと共に新たな世界への第一歩を踏み出していたからだ。彼女たちのその後の物語はまたいつか、機会が訪れればお話するとしよう。


(了)

『Terminus Of Wonderlnad』これにて完結です!

最後までおつきあい頂きありがとうございました!

これから細々とした修正、矛盾箇所など訂正してまいります。

また、少し先にはなるかもしれませんが別の物語修正師や彼女たちの別の物語を展開する予定ですので、

もし別の物語修正師関連の物語を読んでやってもいいよという方いらっしゃいましたら、作者フォローお願いします。(新作で物語修正師関連の物語をかく際に、タイトルまたはあらすじに、物語修正師関連の物語ですよと書くようにします)


たくさんの感想・評価や誤字脱字報告、ブックマークおよびアルファポリスのランキングタグクリックなどの皆さんの反応により、最後まで書きあげることができました。本当にありがとうございました。

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