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Terminus Of Wonderland  作者: 工藤流優空
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勝てない相手からは、逃げるのが勝ち

まだまだたくさんネタはあるけれど、うまく文章に出来ない。そんな感じです。

「あなたたちに恨みはないんですけどね……、女王の命令ですから逆らうわけにいきません。大人しく倒されてくださいね」


 クレールが申し訳なさそうに言った。ランベイルがクレールに向かって走り始めながら言った。


「大人しく倒されるつもりは、毛頭ありませんよっ」


 そして、クレールと剣を突き合わせる。ティアシオンはティアシオンで、何も言わずにトゥルーの方へ駆け出していく。


「わっ、わたし……っ。どうしたらいいんでしょう……っ」


 フィアがあたふたして言う。ルクアは言った。


「とりあえず、ティアシオンくんのフォローをしてあげたらいいんじゃないかな。私としては、複雑な気持ちだけれど」


 ルクアの声は冷静ではあったが、少し悲しそうな響きを含んでいた。


「……。トゥルーさんがかっこいいから、戦うのが嫌なんですか?」


 フィアが心配そうに尋ねる。すると、ルクアは首を横に振った。


「そうじゃないよ。でもまぁ、全くそうじゃないと言ったら嘘になるかな。。でももっと大きな理由がある」


 ルクアはここで言葉を切って言った。


「トゥルーさんとティアシオンさん、そしてランベイルさんは友達だったのに、私たちのせいでこうやって傷つけあわなければいけないっていうのが、すごく申し訳ない気がして」


ルクアの言葉に、ティアシオンがトゥルーの攻撃を避けて後ろへ飛びのいた際、彼女たちの方を振り返らずに言った。


「気にするな。オレとトゥルーは、友達と呼べるような間柄じゃねぇ。あんなことを平気でできるようなやつと、友達だったことなんてねぇんだ」


半ば自分に言い聞かせるようにして言ったティアシオンの言葉を、トゥルーは鼻で笑う。


「……だろうな。わたしも、お前がわたしを友達だと思っていたなんて考えていない。ただ仕方なく一緒にいた、それだけの関係だったんだろう?」


 ティアシオンは、それを聞いて一瞬驚愕の表情を浮かべた。しかし、その後何かが吹っ切れたような表情に変わる。その表情のまま、ティアシオンは言った。


「そう。そうだよな。お前は、そういうやつだよな」


 その時、ランベイルがティアシオンの隣に並んだ。衣服のところどころが擦り切れ、切り傷ができている。いつの間にか、一行とトゥルーたちの立ち位置が最初とは反対になっており、一行が街に近い状態になっていた。トゥルーの隣には、余裕の表情のクレールが並ぶ。


「ランベイル先輩、あなたの剣さばきには少し拍子抜けしました。トゥルー先輩から、剣の達人だと伺っていたのですが。……そんな剣さばきでは、ぼくは倒せない」


 ランベイルは額の冷や汗を拭う。そして、空を見上げた。空は夕方から夜になろうかという色に変わりつつあった。


「戦況はあまり、芳しくありません。ここはなんとか撤退できる方法を探るべきです。もうすぐ日暮れです。日暮れになれば、彼らは残業を嫌い見逃してくれるかもしれません」


 ここで言葉を切り、ランベイルは背中ごしにフィア達に小声で言った。


「なんとか街に逃げ込むことができれば街での戦闘行為は禁止されているため、見逃してもらえると思います。何かよい策はありませんか」


「……逃げ切れるものなら、逃げ切ってみろ」


 強者の余裕だろうか、トゥルーが半ば挑戦的な口調で言う。そして番傘を構え、勢いよく左から右へ振る。すると傘が開きながら、光の球体をいくつも発射する。ルクアは、言う。


「ここに、土の壁を作ることができたらいいのに。魔法や、剣戟を防げるくらい丈夫なものがいいな」


 すると、トゥルーとクレールがいる方向に、巨大な土の壁が地面からせりあがってきて、一行とトゥルーたちを分断する。数秒後、土の壁に球体が命中した鈍い音が響く。


「これで少しだけ時間稼ぎができるはず。何かいい案はないかな」


 ルクアは、フィアとアリスを見る。アリスは怒って言った。


「もしそんな名案が浮かんでいるのなら、さっさと実行してますわっ」

「……」


 フィアは一生懸命に何やら考え込んでいた。思いついた瞬間、彼女は叫んでいた。


「わたしは!この坂道が少しの間だけ、街まで続く長い滑り台だったらいいのにと思います。……実現可能でしょうか」


 語尾に近づくにつれ徐々に声が小さくなっていたが、最後まで言い切り、フィアは街へと続く坂道を見つめた。すると、少しずつ坂道が盛り上がってきたかと思うと、道がすべりやすそうな金属へ変化し始めた。フィアたちの立っている場所から少しずつ土が金属に変化しているのを見て、ルクアが嬉しそうに言った。


「名案だよ。これで逃げ切るよ。フィアが先頭で行って。私は、少しでも土の壁が長続きするように、最後に滑るから」


 フィアは頷いて、勢いよく、金属と土の境目に座った。そして滑って行った。他のメンバーもそれに続く。最後にルクアが滑り始めた。そして自分が滑り台に乗った状態で言う。


「滑り台に乗るのは私が最後。これより後に乗ろうとする人は、滑り台の番人さんにお仕置きしてもらおう」


 すると、ルクアが滑った後から滑り台がなくなっていく。土の壁を破ったトゥルーたちの前には、役目を終えた滑り台の材質がくっついてできた滑り台の番人が、棍棒を振り上げて待ち構えていた。トゥルーたちがやむをえず交戦している間に一行は、滑り台を滑り終え、街の入り口へ辿りつく。一行は、そのまま街の中心部へと走った。


 物語修正師候補生の姿が見えなくなると、トゥルーとクレールは番人との戦いをやめ、番人たちから距離をとる。すると、番人は姿を消した。


「逃がしてしまいましたね」


 クレールが言う。すると、トゥルーは言った。


「……残業してまで追う必要はないだろう。そもそも街へ逃げ込まれた時点で、わたしたちは手出しができないからな」


「交戦中に、物語修正師候補生の機転によって街へ逃げ込まれてしまったため、追跡をやむなく中止した。こう報告したら、女王はいったいどんな表情をするでしょうね」


 クレールの問いは答えず、トゥルーは言った。


「……さっさと報告を済ませて休もう」


 2人は、もう一度一行が逃げ込んだ街を振り返ると、さっさと引き上げて行った。


♢♦♢♦♢♦♢


「なんとか逃げ切れましたね、よかった」


 一番最後を走っていたランベイルが、後ろを振り返り言った。それを聞いて走っていた全員が足を止めた。ランベイルは言う。


「よかった、なんとか助かったんすね」


 ベンジャミンが大きく肩で息をしながら言う。ランベイルは頷き、話を続ける。


「このまま、知り合いのいるところまで行ってしまいましょう。幸い、夜中までにはまだ時間があります。まぁ夜中に押し掛けたところで、いつでも寝ているような人なので特に気にしなくても大丈夫ですが」


「ラトゥールのところへ行くんだよな。……アイツ、本当にまだここにいるのか?」

「引っ越したなどの情報は聞いていませんから、元の住所に住み続けていると思いますよ、きっと」


 ティアシオンの問いに、確証はなさそうに答えるランベイル。


「まぁ、ここに他に頼れるやつはいないしな。さっさと向かうか」


 こうして一行は、ギャンブルの街へ足を踏み入れたのだった。


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