お茶会の街
ここから数日、仕事が立て込むので、ストックを大量に作りたい今日この頃。
頭もフル回転中です。
「だから、余計な寄り道は止そうって言ったんだ」
「もう後の祭りですよ、ティアシオン。だいたい貴方だって、なんだかんだ言っても最終的に貴方が、エドワードたちのいる方へ進むと決めたのですから」
「エドワードがいるって知ってたら、あっちに進まなかった」
「……はぁ。子どもみたいな言い訳しますね、貴方は」
ランベイルは言って、後ろからついてきている三人を振り返る。ウサギ耳の青年が肌を露わにした後、すぐ一行はその場を離れた。離れる前にティアシオンとランベイルが一発ずつウサギ耳の青年の頭をげんこつで殴っておいたのだが、女子陣はショックが隠しきれない様子である。
「筋肉がひとーつ、ふたーつ……」
「まったく、ありえないですわっ! 初対面の乙女に対して肌を露わにするなど言語道断っ! あんな人たちとランベイルさんがお友達だなんて! お友達基準を改めた方がよいかと思いますわ」
意識が遠くに行ってしまっているフィアと、憤慨するアリスに対し、ルクアは全く平気な顔である。
「男の裸って、そんなに見慣れないものなの? 私、しょっちゅう見てるんだけど」
「ルクアさんそういったリア充発言は不要なのですわっ! リア充爆発しろなのですわっ」
「いや、恋愛のお話じゃなくて」
「まぁっ!? まさかルクアさん、真面目な顔をして実は、一夜限りの関係を多々結んでいらっしゃるの……っ」
「ハイハイ。……そうじゃなくって、父親の裸なら、見慣れてるでしょって話」
ルクアのなんでもなさそうな言葉に、全員がルクアを振り返る。驚いた表情のルクア。
「え……、もしかして、普通じゃない……?」
「わたしの家では、少なくとも父が裸でいることはありません……ね」
正気に戻ったらしいフィアが言う。アリスもまた言う。
「あたしの父もそんなことはしませんわ」
「えー!? 裸でリビング歩き回ろうとしたり、パンツ一丁で出てきて服の場所どこかとか聞いてこない!?」
ルクアは明らかに動揺し、そして落ち込む。
「うわー。……今度父さんが裸で出てきたら、絶対やめてもらおう……辛すぎる」
「なるほど。だからルクアさんは、上半身裸のベンジャミンを見ても、あまり驚かなかったんですね」
ランベイルが納得したように言う。ルクアは頷く。
「でもどーせならさ、ちゃんと鍛えてる肉体見せてほしいよね」
それを聞いてフィアは、ルクアと一緒にいれば大概のことは笑って乗り越えられるような気がしてきた。
「あ、見えてきましたよ。お茶会の街が」
ランベイルが嬉しそうに言う。アリスは先ほどの話や出来事など忘れたかのように走り出す。
「よかった、やっとこの薄暗い森を抜けられますのねっ!」
お茶会の街は、とても賑わっていた。街のあちこちに長テーブルと椅子が並べられている。テーブルの上には色とりどりの食べ物や飲み物の入ったポットが並んでいた。食べ物のいい匂いや、食器がぶつかり合う音、楽し気な話し声と笑い声が、あちらこちらから聞こえてくる。
「お菓子の街とはまた違ったにぎやかさだね」
ルクアが言って、また何やらノートに書き込んでいる。ランベイルは空いている長テーブルを見つけると、一行を手招きする。
「とりあえず、ここで一服しましょう」
そう言って、テーブルの上に置かれたカップの一つを手に取り、ポットから液体を注ぐ。
「ランベイルさんのおごりなら、喜んでいただきまーす」
「え? え? 勝手に飲んだり食べたりして……大丈夫ですか? 誰かに許可をとらないといけないのでは……」
フィアが心配そうに言う。すると先に席に座り、食べ物に手をつけていたティアシオンが吹きだす。
「そんなもん、必要ねぇよ。ここのお茶会セットの飲み食いは自由だ。ここの街の管理者が、全部経費でやりくりしてくれてるからな」
「わお。むちゃくちゃいい人だね、その人」
「あたしの家の紅茶には劣りますけれど、それなりにいけますわね、この飲み物」
ルクアの感心した声と、アリスの批評がかぶさる。ルクアはアリスが飲み物やら食べ物やらを手当たり次第に食すのを見て、溜め息をつく。ランベイルはそんなルクアの前に、優雅な動作で、紅茶のような液体が入ったカップを置く。
「そんなわけですので、好きなだけ飲み食いしてください。次に安定した食事にありつけるのがいつになるのか、誰にも保証できませんから」
「そうそう。あっしらみたいに、くいっぱぐれることなんてザラですからね」
聞きなれない一人称を耳にして一行は一斉に、声がした方を振り返る。フィアたちと同じテーブルに、いつの間にか先ほどのウサギ耳の青年がいた。




