勇者部部長の神様
どうだい?自分の意思ではないとはいえ人を殺した気分は?
(……最悪だよ)
だよねー!ふふふっ!超ウケルー!
(お前……一体何者なんだよ、どうして俺の中にいる?)
むぅ……寂しいなぁ、記憶を改竄されているとはいえ僕のこと忘れちゃうなんて……
(……?お前は僕が記憶を改竄される前からいたのか!?)
あー、やだやだ急に叫ばないでよねー
(質問に答えろ……!)
そうだねー、「居た」よ。
うーん……二重人格ってやつかなぁ?もう一人の自分ってやつ?
(二重………人格………?)
そう!僕はね君が作った人格なんだよ!
(なんの為に…?)
罪悪感無く人や魔族を殺したいと言う君の欲求が僕を作ったんだ。新道耕筰。
そう言うと第二の人格は笑って続けた。
君はね、昔っから人を殺してみたいって衝動にかられていたんだよ!勇者さん?
※※※※※※※※※※※※※※※※
暗転、明転
目の前には白い天井……ではなく灰色の薄汚れた天井があった。薬品の匂いはしない、保健室ではなさそうだ。体を起こすと鉄格子が見えたどうやらここは檻の中のようである。
監視官らしき人物が僕を目覚めたのを確認しどこかに電話を掛ける。
「もしもし、こちら手塚です。先程新道耕筰が目覚めました。……わかりました。では………」
「あっ、あの!これは一体?」
「黙れ……人殺しめ!」
えっ……この人今僕の事人殺しって言わなかった?ちがう……僕は殺してない!やったのは全部あいつなのに……!
「僕じゃない……違う、殺したのはあいつだ、僕は違う……」
その時慌ただしい足音が聞こえてきた
「耕筰部長!!」
僕に声を掛けてきたのは全体的にヒョロっとした眼鏡の男だった。
「……誰?」
そう聞くと男はハッとした
「そうでした……記憶が改竄されていたのでしたね、僕は有里沼 干支です。勇者部で活動をしています。」
「そう……」
しばらくの沈黙、そして______
「単刀直入に聞きます、部長」
「何?」
「貴方が品川副部長を殺したというのは事実ですか?」
何がどうなっている?なぜ僕が品川さんを殺したことになっている?
「僕が殺したのは……仮の母親だった人だけだ……品川さんは奴に殺されたんだ……!」
「おかしいですね、それだと品川副部長のお母さんの話しと食い違うんです。」
「は?」
※※※※※※※※※※
有里沼くんは、品川さんのお母さんから聞いたという話しをしだした。
「貴方は昨日、無理矢理副部長の家に泊まらせてもらったようですね?」
……?もうそこからして事実がネジ曲がっている。品川さんのお母さんは一体何がしたいんだろうか?
「そして賢者が来るまで宿泊させるよう強制した……それで困った品川副部長のお母さんは貴方のお母さんを呼んだ……しかし、貴方はそれに腹を立てて、品川副部長と自分の親を殺した……という話しを品川副部長のお母さんはしていましたが?」
していましたが?じゃねぇよ!!ムチャクチャじゃねぇか!!
「そもそも品川さんから話しを聞いてるんだろ!?自分の家に暫く泊めるって!」
「いえ……そのような事は一言も品川副部長からは聞いておりません」
「でも……本当に俺はやってないんだ!信じてくれよ!」
すると、有里沼くんは軽蔑しきった目で、僕を見下ろしこう言った。
「部長……いえ、新道耕筰、罪人はねみんなそう言うんですよ。」
先程とは打って変わって落ち着いた足音を立てながら去って行く有里沼くんを僕はただボーッと見ていることしかできなかった。
……僕が罪人?
「……勝手に自己完結してんじゃねぇよ……」
話を聞いてくれよ……頼むからさ……話を……
「貴様は法廷の場で裁いてもらう来いっ!」
強引に引っ張られながら僕はショックで薄れる意識をなんとか奮い立たせ歩いた。
そして、法廷の場とやらに連れてこられた。
「勇者裁判所」
ふざけた名前だ……なんでも、罪を犯した勇者になる資格を持つ者、又は罪を犯した勇者を裁く裁判所だという。
僕はゆっくり証言台に立つ
裁判官が開廷宣言をする
「これより被告人、新道耕筰の……何事だ!?」
突然壁が壊れた
「あっ……」
僕は今青空越しに「神様」を見ている