勇者部部長の記憶
目を開けると白い天井が見えた、同時に薬品の香りもする、
どうやらここは保健室らしい。僕はまた目を閉じ、こうなった原因を記憶の中から探り取る、………………そうだ、今朝、とても信じられないような現実に立ち向かい疲弊しきったこの脳にあの美人がとどめを刺したから今ここにいるんだった。
「あら、起きたのね、気分はどう?」
そんな優しげな声がベッドの隣から聞こえた、そこには…………スライムがいた。ぷるるんとした液体なのか固体なのかわからない身体を持つRPGでは最弱と名高いあのスライムが、僕のベッドの隣にいた……
「あはははは……はぁ…」
「?まだつらいの?」
えぇ…心身共に疲弊しきってますよ。そもそも勇者育成機関になんでモンスターがいるんだ。もうわけわかんねぇよ……
「大丈夫?」
「えぇ…もう大丈夫ですので授業に戻らせていただきます」
僕は一刻も速くこの場から立ち去りたいため思ってることと正反対のことを口にだした。しかし意外な返しが返ってきた
「ふふふっ!新道君面白いこと言うのねぇ、勇者部は授業は除外されているでしょう?」
「……え?そうでしたっけ?」
なんだその夢のような部活は……勇者部、一体何をする所なのだろうか?
「そんなことも忘れちゃったのね……やっぱりあんな事はさせるべきじゃなかったのかしら………」
「あんな事……?」
なんだろう?今朝あの美人も言っていた気がする。この現象と何か関係があるのだろうか?
「あの、すいません!あの事っていった」
その時、保健室の扉がガラリと開き今朝のあの美人が入ってきた。
「失礼します、こちらに新道部長は居ますか?」
「あら、品川さんいらっしゃい、新道君ならここにいるわよ、どうしたの?」
どうやらあの美人の名字は品川というらしい……なんか、普通だな。
「部長、体調は如何でしょうか?」
美人改め品川さんはそう訪ねてきた。心配してくれるんだ……なんか意外
「あぁ、もう大丈夫だよ」
「なら、早急に勇者部の部室へ、部長の記憶を取り戻すのはそれが一番手っ取り早いですから」
記憶を取り戻す……?僕は何かを忘れているのか?試しに昨日あった事を思い出してみる、A高校に登校して、帰りに友達と買い食いして、家族とご飯食べて………ん?全部思い出せるぞ?友達の名前も家族の名前も、3日前の晩御飯だって覚えている、何一つ忘れていない。
「なぁ……僕全然忘れてないんだけど」
品川さんはその言葉を聞いて立ち止まった、そしてこちらに身体を向け、少し青ざめた顔でこう呟いた。
「嘘……記憶を改竄させられているの……?忘れるんじゃなくて……まるごと?」
「かい……ざん……?」
品川さんの顔がどんどん青ざめていくそして、急に僕の肩を掴みこう言った
「落ち着いて聞いて……貴方は今、魔族の王カルーノに呪いをかけられている!」
「えっ…?それはどういう」
「私のせいだ…もっとちゃんと引き止めなかったから!!私のせいで部長が……」
そういって品川さんは泣き崩れた、おいおいおいおい、どうしようこれ?泣いてる女の子を介抱なんてしたことないぞ!品川さんはうわ言のように「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい」と繰り返している、本気で焦っていると、スライム先生が駆けつけてきた
「どうしたの!?品川さん?」
「先生ぇ…部長に……部長にカルーノの呪いがかかっています…!ぐすっ…どうすれば……ひっくいいれすかぁ?」
「ごめんなさいね、正直記憶改竄レベルの呪いは先生たちじゃどうにもならないわ。けど、多分賢者なら何かしらの対処法は知ってるかもしれないわね」
「ホントですか!?」
「えぇ…確か賢者の知り合いがそう言っていた筈よ」
……なんというか、自分の事なのに完全に蚊帳の外である。全然話についていけないついていける気がしない。そもそも呪いとは何なのだろうか?カルーノッて誰?あんな事って僕は一体何をしたんだ?そんな疑問が次々と浮かび上がってくる。しかし何故かその疑問を口にすることができないまるで身体がその答えを知るのが嫌だと言ってるようである。
「とにかく!今は新道君にストレスをかけちゃだめ!取り返しのつかないことになるから……分かった?」
「はい……ぐすっ」
話がまとまったようである。僕はこれからどうなるんだろうか?その疑問は口に出さずとも品川さんが答えてくれた
「新道部長、今日から私の部屋に住んでください」
…………………………………………………はぁ?