勇者部部長
勇者高校、それは魔族に支配されたこの世界を救うために魔族に匹敵しうる勇者の育成を主とした教育機関である。見事に勇者になった者には多額の支援金が贈られる代わりに国直々に魔族討伐の命が下ることになる…
勇者高校のホームページにはそう書き記されていた。何度も何度も見直したがやはりこう書かれている、魔族?勇者?そんなものRPGの中だけの話だろう?しかし、そんなことよりも
「魔族に支配されてるってどういうこと……?」
そうだ、なんで?昨日まであんなに平和な世界だったじゃないか。なのにどうして……?すると僕の独り言を聞いた美少女が呆れ果てたような顔でこう言った。
「ここまで知らないと世間知らずってレベルじゃないわね……いい?この世界はねあんたが産まれるずっと前から魔族に支配されているのよ!全く…こんな事今の小学生でも知ってるわよ?」
…………?頭の回転が今、目の前で繰り広げられている現実に追いつかない…そもそも自分が通っているA高校が勇者高校なんてものに変わってる時点で追いついてないのに、更に魔族だ支配だ勇者だのと、非現実的なことを突きつけられては、僕の脳では対処しきれるわけが無い。それでも諦めずに僕は脳をフル回転させる…結果導き出された答えは……
「そうか!これはゆm」
また殴られた。今度はグーで、超痛い。
「どう?夢じゃないって分かった?遅刻しそうだからって現実から目を背けようなんてすんじゃないわよ」
「何も殴ること……!ん?遅刻?」
さあっと全身から血の気が引くのがわかった。そうだった、今僕遅刻してんだった。
「おっ……おいお前も遅刻だぞ!?早く登校しないと!」
「えっ…あぁ!もうこんな時間!初日から遅刻なんて…あんた、責任取りなさいよ!」
「おいおい…それは理不尽ってやつだぜ嬢ちゃん」
「あんたがぶつかってきたんでしょうが!」
「はぁ!それはお前だろ!?」
「いいや、あんたね!」
「お前!」
「あんた!」
「お前!」
そんなやり取りをしながら僕たちは勇者高校まで全力で走った。
「あんた……なんでついてきたのよ?」
「ここが俺の高校だからだ」
「はぁ?あんたさっきこの高校知らないとか抜かしてたじゃない!」
そうだった、さてどう言い訳しよう?
「まぁ…細かい事はきぐはうぁ!!」
ちょうど正門をくぐったとき腹に強い衝撃を受け奇妙なうめき声をあげながら僕は大の字に倒れた。
「部長……重役出勤ですか?ずいぶん出世なされたんですね」
「ちょっ……ちょっと、大丈夫?」
美少女が上から覗き込んでくる………控え目に言って、絶景である、ニヤニヤが止まらんですなぁ
「なっ…なにニヤニヤしてんの?気持ち悪い…」
いかんいかん、あらぬ誤解を招いてしまう、早急に対処せねば……
「部長…………おい!」
「いっ……いや、これは違うんだよなんていうかそのー」
「無視してんじゃねぇぇぇえ!!」
横から凄まじい怒鳴り声が聞こえた、なんだよ人が一生懸命誤解をとこうとしてんのに…僕は声がしたほうに体を向けたそこには…………美人が立っていた。勝ち気そうな目に、透き通るような肌、均整の取れた手足、その姿はまさに天使のようで……
「そうか…遂にお迎えが来たか」
「何を馬鹿なことを言ってるんです?そんなことより、早急に部室に来てください、部長が来なければ部の皆がまとまりません」
…………部長?部室?部の皆?どういうことなんだ?僕は帰宅部のエースだったはずだ。
「えと……ごめん実は記憶が今曖昧なんだ、僕って何部の部長だっけ?」
「はぁ…だからあんな事は辞めとけと言ったんです!良いですか1回しか言いませんからよおおぉく、聞いておいてくださいねあなたは」
大きく息を吸って美人は僕の質問に対しこう回答した
「勇者高校勇者部部長の新道耕筰です」
…………勇者部?
あまりに訳のわからない回答に僕は考えることを放棄した